ASD(自閉スペクトラム症)には3つの型がある…
発達障害ひとくちにASD(自閉スペクトラム症)と言いましても、人によってその特性や程度には差異があります。連続体を意味するスペクトラムを新しい名前として提案した表現力の豊かさにはほとほと感心させられますね。
それで、ASDには大きく分けて3つの基本型と2つの追加型が存在します。生得的に持っている基本型と、その適応によって後天的になる追加型です。自分がどれになるのか気になったら、かかりつけ医にでも聞いてみるといいかもしれません。
3つの基本型
ASDには、まず3つの基本型として「積極奇異型」「受動型」「孤立型」が存在します。ただ、診断によって“全部乗せ”があり得る発達障害のこと、全ての要素を部分的に持っていることもまた可能性としてはあり得るのかもしれません。そこの所はどうなのでしょうか。
積極奇異型
よく他人にアプローチするものの、自分ルールやこだわりのせいでズレているタイプです。
能動的に他者と関わろうとするのですが、自分ルールやこだわりを押し付けたり、対人関係の距離が測れなかったりして、結局コミュニケーションは上手くいきません。好きな話題を延々と続けたり、他人の地雷を知らぬ間に踏んでいたり、初対面にも妙に馴れ馴れしかったりと、なまじ行動力はあるせいで却って浮いてしまう難儀なタイプです。“察してちゃん”な定型の文化に合わないともとれますが。
受動型
あまり自我を出さず受け身でいることの多いタイプです。
求められれば集団行動さえもある程度従いますが、自分からアクションを起こすことはほとんどありません。自我を出さないあまり流されることも多く、いいように利用されたり支配や搾取を受けたりすることもあります。また、“受容”しているわけではないので、要求を詰め込まれればストレスを感じますしキャパシティにも限界があります。いわゆる「手のかからない子」として問題が表出しにくいため、発覚が成人後まで遅れやすいのも特徴です。
孤立型
他人との交流を避け、一人でいるほうが安心するタイプです。
周囲への関心が薄いため、自分から他者に働きかけないのは勿論、他者から関わられてもコミュニケーションが進展しづらいです。人と接しないことそのものに安心感を抱き、集団の中ですら他人が居ないような振る舞いがみられることもあります。当然雑談など出来ませんし、周囲の目線や感覚など分かりようもないので、服装のセンスも歪みがちです。
2つの追加型
加えて、「尊大型」「大仰型」が追加コンテンツのようにくっつくこともあります。これらは周りの環境やコミュニケーションの結果の積み重ねなどによって変化します。
尊大型
高圧的に振る舞い相手を見下すタイプです。
人によっては「4つ目の基本型」として語られることもありますが、ASDの下地に誤った学習や成功体験が重なった「追加型」の趣が強いです。高圧的に主張やこだわりを押し付け、それを通した経験に依存した状態ともとれるでしょう。
大仰型
周りに適応しようとして却って不自然になるタイプです。
対人距離が分からないので、とりあえず誰にでも目上への態度で接することが多いそうです。本人は適応しようと頑張ってはいるのですが、所々でどうしても不自然さが残り、定型の集団へ合わせる苦労から精神疾患などの二次障害に発展することもあります。そもそも、定型たちに合わせてあげるのもエネルギーが必要なのですが、見えざる苦労というものは往々にして知覚されないものです。
穴をある程度埋める考え方
基本型は持って生まれたものである以上、無理にフラットにしようとしたところで徒労に終わるだけです。ただ、定型と同じとまではいかなくても、負の側面をある程度抑えるぐらいなら可能です。何より、「自分は障害だから仕方ない」と開き直る態度は同じ障害を持つすべての人々にとって迷惑なので絶対にやめてください。
まず、積極奇異型は「一旦黙る」スキルを徐々に身に着けていきましょう。空気を読まず地雷を踏み抜くのであれば、一旦黙って思考の猶予を自身に与えるのです。また、定型どうしの会話もよく観察し、「話す」「聞く」のタイミングを学習するのも有効です。とにかく、「相手にターンを渡す」ことを意識しましょう。
次に、受動型は「嫌だと思ったら断る」スキルが必要になります。断らずに生きてきて断る方法を会得するのは非常に大変ですが、唯々諾々と従う事だけが全てでないことを様々な事例から示していくとよいでしょう。遵法意識を刺激するのも手です。その上で、少しずつ自我を確立していけると良いですね。
孤立型には、「最低限でも他人と交流する」スキルが必要です。一人で生きているつもりでも、買い物先などで必ず会話や意思表示が要求されるからです。それに、社会から完全に隔絶されることまで望んでいる訳ではありません。自身のこだわりと社会の要求を照らし合わせ、「社会で許されるこだわり」が見つかればそれを頼りに社会との接点を守っていきましょう。
適応の仕方を直す
追加型の方は、適応における歪みを直していくことが主になると思います。出来ていることを伸ばしながら、望ましくないことは是正していく、樹木剪定のようなイメージです。
大仰型は、集団に適応しようとしたこと自体は“認める”ことが前提です。適応の仕方を直す以前に、これまで適応しようと本人なりに努力してきた経緯や意思を受け容れないことには前に進みません。そして、定型へ合わせる心労を軽減するために「ストレスマネジメント」についても上手になっておく必要があります。
尊大型になってしまった人は、非常に難しいです。明らかに間違った適応と相手を見下す性分を是正するには、「叱ってくれる大人」が居れば良いのですが、成人してからだとそれが望めないのです。加えて、尊大型はそれなりの社会的地位を築いていることもあり、止められる人間はどんどん限られてきます。たまに「最も支援が必要な人間は、最も支援したくない特徴を持つ」と訳知り顔で語られることもありますが、これがその最たる例なのかもしれません。
どの障害にも言えることなのですが、一番大事なセルフコントロールとは、居直り強盗のような開き直りを絶対にしないことです。本人がますます苦しくなりますし、同じ障害を持つすべての人にとっても迷惑になりますからね。ネット上の障害者アンチに餌を与え、それを貪る様子自体が見ていて不快でもありますし。
参考サイト
ASDのタイプ3+2【積極奇異型・受動型・孤立型+尊大型・大仰型】
https://kokoro-kichijoji.com
【発達障害、対人関係4つのタイプ】
https://hyogo-osaka-shogai.com
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自閉症スペクトラム障害(ASD)