「誰も本当の自分を理解してくれない……」日本MBTI協会が抱える苦悩、世間の誤解と濫用
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「INFPに適職は無い」と断言する画像が飛び回っていました。「内向的で傷付きやすい奴に出来る仕事なんてない」「強いて挙げるなら転売ヤーかサクラレビュアーが向いている」と強い言葉で、就活サイトの言う「芸術家に向いている(≒適職は無い)」のように社会不適合ぶりを詰っています。果たしてINFPなる造語は何処から飛び出したのでしょうか。
造語の出処をたどると「MBTI」の四文字に辿り着きました。これが血液型性格診断の後継として幅を利かすトンデモ診断かと思われましたが、実のところMBTI自体もまた被害者なのだといいます。そこには「誰も本当の僕を理解してくれない」という青臭い……ではなく切実な悩みがありました。
MBTIとは
ここからは“本来の”MBTIについてです。MBTIとはマイヤーズ=ブリッグスタイプ指標(Myers-Briggs Type Indicator)の略で、ユングの心理学類型の流れを汲んで生まれた性格検査です。マイヤーズとブリッグスは人名で、前者はイザベル・ブリッグス・マイヤーズ、後者はその母親キャサリン・クック・ブリッグスを指し、この親子によって開発されてきました。
検査は93項目にわたって2択の質問に答えてもらうというもので、どちらか迷ったとしても自分にとって近い方へと回答してもらいます。それは利き手のようなもので、逆を使うのは大抵難しいという考え方によるものです。
最終的に4つのカテゴリを二分法で分けます。ただ、常にどちら側という訳ではなく飽くまで優先する程度のものである前提です。
外向(E)or 内向(I)からなる「興味関心の方向」
感覚(S)or 直観(N)からなる「物事の見方」
思考(T)or 感情(F)からなる「判断の仕方」
判断(J)or 知覚(P)からなる「外界との接し方」
これらの組み合わせに応じて最終的に16タイプへと分かれます。タイプ名はそれぞれの要素を合わせたアルファベット四文字となっており、冒頭のINFPもそのひとつです。これに加えて4つの機能対がどうとかややこしいことがたくさん盛り込まれており、無学な素人が軽々しく扱えるようなものではありません。
また、性格のタイプが分かれば終わりでもありません。本来のMBTIにとって検査結果はきっかけに過ぎず、一定の訓練を修めた「認定ユーザー」と呼ばれる専門家の支援を受けながらフィードバックを重ねる「過程」に重きを置いています。検査結果だけでなくフィードバックを重ねることで、深い深い自己理解へと至るのが本来のMBTIの目指すところです。分類は飽くまでも「手段」です。
MBTIもどきの存在
日本MBTI協会は自身のホームページでこう訴えています。
「MBTIは他の性格検査とは異なります。MBTI(エムビーティーアイ:Myers-Briggs Type Indicator)は、個人をタイプに分類したり、性格を診断したりすることが目的ではありません。回答した個人一人ひとりが、自分の心を理解するための座標軸として用いることを最大の目的にしています」
本来のMBTIはいつでも気軽に受けられるものではありません。まず自我形成の観点から18歳以上(アメリカでは14歳以上)でないと受けられず、Web上で受けるためのサービスこそ存在すれど、認定ユーザーとの対面フィードバックをセットで受けねばなりません。おまけに有料です。
ネット上など世間で流通している「MBTI検査」というのは、その名や概念に寄せただけの偽物、「MBTIもどき」でしかない訳です。権威があるかのように振る舞っておりますが、実態はバーナム効果と確証バイアスだけで成り立ってきた血液型性格診断の後継でしかありません。無料でいつでも受けられるアンケート形式なら確実にMBTIもどきです。「診断」を謳うのも要注意対象で、本物は「検査」と称します。診断だと「お前の性格を16タイプの中から当ててやろう」みたいな勘違いの全能感が滲み出てきませんか?
