特例子会社の仕事が事業に直結。ノーリツ・エスコアハーツ、給湯器「組立配送」の西日本拠点に

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組立配送の作業にあたるエスコアハーツの社員(写真提供:株式会社ノーリツ)

障害者雇用の特例子会社が、親会社の事業に直結する工程を担うという発表が、2026年9月18日にありました。福祉施設や病院、ホテルの給湯設備も手がける株式会社ノーリツ(神戸市)の特例子会社、株式会社エスコアハーツ(兵庫県稲美町)が9月17日、業務用給湯器「組立配送」の出荷式を開いたのです。組立配送は給湯器と配管を事前に組み立てて建設現場へ届けるサービスで、人手不足の建設業界で需要が伸びています。その仕事が、障害者雇用の現場に来たことになります。

2026年7月に民間企業の法定雇用率は2.7%に上がり、9月は厚生労働省の「障害者雇用支援月間」です。「何人雇うか」が問われる時期に、「どんな仕事を任せるか」を前に出した発表です。

出荷式で何が始まったのか


出荷式のテープカット(写真提供:株式会社ノーリツ)

出荷式は9月17日(木)、エスコアハーツで行われました。ノーリツグループは、建設業界の人手不足と施工品質を安定させたいという需要を背景に、組立配送の内製化(外部に頼らずグループ内で担うこと)を進めてきました。その西日本エリアの拠点として、特例子会社であるエスコアハーツが組立配送業務を始めたというのが、今回の発表の骨子です。

リリースが強調しているのは、任せる仕事の中身です。「単に雇用の場を広げるのではなく、一人ひとりが組立、品質確認、梱包、出荷準備といった責任ある工程を担い、技能を身につけながら、ノーリツグループの非住宅事業に貢献することを目指しています」と記しています。非住宅事業とは、住宅向けではなく、ホテルや病院、福祉施設、工場といった施設向けの事業のことです。


初号出荷のトラックの前に立つ関係者(写真提供:株式会社ノーリツ)

「組立配送」とは──建設現場の人手不足と省施工

組立配送とは、業務用給湯器と配管・架台(機器を載せる台)などの周辺部材を、あらかじめ組み立てた状態で施工現場へ届けるサービスです。リリースの図では、流れは五つの工程に分かれます。①組立、②配送、③現場での車上渡し(トラックの荷台の上で引き渡すこと)までをノーリツ側が担い、④吊り上げ・横持ち(設置場所までの運搬)と⑤設置は発注者側が行います。現場での組立作業が減るため、省施工・省人化と施工品質の安定につながるとしています。


図:組立配送の流れ(提供:株式会社ノーリツ)

背景には建設業界の人手不足があります。国土交通省の資料によると、建設業の就業者は1997年の685万人から2024年には477万人まで減り、55歳以上が約4割を占める一方、29歳以下は約1割にとどまります。ノーリツの業務用向けサイトには、大型の50号給湯器を10台組み立てる現場で組立配送を使い、施工の手間と時間を大きく減らせたという設備店の声も載っています。

組立配送は、福祉のために用意された仕事ではなく、建設現場の側から求められて広がってきた仕事です。その工程を特例子会社が担う点が、今回の発表の中心にあります。

特例子会社とは──631社、5万3,710.5人の現在地

特例子会社とは、障害者の雇用に特別の配慮をした子会社で、厚生労働大臣の認定を受けると、そこで雇用する障害者を親会社の実雇用率に算入できる制度です。厚生労働省の「令和7年 障害者雇用状況の集計結果」によると、2025年6月1日時点で認定を受けている企業は631社(前年から17社増)、雇用されている障害者は5万3,710.5人(前年は5万290.5人)でした。人数に小数が付くのは、短時間で働く人を0.5人と数える制度上の計算のためです。

民間企業全体では、雇用障害者数は70万4,610.0人と過去最高を更新しました。一方で実雇用率は2.41%にとどまり、法定雇用率を達成していない企業は54.0%にのぼります。そして2026年7月1日、民間企業の法定雇用率は2.5%から2.7%へ引き上げられ、雇用義務の対象も常用労働者40人以上から37.5人以上に広がりました。企業の側で「あと何人」という数え方が強まる局面です。

