フラッシュバックを克服する方法

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思い出したくないのに、過去に辛い思いをした出来事(トラウマ)が自発的に思い出される症状をフラッシュバックと言います。人間がフラッシュバックを起こす原因は、同じような危険に備えるために心身がその出来事を記憶するという本能であり、精神的な弱さではありません。今回は、私が考えているフラッシュバックを克服する方法を紹介したいと思います。

トラウマ、PTSD、フラッシュバックとは?

最初に、フラッシュバックの医学的な定義から紹介します。そのために、トラウマやPTSDの医学的な定義を紹介するところから始めたいと思います。

トラウマとは・・・親族の死別、震災や災害、交通事故など、ひどい体験をした時に、心身は大きな衝撃を受けます。その衝撃から「同じような危険に備えるために、覚えておかなければ」と、心身が本能的に記憶しておく出来事を「トラウマ」と言います。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは・・・トラウマが出来事・体験そのものを指す用語なのに対し、PTSDはトラウマが原因でおきるストレス障害を指します。

フラッシュバックとは・・・トラウマとなる状況が鮮明に思い出されて、不快感が続く状態です。言い換えれば、トラウマとなる状況が頭の中で何度も再生される症状です。思い出そうとして思い出しているのではなく、似たようなきっかけに心身が反応してしまう症状です。

トラウマやPTSD、フラッシュバックを起こす原因とは・・・トラウマやPTSD、フラッシュバックを起こす原因は人間の持つ本能的な機能で、精神的な弱さが原因ではありません。よほどひどい(非日常的な)体験以外でも、日常の出来事でもトラウマを起こす原因となり得ます。失恋をした、叱られた、緊張した、いじめを受けた、などという体験などです。本人にとって気持ちが強く揺さぶられる出来事であれば、どんなきっかけでもトラウマやPTSD、フラッシュバックを起こす原因となり得ます。

※このコラムでは、分かりやすくするために、PTSDの状態になっていることも含めて「トラウマになる」、「トラウマ」と書いています。

フラッシュバックの症状

フラッシュバックの症状には、以下のようなものがあります。

①トラウマとなる出来事の状況をありありと思い出す(ほんの一瞬から数分)。
②不安な気持ちになる。
③悲しくなる。
④どうしようもなく、無力な感じがする。
⑤頭が真っ白になる。
⑥言葉が思いつかなくなる。

フラッシュバックの症状の最大の特徴は、「思い出したくないのに、自発的にトラウマとなる体験が繰り返し思い出される」というものです。この特徴があれば、その症状はフラッシュバックだと言えます。

自身のフラッシュバックの体験

私は自閉症スペクトラム障害(ASD)を抱えており、その障害特性のために、小学校・中学校・高校時代はいじめの被害に遭い続け、2年生の9月に中退しました。

高校を中退し、一日中家で過ごすようになったことと、独学で大学入学資格検定(大検:現、高等学校卒業程度認定試験)と大学受験の勉強をしなければならないという言いようのないプレッシャーから、いじめの被害の体験が激しくフラッシュバックするようになりました。それも、ひっきりなしに母親にそのことを話し続けました。この頃は私も悩みに悩んでいましたし、私の様子がおかしいと思った両親の勧めもあり、高校3年生に当たる年の4月から精神科医(現在の主治医)の診察を受けるようになりました。

私は、今年の3月から就労移行支援事業所に通っており、そこのスタッフにも自身のトラウマとなる出来事を話しました。しかし、その時に、私は「トラウマとなる出来事を誰かに分かるように話そうとすればするほど、フラッシュバックが頻繁に起きるようになる」と気づいたのです。そして、この気づきを主治医の先生に伝えました。

それに対する主治医の先生の回答はこうでした。「私の患者さんには、エレベーターのドアが開いて降りようとした瞬間に刺された人や阪神淡路大震災で家が全壊した人がいるのだけれど、私は彼らにその時の状況を一切訊かないことにしています。訊けば、その時の状況は詳しく分かるだろうけど、私がそれを分かったところで、彼らからその体験によるトラウマを取り除いてあげられるわけではないからです。だから、トラウマとなる体験を誰かに分かるように話そうとしない方がフラッシュバックは起きにくくなります。」

