心の一歩

人生の回転2 『心の一歩 』vol.6

『心の一歩 』 vol.6 <毎月30日連載>

梅雨入り前の東京。車椅子に乗っていると、アスファルトによる太陽光の照り返しがきつく、とにかく、汗が噴き出る噴き出る。灼熱の坂道をゆっくり登るのは、エヴェレスト登山をも凌ぐ贅沢な冒険だぜ・・と思うことにした。

きつい思いをして観る絶景や頂点は格別の景色であるのは間違いない。目で見るだけでなく、心で観ればそれは同じことだ。と、壮大に強気でいく。

赤羽橋駅で待ち合わせた髭モジャの後輩は、私よりも身体は一回りデカい。態度もデカく、話す言葉はタメ語だし、どっちが先輩なんだか分からない。でも、もう25年くらいの付き合いで、兄弟みたいなもんだ。

そんな後輩と、東京タワーを目指す。赤羽橋駅からは約600m。普通に歩けば10分はかからない。ところが、そうはいかない。これがまた、長い坂道。でもさすがは港区、道は整備されている。それでいても緩やかな坂道、縁石、排水のための傾斜、この連続はなかなかタフな行程だった。1人じゃ確実に断念し、妥協して帰ってると確信(笑笑笑)

あとちょっとで東京タワーというところまで来ると、紅白幕がかかり御祭りをやっていた。見ると、フリーメイソンという団体の御祭りだ。

髭モジャの後輩は、ニヤニヤしながら、中に入ってみようよと言う。俺は興味が無いと言った。慈善団体じゃなくて偽善団体だろ?と。後輩はその言葉に大笑いしながら、太々しく敷地内に入っていく。仕方なく私も続く。

敷地内に入ると、町内会のお祭りのような雰囲気で屋台が多数出ていた。まぁ、暑いからとかき氷を注文すると、配ってくれた人は、有名な政治家一家の方だった。

せっかくなので福祉談義をしてみた。人が集まる駅前の歩道、もっと整備して広くとかできませんかね。と、聞くと、それをやると、今度は自転車の違法駐輪が増えて、結果として皆さんがまた困るんですよね、と。

これだ。と思った。なんだかんだ豊かである日本は、バリアフリーが実施されたり、ユニバーサルデザインが適用されて都市作りや交通は確実に変わりつつある。しかし、整備しました!という事実だけ。または、設置していますよという満足だけ。我々が使用するには、余りにもハードルが高いものが多い。全く無意味なものさえある。あとちょっとの工夫で格段に使えるものになるのに、設計やネーミングに愛が感じられないことも多々ある。やっと使えるようになったのに、心無い人の行動で、逆に危険になってしまうこともある。本当に落胆させられることが多い。

身なりや生活水準は豊かになって久しい。しかし、社会全体の人の心意気は未だ、豊であると言えないのではないか。様々な状況の人が物やシステムを使えるようにと、その使用者の裾野を広げたということ自体は有り難いとこだ。しかしその分、私達の目の前に居る人は、もしかしたら圧倒的に不自由な状態、つまり私達より思いのほか困っているのかも知れないということも増えているのだ。人は往々にして自分都合の杓子定規で考えがちだから気が付きにくいが、もっと心の視野を広げてみれば、結果として相手も自分も、より良くなるための接し方があるということが観えてくるのではないだろうか。その積み重ねが、今の日本には必要なのではないかな。なんて事が頭に浮かんだ。

話を終えて、偽善団体でも無かったかな?思うのと同時に、これだけではわかんない。。。。。と一言残して、その場を後にした。

やっと東京タワーに到着した。エレベーターで展望台まで登る時間は残っていなかったので、また来るとしよう。今度は髭モジャの後輩とじゃなくて。誰か一緒にツーリングしませんか(笑)  色々な発見を一緒にしたいです。


※バリアフリー 「障害者・高齢者などのために、生活に障害となる物理的な障壁の削除を行うという、今有る物に後付けで改良していくという考え方」

※ユニバーサルデザイン 「最初から多くの人に使いやすいものを作るという考え方のもと、設計していく方法」

※フリーメイソン 「会員相互の行動により人格の向上を目的としている組織。日本では奇異な目に晒されることが多いが、イギリスでは300年以上の歴史を持つ友愛団体」だそうです。

佐久間 勇人

佐久間 勇人

私は『脊髄小脳変性症』というだんだんと運動神経が失われていく進行性の神経難病です。今じゃ何をするのも命懸け。それでも大好きな水泳を続けています。溺れているんだか泳いでいるんだかわからなくなる時も増えてきました。心が折れそうにもなります。もう折れているかも知れません。
それでも水泳を通して色々な人と出会いたい。全力で笑いたい。皆で繋がり笑いたい。それが活力。HUG&PEACE

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