特例子会社には、昔から指摘もあります。親会社の雇用率を達成するための受け皿になりやすいこと、業務が本体から切り出した補助的な仕事に偏りやすいことです。今回の発表を読むとき、この二つの指摘は物差しになります。

エスコアハーツは2006年1月5日、ノーリツグループの障害者雇用の特例子会社として明石市で設立され、2010年に稲美町へ本社を移しました。ノーリツの100%出資で、従業員は132名、うち障害のある社員は56名(2026年4月現在)です。仕事は給湯器の部品製造、商業印刷、計測機器の校正、PCのセットアップ、事務作業の代行など多岐にわたります。2013年には給湯器リサイクルの株式会社リハーツを、2015年には就労継続支援A型事業所の株式会社すまいるハーツを設立し、公式サイトはこの3社を「三位一体の体制」として紹介しています。厚生労働省の「障害者活躍企業」(2017年・2019年)や「もにす認定」(2021年)も受け、2026年1月に設立20周年を迎えました。

「品質と責任を担うものづくりの仕事に挑戦」── 両社長のコメント

リリースには両社の社長コメントが載っています。ノーリツの竹中昌之社長は、組立配送を非住宅事業の成長を支える取り組みと位置づけたうえで、次のように述べています。竹中氏は2016年当時、エスコアハーツの社長を務めていました(ノーリツ2016年5月20日付リリース)。


株式会社ノーリツ 代表取締役社長 竹中昌之氏(写真提供:株式会社ノーリツ)

「西日本エリアの出荷拠点としてエスコアハーツで組立配送業務の内製化を進めることで、品質の安定やノウハウの蓄積、対応力の強化につなげていきます。また、障がいのある社員の職域開発や活躍機会の創出にもつながる取り組みであり、事業価値と社会価値の両立を実現するモデルとして育てていきたいと考えています」

エスコアハーツの新田博哉社長は、設立20周年に触れながら次のように述べています。


株式会社エスコアハーツ 代表取締役社長 新田博哉氏(写真提供:株式会社ノーリツ)

「今回の組立配送業務の開始は、障がいのある社員が品質と責任を担うものづくりの仕事に挑戦し、ノーリツグループの事業に直接貢献する新たな一歩です。設立20周年の節目に、お客さまや社会への価値提供につながる事業を開始できたことを大変うれしく思います。事業を通じて雇用が生まれ、人が成長し、企業も発展する好循環を実現しながら、本日の出荷を新たなスタートとして、お客さまから信頼される品質とサービスの提供に努めてまいります」

二人の言葉に共通するのは、障害者雇用を事業の外側に置いていない点です。

「何人」から「どの仕事を」へ

筆者(川田祐一)は障害者ドットコムの代表で、自身も障害当事者です。社員17人中13人が当事者の会社を経営しながら、企業の障害者雇用の相談にも乗っています。特例子会社には、親会社の雇用率のための器になっていないか、という指摘が昔からあります。だから今回の発表で一番印象に残ったのは、単に雇用の場を広げるのではないということでした。

法定雇用率が2.7%になり、企業の関心はどうしても「あと何人」に向きます。でも当事者にとって大事なのは、入った先で何を任されるかです。組立、品質確認、梱包、出荷準備と、工程の名前が具体的に並んでいることに意味があります。任される仕事が増えるほど、自分で選べて決められる幅が広がるからです。

障害者雇用は会社の負担でも、してあげることでもなく、事業そのものに組み込んでこそ続くと筆者は考えています。当事者の方は会社を選ぶとき、「どの工程を任せてもらえますか」と聞いてみてください。企業の方は「何人」の前に「どの仕事を」から考えてみてほしいです。

株式会社ノーリツ ニュースリリース「ノーリツグループ、特例子会社のエスコアハーツにて業務用給湯器「組立配送」の出荷式を開催」(2026年9月18日)
https://www.noritz.co.jp/company/news/2026/20260918-006217.html

株式会社エスコアハーツ 公式サイト
https://s-hearts.jp/

障害者ドットコムニュース編集部

障害者ドットコムニュース編集部

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