大人のADHDとは?困ることへの対処法~当事者に聞く
発達障害出典:http://www.photo-ac.com
ADHD(注意欠陥・多動性障害)の症状には、不注意、多動性、衝動性などがあります。子どものころからなんとなく周囲と違和感を感じているものの、状況が改善しないまま大人になり、うまく生活することができず困っている人が少なくありません。今回は、大人になってから自分がADHDであることを知った方にお話を伺いました。
大人のADHD(注意欠陥・多動性障害)と診断されて
IT企業で20年間システムエンジニアとして働かれたAさん。業務の重圧からうつ状態になり、休職された経験が3度あったそうです。その度にカウンセリングと服薬治療を受け、仕事に復帰されました。そして復帰する度に、原因だと思われたご自身の物事の捉え方や認知の癖を修正するよう心掛けられたそうです。
Aさん:「ところが、私の場合、またうつ状態になりました。そんな私をずっと視てきた上司からある日意外な声かけがありまして。『おまえはADHDかもしれないな。行動パターンを思いつくままネットで検索したら、一番上にADHDと出てきた』と。これがきっかけで専門医を受診し、ADHDと診断されました。今から2年前の話です。現在、私は就労移行支援機関に通所しながら、自分の障害の特性を学び、対処の仕方を訓練しています。」
ご自分がADHDであることを知り、不安よりも、「これまで感じていた生きづらさの原因が分かって良かった」という気持ちの方が強かったそうです。
ADHDは治せなくても対処はできる
Aさん:「ADHDだと診断された時は正直どうすればいいのか分かりませんでした。家計への負担が大きいのでもう休職はしたくない、ADHDが原因ならば治すしかないと思いました。」
その後、ADHDが先天的な脳の機能障害であり、自分で治療できるものではないと知ったAさんは、現在通っている就労移行支援機関のスタッフに相談されたそうです。
Aさん:「そしたらスタッフさんから、ADHDは治せなくても対処はできると言われました。そのときはピンと来なかったのですが、2、3日経って、治らないことに不安になるよりは、前向きに対処すればいいんだ、対処できれば不安を自信に変えることができるんだと。現にこれまで仕事をしてきたじゃないか、対処を学んで実践することもできるはずだと考えられるようになりました。」
Aさんに聞くADHD特性と対処方法
今回はAさんが実践されて改善した対処方法をご紹介します。ADHDの特性により困ることは人それぞれなので対処方法も異なります。対処法の一例としてお読みください。
① 人に相談したり助けを求めることができない
不安を抱えたまま仕事を続けると、自分の殻に閉じこもってしまう。その状態で仕事を終えることができても、人から評価してもらうまで不安が残る。
対処方法:不安や疑問が生じたときに人に相談したり、ミスを報告したりできないので、自分から定期的に報告する時間と場を持ってもらい、聴いてもらうことで進捗報告もでき、不安を抱えずに済むようになった。
② 口頭での言葉の意味をイメージできないことがある
特に急ぎの口頭指示をを受けると、最初の言葉だけしか頭に残らない。また言葉を文字通りにしか理解できない。しかもその場で聴き返すことができない。
対処方法:「口頭での指示の聞き取りと理解が苦手であることを事前に伝えておき、理解できないときはその場でも、一旦作業に入ってからでも聞き返すようにしました。この対処は、業務を進めるためにやらなければならないことだと今は思えるようになりました。」
③ ワーキングメモリーの容量が小さい
作業中に他の作業の指示をされると、意識を切り替えることができず、指示内容を全て理解したり、書きとめることができない。電話対応は、相手の表情が見えないため、緊張して頭の中が真っ白になってしまうことがある。
対処方法:「常にメモ帳とペンを準備しておき、聴いた内容を書き取るようにしてます。自分に分かる省略記号なども使ってメモを速く取れるようになりました。それでも内容が複雑に思えたり、理解しづらい場合は、メールや文章で伝えてもらうようお願いすることにしています。文章であれば多少複雑でも理解しやすいので。」
子どもの頃から人に頼ったり、相談することが苦手だったAさん。今回うかがった対処方法にある通り、ご自分から人に配慮を願い出たことで自主的に対処できるようになった経験から、協力を求めることの大切さを学ばれたそうです。
Aさんは現在も障害福祉サービスの一つである就労移行支援機関に通われ、困り感への対処を実践されています。「支援スタッフからのアドバイスや、共に通う仲間と困り感を共有できたことも、今後の自信に繋がった」そうです。
その他の障害・病気 注意欠陥多動性障害(ADHD)