聴覚障害の当事者として「筆談ホステス」斉藤里恵氏が参院選に立候補

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「筆談ホステス」として知られる斉藤里恵氏が、今夏の参院選へ立憲民主党から出馬することを表明しました。聴覚障害の当事者である斉藤氏は、「筆談」というコミュニケーション手段によって生きる術を得ており、その半生が書籍化・ドラマ化されています。

障害を抱える国会議員は過去に数名いたそうですが、現在のところは0名となっております。もし斉藤氏が当選すれば、久々に国会で障害当事者が立つことになります。似た境遇での出馬は、子どもがダウン症である今井絵理子参議院議員が該当します。このまま障害者福祉に向けて楔(くさび)を打ち込むような候補が出るのでしょうか。そもそも楔が機能しているのでしょうか。現時点ではわかりません。

筆談ホステスになるまで

斉藤区議は1歳のころに聴力を失いました。チャレンジドとなってなお、「人と関わりたい」という信念を崩さず、23歳で上京してからは様々な接客業に従事します。その中で「筆談」という手段がクリティカルヒットし、「筆談ホステス」となりました。

ホステスを辞めてからは、1児のシングルマザーとして奮闘しつつ、2015年に東京都北区の区議会議員となりました。これを1期務めたのち、今の参院選出馬に至ります。

非常にざっくり来歴について説明しましたが、要するに「障害当事者」で「シングルマザー」の「区議会議員」という所だけ押さえてもらえれば大丈夫です。

閑話休題、聴覚障害者のコミュニケーション手段
聴覚障害者のコミュニケーション手段は多岐にわたります。おなじみ手話をはじめ、筆談や指文字、障害の程度によっては補聴器に頼ることもあります。あまりに手段が多いためか、人によってどれを採用しているのかがまちまちで、手話に精通していない聴覚障害者がいるのは全く不思議ではないのです。

もう一つ、先天的あるいは乳幼児期に聴覚を失った人は発話(特に滑舌)にも影響しています。聴覚を失ったことで自分の発声を振り返ることができず、二次障害として発声に影響するという流れです。ろう学校でも発声訓練を行っています。

感動ポルノ枠への懸念

古くは今井絵理子氏の出馬から懸念されていたことなのですが、票を集めるだけの使い捨て要員にされるのではないかという声も少なくないです。邪推といえばそれまでなのですが、仮に当選したとしても精力的な活動は難しいでしょう。(今井氏は今年3月に、障害者を題材にした映画「BAD DREAM」のトークイベントへ出席していましたので、活動が全く出来ないわけでもなさそうです。)

立憲民主党が斉藤区議を擁立したとあって、自民党は不倫騒動で一度断念した乙武洋匡氏を将来擁立するのではないかという予想もあります。今井氏→斉藤氏→乙武氏と、障害当事者の政界登用でターン制バトルなぞやられては却って障害者に失礼だと思うのですが、乙武氏の擁立は絵空事とも思えません。絶対やるという保証もないのですが。

政局考察を抜きにしても、区議キャリアが1期しかない斉藤氏では国政進出に対して未熟ではないかという意見もあります。これに関してはいきなり国会議員となった有名人が多いので今更ですし、区議としての経験がある分アドバンテージか何かがあるのではないかと思います。

超党派での障害者支援に期待

あれこれ不安はありますが、期待も皆無ではありません。障害者福祉へ向けた楔は国政へ確実に打ち込まれつつあります。このまま障害当事者やその近親者である議員が超党派ネットワークを築けば、福祉が大きく動くきっかけになるでしょう。

ある理念のもと、政党を超えて動くことを超党派と呼びます。よほどのことがない限り実現しないイメージがありますが、実は現代日本でも超党派の取り組みが行われています。それは表現規制分野で、賛成反対のどちらも超党派となっており、政党ではなく議員一人ひとりを見なければならない状況です。

政党に囚われないパワーが超党派の強さです。有権者の判断は難しくなりますが、超党派として障害者福祉に訴えかける動きが出来れば、大きな好転が起こるかもしれません。可能な限り楽天的な予想をするならば、このくらいでしょう。

まとめ

聴覚障害の当事者でもある斉藤区議が参院選に出馬します。大々的に報道されたことや「筆談ホステス」のネームバリューなどから、たぶん当選するのではないかと思うのですが、重要なのはその先ですよね。

政党や障害の違いに囚われない超党派を組むことが障害者福祉への追い風になると思っているのですが、そこまでには至らないでしょう。国民へ寄りそう働き者の議員ほど党内では嫌われて厄介者扱いされているのではないかとどうしても思ってしまいます。

最終的かつ正直な見解としましては、斉藤氏ひとり増えたところで変わりませんし、影響力を決めるのは恐らくマスコミの取り上げ具合ではないかと思います。

参考文献

斉藤りえ オフィシャルサイト – 人の心が聴こえる街に
https://saitorie.com

「筆談ホステス」、立憲から参院選に立候補へ:朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com

聴覚障害者のコミュニケーション方法|神奈川県聴覚障害者福祉センター
http://www.kanagawa-wad.jp

遥けき博愛の郷

遥けき博愛の郷

大学4年の時に就活うつとなり、紆余曲折を経て自閉症スペクトラムと診断される。書く話題のきっかけは大体Twitterというぐらいのツイ廃。最近の悩みはデレステのLv26譜面から詰まっていること。

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