ASDと10年間の引きこもり生活~そこからの脱出

発達障害

出典:Photo by Ömürden Cengiz on Unsplash

私は大学を卒業してから、現在利用している就労移行支援事業所への通所を始めるまでの約10年間、引きこもり生活をしていました。

途中、自閉症スペクトラム障害(ASD)の診断がおりました。今思い返せば引きこもり生活が長期化した背景には、ASDの障害特性が大きく関わっていたのでしょう。

引きこもりのきっかけ

私の引きこもりの直接のきっかけは、就職活動の失敗でした。大学在学中、周りがごく普通に就職活動を進めているように見えるなか、私はその流れについていけなくなりました。誰かに相談することもできず、そのまま就職活動からフェードアウト。卒業にいたりました。

ここから約10年におよぶ引きこもり生活が始まります。

引きこもり生活と障害特性

就職できずに大学を卒業してしまった私は、その後何もせず家で生活する日々に入りました。初めのうちは家族や親戚から外に出て活動することをよく勧められていました。「まずはアルバイトでもいいから働いてみたらどうか」「同じ趣味の人が集まるサークルに参加してみてはどうか」などです。

そんな助言を私はすべて拒否していました。新しい場所に出て、知らない人と関わっていくことに強い抵抗感がありました。当時はそれが何によるものなのかわかっていなかったのですが、この抵抗感こそがASDの障害特性だったのです。

ASDを持つ私には「生活の多くのことにルーティン的な行動が決まっていて、変化があると不安定になりやすい」「他者の意図や、状況に応じた暗黙のルールを読み取ることが苦手なために、対人不安におちいりやすい」といった特性があります。このような特性から、生活パターンを変えることに強い抵抗感があったのです。

また「未来のことを具体的に想像できないために、将来に関して切実な不安を抱くことが少ない」という特性も、引きこもりの長期化に大きく関わっています。

しかし当時は、そのようなASDの特性の存在を知らずにいたため、何も対処することができませんでした。家に閉じこもる暮らしにもいつしか慣れてしまい、変化のない生活が何年も過ぎていったのです。

自分が発達障害だと知る

6年ほどたったある日、社会に出られずにいる私を心配した親族にうながされ、心療内科を受診しました。検査の結果「自閉症スペクトラム障害」と診断されました。私はこのとき初めて自分が発達障害であることを知ったのです。

それから数か月間の通院を経て、精神障害者保健福祉手帳を取得し、主治医と相談して就労移行支援を利用することを決めました。

その間は、社会復帰のためのトレーニングにも取り組んでいました。といっても急に生活を大きく変えることはできないので、まずは外出の練習から始めました。

毎朝決まった時間に起きて、日中にウォーキングなどの活動をする。そんな生活を毎日続けました。このトレーニングのおかげで現在の規則正しい生活を送るための土台を作れたのだと思います。

しかし、私はここで再度の挫折を経験しました。どれだけ月日が過ぎても、就労移行支援を申し込む決心がどうしてもつかなかったのです。無気力におちいった私は、また元の引きこもり生活に戻ってしまいました。

引きこもりからの脱出

また何年か経ったある日、転機が訪れました。その日、私は手帳の更新のため市役所に来ていました。手続きの途中、窓口の方から「働きたい気持ちは持っていますか」「相談できる事業所を紹介しましょうか」と声をかけられました。

その方は私の了承をえると即座に地域の障害者支援相談事業所に電話をかけ、アポイントを取ってしまいました。予期せぬ展開に私は戸惑いましたが、今思えばこれくらいの後押しが無ければ、私は今でも引きこもりを続けていたと思います。

こんな経緯で紹介された障害者支援相談事業所で、私は自分のこれからを支援員の方と話し合い、発達障害専門の就労移行支援事業所の見学と体験利用をおこなう予定を立てました。

自分の体調に合わせて、あくまでゆっくりとしたペースで、1つの予定を終えるごとに次への準備期間として1か月ほどの間隔をあけて進めていきました。

この相談事業所での取り組みを5か月間かけておこなった末、私は自分に合っていると思える就労支援事業所と出会うことができました。通所を始めてから現在で10か月になります。

おわりに

これまで読んでいただいた通り、私が引きこもり生活から脱出できたのは、たくさんの人のサポートのおかげです。ASDを持つ人はその特性のために、自分一人の力で挫折から立ち上がるのは大変です。

まずは自身の特性はどんなものかを知ること、そしてどうすれば自分に合った支援を受けられるのかを知ることが、引きこもりから脱出するための道しるべになると思います。

参考文献

【孤立型ASD・こころ診療所吉祥寺駅前】
https://kokoro-kichijoji.com


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エムティー

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趣味は読書。好きな作家は筒井康隆です。

自閉症スペクトラム障害(ASD)

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