MBTIもどきで最も幅を利かせているのが「16Personalities」です。これはMBTIとは無関係と称していながら16タイプの性格名はMBTIをパクっており、日本MBTI協会からも名指しで言及されています。より科学的な支持の篤いビッグファイブの要素も取り入れたと自称しながらも、つまみ食い程度しか取り入れておらず、却って正当性を落としています。
正当性も妥当性もないニセ診断で自分の可能性を閉ざし自滅するだけならまだしも、他人へのラベリングなどで迷惑をかけるとなれば害悪としか言いようがありません。雑談のフックとか占い感覚とか、いくら言い訳を並べたとてやっていることは「血液型性格診断の後継」でしかない訳です。というか、もどきの中には血液型など他の要素と合体しているものさえあります。
日本MBTI協会「誰も本当の自分を理解してくれない」
さて、跳梁跋扈するニセ診断には日本MBTI協会も辟易しています。公式ホームページでは至る所に注意書きがされており、ニセ診断との違いを説く弁明のページも複数設置されています。説明の節々から感じられるのは、「誰も本当の自分を理解してくれない」「本当の自分はあんなものじゃない」「世間は自分に正当な評価や扱いを与えてくれない」といった苦悩です。
「本来のMBTIは国際規格があり、アメリカでは50年以上、日本でも20年以上の時をかけて誤解のないよう慎重に展開してきた」
「当協会の代表理事も、メールなどない時代から海外を渡り歩き研鑽と開発を積んできた」
「正式なMBTIは専門家の支援と共に受けるものであって、一人で診断ツールと問答するようなものではない」
「MBTIは日本で商標登録されているので、商標権を尊重せねばならない」
「人を簡単にカテゴライズする性格占いの類はもはや昭和の発想である」
「メジャーリーグではイチローのマリナーズ時代には既に公式MBTIが浸透していた。選手もコーチも皆受けている」
など、日本MBTI協会のホームページでは至る所に「本当の自分」のアピールが書き殴られています。しかし、いくら「世間で出回ってるのは偽物だ」「本当の自分はこうなんだ」と訴えたところで、ホームページでの独り言に終始していては誰にも聞き取ってもらえませんし、伝わるべきところに伝わりません。誤解や濫用を止めるには相応の大きなアクションを取ってもらいたいです。
16Personalitiesに代表される「もどき達」のことを、雑談のフックだの盛り上がるネタだのと甘やかすのはいい加減やめにしましょう。所詮は血液型性格診断の後継でしかなく、こんなもので喜ぶのはブラハラ気質だけです。権威などない占い程度と弁えて「本物」には配慮し席を譲ることを、MBTIもどきの諸々には強く求めます。
その本来のMBTI自体も完璧ではない
ただ本来のMBTIにも、採用国の多さや歴史の長さでは説明しきれない欠点が度々指摘されており、疑似科学扱いされることも少なくありません。科学情報サイト「ナゾロジー」のコラムではMBTIもどきが起こす問題に言及しながらも、本物についても以下の欠陥を挙げています。
・NEO-PI-Rなど他の性格検査との相関が小さい。すなわち妥当性に問題がある。
・判断の仕方(TかF)だけは期間を開けると結果が変わる。すなわち信頼性に疑問がある。
・客観的データの不足や二元論による中間層への無視といった、ユング由来の弱点。
・発明したマイヤーズとブリッグス親子は、研究者ではなく作家というキャリア面での不利。
本来のMBTIでもこうした欠陥を抱えているのですから、模倣品の正当性など推して知るべしです。ただ、本来のMBTIが専門家とのフィードバックをセットとしつつ単なる座標軸という引いた立場を強調するのは、あらかじめ分かっていた欠陥を少しでもカバーしようという誠実さの表れかもしれません。
参考サイト
日本MBTI協会
https://www.mbti.or.jp
人気の16タイプ性格診断「MBTI」が科学的根拠に乏しいと言われる4つの理由
https://nazology.kusuguru.co.jp
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