ASDの特性「想像力の欠如」とは
発達障害出典:Photo by Milad Fakurian on Unsplash
自閉症スペクトラム障害(ASD)を持つ人の障害特性としてよくあげられるものに「想像力の欠如」があります。
簡単にいえば「想像することが苦手」ということですが、具体的にはどういった場面で、どういう事柄を想像することが苦手なのでしょうか。
このコラムでは「想像力の欠如」について、ASD当事者である私の経験を例に引きながら解説していきたいと思います。
「想像力の欠如」とは
ひとことで「想像力の欠如」といわれても、いまいちピンと来ない人は多いと思います。私自身、ASDの障害特性について調べる過程でこの言葉を知ったとき、具体的にはどういう意味なんだろうかと首をかしげました。
ここでいう「想像力」とは、他者と共通のイメージを持つ力や、周囲の状況から形の無いもの(相手の意図・将来の予測など)を推し量る力のことをいいます。
それを踏まえて、ここからは想像力に関する私の苦手なことを例としてあげながら解説を進めていきます。
未経験のことをイメージするのが苦手
私は自分が経験したことのない場面や、やったことのない作業の手順について、具体的なイメージを持つことが苦手です。初めておこなうものごとについては、ただ説明されただけではどう進めていけばよいのかわからず、途方に暮れてしまうことがあります。
とにかく、一通り自分で経験してみないことには全体像が把握できないので、とりあえず手をつけられそうなところから始めて、試行錯誤しながら進めていくことになります。
過去の経験を他のことに応用するのが苦手
過去に経験したことと同じような場面にあたったときは、以前の経験を応用して取り組むと効率がよいでしょう。しかし、私はこれがあまりうまくできません。
なぜなら、よほど似通っているケースでない限り、過去に経験したこととはまた別の場面だと認識してしまうからです。そのため、新しいものごとに出会うたびにまた1からやり方を構築していくことになります。その結果、新しい環境や作業に慣れるのに余計な時間がかかってしまいます。
私は、ASDを持つ人の「こだわり」に固執するという特性は、この苦手によるものだと考えています。日々直面するものごとを、それぞれのケースごとに適したやり方で処理することが難しいため、自分の慣れ親しんだやり方を使って対処しているのです。
相手の言葉の意図を読み取るのが苦手
たとえば、よく聞く言い回しで「なんで○○しないの」という言葉があります。私はこれを文字通りに「なぜそれをしないのか」という、理由について尋ねられているのだと解釈してしまうことがしばしばあります。
その言葉を使った人は本当は「○○してほしい」という意味で使っているのですが、私はその意図に気づきにくいため、そのあとの会話や行動に食い違いが出てしまいます。
曖昧な表現が苦手
また、曖昧な表現で指示をされることも苦手です。たとえば「もうすこし多めに」というような言い方をされたときです。
この場合、私の頭のなかでは、その「多め」とは「その人が想定している多め」なのか「指示を受けた私の裁量での多め」でいいのか、それとも「一般的な多めの相場」があってそれに沿ってくれといっているのかなど、さまざまな選択肢が浮かんできます。
このように具体的な量を示さない曖昧な表現をされると、判断に非常に困ってしまいます。
おわりに
ここまで私の個人的な例をあげて解説してきましたが、「想像力の障害」についてなんとなくでも理解いただけたでしょうか。
ASDを持つ人はこの障害特性のために、社会生活や他者とのコミュニケーションをおこなう上でのさまざまな苦手を持っています。
これらの苦手を改善するためには、当事者自身が自己理解を深め、対策を実践することに加えて、周囲からの理解やサポートも大切な要素となってくるのです。
参考文献
【Kaien 大人のASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群・広汎性発達障害など)】
https://www.kaien-lab.com
【d-career ASDは想像することが苦手なの??(前編)】
https://dd-career.com
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自閉症スペクトラム障害(ASD)