約4割が「身体障がいのみ」雇用——法定雇用率2.7%時代に問われる、当事者にとっての本当の変化

仕事 ニュース

2026年7月1日、民間企業の障害者の法定雇用率が2.7%へと引き上げられました。従業員数37.5人以上の企業が新たに対象となり、多くの職場で採用や雇用管理の見直しが進んでいます。ただ、制度の数字が動いても、当事者であるあなたの働く現場は、本当に変わったでしょうか。レバレジーズ株式会社が運営する就労支援サービス「ワークリア」が、障がい者雇用実務に関わる担当者555名を対象に実施した2つの調査からは、法定雇用率2.7%という目標の裏側で、現場が抱える課題と、当事者にとって見過ごせない偏りが見えてきました。

「達成企業3割以下」——制度と現場の温度差

調査によると、2026年4月末時点で「既に2.7%を達成している」と答えた企業は28.3%にとどまり、全体の3割に届いていません。「7月までに達成見込み」の35.9%を合わせても、約5社に1社にあたる18.4%の企業が「達成の目処が立っていない」と回答しています。


出典:レバレジーズ株式会社「ワークリア」

法定雇用率という一つの数字を前に、企業ごとの準備状況には大きな差が生じています。当事者にとって、この差は「働きやすい職場に出会えるかどうか」の差にも直結しかねません。応募先の企業がどちらの側にいるかによって、受け入れ体制や配属先の余裕は大きく変わってくるはずです。

担当者の「DEI疲れ」は、当事者にとって何を意味するか

調査では、障がい者雇用に関わる担当者の66.3%が「DEI疲れ」を感じると回答しました


出典:レバレジーズ株式会社「ワークリア」

DEIとは、さまざまな違いを持つ人たちが、それぞれ尊重され、安心して力を発揮できる環境をつくる考え方や取り組みのことです。

[DEI:多様性(Diversity)、公平性(Equity)、包括性(Inclusion)の頭文字を取った言葉で、性別、年齢、国籍、障害の有無、価値観などの違いを認め合い、誰もが活躍できる組織や社会を目指します。]

理由として最も多かったのは「障がい者本人への配慮と、他社員の業務負荷のバランス調整が難しいため」(52.4%)、次いで「『数(法定雇用率)』の達成ばかりが優先され、本来の目的が見失われていると感じるため」(52.2%)でした。


出典:レバレジーズ株式会社「ワークリア」

ここで注意したいのは、担当者が疲れているという実態を、当事者への負担のように読み替えないことです。疲弊の背景にあるのは、担当者の約7割が他業務との兼務であり、専念できている担当者が1割に満たないという、体制そのものの手薄さです。当事者が受け入れられる現場の余白は、担当者一人ひとりの頑張りだけで生み出されるものではなく、組織としてどれだけリソースを割けるかにかかっています。

なぜ「身体障がい」ばかりが選ばれるのか

今回の調査で当事者として最も見過ごせないのは、障がい種別ごとの受け入れ実態です。全体の37.5%の企業が、身体障がい者のみを雇用しており、他の障がい種別を含んでいません。今後の採用において「最も優先的に採用したい」障がい種別を聞いた質問でも、48.8%が「身体障がい」と回答し、依然として半数近くを占めています。


出典:レバレジーズ株式会社「ワークリア」

一方で、企業が「採用」に課題を感じているのは身体障がい(46.1%)が最多である一方、「定着」に課題を感じているのは精神・発達障がい(42.2%)が最多という結果も出ています。つまり、採用のしやすさを優先するほど、定着支援が手薄なまま新たな職場に踏み出さざるを得ない当事者が増えていく構造があるということです。


出典:レバレジーズ株式会社「ワークリア」

精神障がい・発達障がいのある人が就職を希望しても、企業側の「定着への不安」から採用の優先順位が下がってしまう現実は、当事者にとって長く指摘されてきた壁でもあります。法定雇用率という数字の達成が急がれるほど、この壁がかえって固定化されてしまう可能性には、当事者としても注意深く目を向ける必要があります。

達成企業がしていること——当事者が使える武器としての制度とAI

一方で、調査からは達成企業が実際に取り入れている工夫も見えてきました。すでに2.7%を達成している企業の64.3%が、週の所定労働時間が10時間以上20時間未満の「特定短時間労働者」の雇用制度を活用しています。これは、体調や特性に応じて短時間から働き始めたい当事者にとって、選択肢を広げる制度でもあります。達成が困難な企業での活用率は18.6%にとどまり、約3.5倍の差が出ています。

また、達成企業の53.5%が人材紹介や定着支援などの外部支援サービスを活用しており、活用理由としては「担当者のリソース不足の解消」(64.0%)が最多でした。


出典:レバレジーズ株式会社「ワークリア」

生成AIツールの活用も進んでいます。障がい者社員がAIツールを業務で活用している企業は67.3%にのぼり、活用企業のほぼ全てが何らかの効果を実感していると回答しています。生産性の向上やミスの削減に加え、コミュニケーション負担の軽減という声もありました。苦手な部分をAIで補いながら、自分の得意なことに力を注ぐ。これは「克服」ではなく「付き合っていく」働き方を後押しする、当事者にとって心強い選択肢の一つと言えそうです。


出典:レバレジーズ株式会社「ワークリア」

数の達成の先に、私たちが問い直したいこと

ワークリア事業責任者の津留有希子氏は、担当者が置かれている複雑な課題や体制を、企業全体として正しく把握し、持続可能な推進体制を模索することの重要性に触れています。数字の達成だけを急ぐのではなく、外部の専門知やテクノロジーを頼りながら現場に余白を生み出し、その余白を当事者の定着支援へと還元していく。そうした好循環こそが、法定雇用率という制度の本来の目的に近づく道なのかもしれません。

2.7%という数字が達成された職場であっても、そこで働く当事者一人ひとりが「選ばれた」のではなく「選び取れた」と感じられるかどうかは、また別の問いです。私たちは、この数字の先にある景色を、当事者の視点から問い直し続けたいと思います。

関連リンク 

・ワークリア公式サイト:https://worklear.jp/ 

・調査【前編】法定雇用率2.7%達成企業は3割以下、約7割が他業務と兼務する現場を襲う「DEI疲れ」の実態:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000949.000010591.html 

・調査【後編】法定雇用率引き上げに向けた準備状況は二極化、達成企業の「特定短時間労働者」雇用率は未達成企業の約3.5倍に:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000953.000010591.html 

・厚生労働省「特定短時間労働者の雇用率算定について」:https://www.mhlw.go.jp/content/11704000/001049750.pdf

調査概要 

調査対象:従業員数37.5名以上(2026年7月以降の法定雇用義務対象)の企業において、障がい者雇用実務に関与する担当者 調査年月:2026年4月28日~30日 調査方法:インターネット調査 回答者数:555名 調査主体:レバレジーズ株式会社 実査委託先:GMOリサーチ&AI株式会社


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障害者ドットコムニュース編集部

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