フラッシュバックからの回復の目安

まず、どのような状態になれば、「フラッシュバックから回復した」と言えるかの目安を確認したいと思います。

①フラッシュバックの回数が一ヶ月に一回以下に減る。
②フラッシュバックが起きても、そのことを考え続ける時間が減る。
③言葉にして、人に話せるようになる。
④現在の安全安心を確認できるようになる。
⑤また同じことが起きても、きっとうまく対処できると思えるようになる。
⑥思い出しても、腹痛・下痢などの身体症状が出なくなる。

私の今後の課題は、②と⑥です。第三者に話す機会を減らすことで、①が出来ることは前述しましたが、②と⑥については、これから主治医の先生に相談し、対処法を考えていこうと思っています。

最も大切なことは、「恐怖や不安を完全に消し去ることはできない」ということです。少しずつ恐怖や不安をやわらげ、普通の生活ができる程度までもっていくことが、回復の目安です。

フラッシュバックを克服する具体的な方法

フラッシュバックを克服する方法には、自分のトラウマを変えるアプローチと、外部のきっかけを変えるアプローチがあります。

自分のトラウマを変えるアプローチには、以下のようなものがあります。

①フラッシュバックが起きた時に、思いをノートに書き出す→思いはだんだんと変化する。毎回、吐き出し切ってしまうとよい。
②フラッシュバックが起きやすい状況をメモしておく→状況を理解したり、対処したりできるようになる。
③緊張状態をほぐし、リラックスできるように、普段から練習しておく。

私の今後の課題は③です。これは、就労移行支援事業所のスタッフからも課題だと指摘されています。

外部のきっかけを変えるアプローチには、以下のようなものがあります。

①安心できる人にだけ、話を聴いてもらう(余計なアドバイスや、説教をしてくる人には決して話さない。誰に、どこまで話すかは、自分の選択)。
②カウンセリングを受ける(相性のいいカウンセラーが良い)。
③心療内科やメンタルクリニックを受診する(話を聴いてくれる医師が良い)。
④環境を変える。
⑤避けていた場所に、安心できる人と一緒に、少しだけ近づいてみる。安全だと感じて、少しずつ行けるようになる。

①、②、③は出来ています。就労移行支援事業所から就職出来れば、④も出来ることになります。あとは、⑤が出来るようになれば、フラッシュバックは克服出来ると言えるかと思います。

まとめ

就労移行支援事業所の訓練の中で、フラッシュバックを克服するのに最も有効なのは、コントロールフォーカスだと思います。コントロールフォーカスとは、過去、結果、他人、ルールといった変えられないものよりも、未来、自分、価値観といった変えられるものに目を向けて注力していくことを目指す思考のトレーニングです。過去の出来事は自分の心の中からは消えませんので、コントロールできないものです。しかし、未来は今後の自分次第で、かなりの程度までコントロールできます。「過去を払拭する」ことを目指すのではなく、未来を考える時間を増やすことで、トラウマとなる出来事を考える時間を減らすことがベストな対処法だと思います。

参考文献

「トラウマ (PTSD) とフラッシュバックを克服する方法|病気|くもりのち晴れめでぃあ」
https://hare-media.com

サンライズ

サンライズ

40代の男性。2年生で高校を中退。その年にメンタルクリニックを受診し、抑うつ状態と診断される。うつ病と闘い、自身の発達障害を疑いながら博士課程に進学するも、博士号は取れずじまいで単位取得満期退学。これを機に、それまで主治医の方針で「疑い」のまま保留になっていた自閉症スペクトラム障害の診断を受ける。現在は一人暮らし。趣味は読書、音楽(邦楽)観賞、YouTube、クイズ番組を観ること。

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