存在しない臭いを感じる「幻臭」とは何か

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Photo by Ryan Quintal on Unsplash

「幻覚」といえば、存在しないものが見える「幻視」、存在しない音や声が聞こえる「幻聴」ばかりイメージされていると思います。実はもう一つ幻覚がありまして、それは存在しない臭いを感じる「幻臭(げんしゅう 」と呼ばれます。ただ、幻臭は一発変換できないほどマイナーとされています。幻嗅(げんきゅう)と呼ぶこともありますが、こちらも一発変換は出来ません。

また、似たものとして異嗅症という疾患が存在し、更に刺激性と自発性に分けられています。刺激性は「そのもの本来と異なる臭いを感じる」「何を嗅いでも同じ臭いに感じる」という異常で、自発性は「常にその臭いを感じている」「何もないのに臭いを感じる」という幻臭に似た特徴のある症状です。

これらの原因は様々なものが考えられています。蓄膿症、感染症、頭部外傷、アレルギー性鼻炎、手術の後遺症、薬物、加齢、偏頭痛、認知症、統合失調症までも挙げられています。原因自体は多種多様ですが、鼻腔内・嗅細胞・中枢神経の異常に大別されるようです。

幻臭に関して、2013年に行われた実験レポートが存在します。この実験は、6種類のアロマオイルの匂いを画像込みで覚えさせて、後で無臭刺激を加えた7種類を利きアロマしてもらうというものでした。実験に参加したのは健康な大学生8人ですが、うち7人が無臭刺激に対してアロマを感じる回答する結果となり、健康な人でさえ「幻臭」は起こることが示唆されています。

一方、このレポートでは「レスポンデント条件づけ」の関与も述べられています。レスポンデント条件づけとは、なんともなかったもの(中性刺激)が何かの刺激(無条件刺激)と結びつくことで、簡潔に言えば「ラーメンではなく情報を食ってる」状態です。極端に言えば偏見が幻臭を呼ぶこともあり得なくはない訳ですね。

あるアニメ映画の上映期間中、「普段映画館に来ないような奴の体臭がキツかった!」という報告が矢継ぎ早に挙がっていたそうですが、偏見(ミサンドリー)による幻臭ではないかという指摘も既に為されています。まさに「奴らは体臭を嗅いでるんじゃない、情報を嗅いでるんだ!」です。

最近は悪臭で他人を困らせることをスメハラ(スメルハラスメント)と定義づけられていますが、自分が被害者という立場を貫ける点で、直接「臭い」と指摘するよりも優れているそうです。ありもしない臭いに被害者感情を膨らませるのは「弱者の嗅覚」以外の何物でもないですね。実際に「男どもはとにかく『臭い!』と言ってやれば勝てる!」とライフハックのように語っていたミサンドリストを見たことがありますので、私はカードショップなどの異臭報告を信用しないタチです。

参考サイト

嗅覚障害|みんなの医療ガイド|兵庫医科大学病院
https://www.hosp.hyo-med.ac.jp

“幻臭”の仕組みを探る 芳香と植物の写真に対する命名訓練による嗅覚反応の条件付け(島宗・濱野 2013)(PDFファイル)
https://www.jstage.jst.go.jp

オペラント条件づけとレスポンデント条件づけ
http://daas.la.coocan.jp


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遥けき博愛の郷

遥けき博愛の郷

大学4年の時に就活うつとなり、紆余曲折を経て自閉症スペクトラムと診断される。書く話題のきっかけは大体Twitterというぐらいのツイ廃。最近の悩みはデレステのLv26譜面から詰まっていること。

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