当事支援者の私だから言える『言われる前にやるのが仕事だよ』(『発達障がい~神からの贈り物~』第29回)
『発達障がい ~神からの贈り物~』 第29回 <毎月10日連載>
先日、世界自閉症啓発デーに合わせたイベントにパネラーとして参加させていただく機会を得ましたが、その中で私の中から『いわれる前にするのが仕事』というフレーズが思わずこぼれだしてしまいました。
もちろん思い付きや出まかせではありません。A型、B型の支援者としての経験を積む中でどんどん深まってきた確固たる考えです。
一般的な発達障害者の困りごととして明確な指示がないと動けないというものが代表例として挙げられます。職場や自助会でもそういう人をたくさん見かけます。支援者として彼らが自立に向かう課程で明確な指示を与えることは私たちに求められるものであるのは承知しています。しかし、それが絶対的に必要なものでしょうか?
私自身も5年ほど前に発達障害の診断を受けました。しかし、私の場合、明確な指示よりも必要事項のみを伝達してもらって『後はお任せ』というのが理想です。もちろん、それに見合った結果を残す自身もあります。しかし、もともと明確な指示が全く必要でなかったわけではありません。
私の同志、堺ハッタツ友の会代表の石橋ともよく話すことですが、私たちがそう言えるようになった理由は小さな失敗をたくさん積み重ねたからです。自助会での決まりフレーズ『誰もわかってくれない』、『自分は失敗ばかりしてダメな人間だ』、そういうフレーズばかり言って失敗を恐れていては何も学ぶものはないのではないでしょうか?つまり、『失敗しないための明確な指示』を求めているのではないでしょうか?
多くの就労支援事業所などで『明確な指示』があたりまえのようになってきていますが、そこから一歩踏み出した一般社会でどれほど期待できるでしょうか?私たちが支援するのは一般就労への橋渡しであり、『明確な指示』がないことも十分に考えられる場所に送り出すのが私たちの仕事です。
私自身は現場でも、利用者のスキルに合わせて『いわれる前にするのが仕事だよ』と伝えています。何をしてよいかわからないならそれを聞けばよい、明確な指示を仰げばよい、そう伝えています。自主的な行動が間違っていたとしても、そこから学べばよい、それが福祉の現場に求められる本当の姿ではないでしょうか?
私のこの発言が大きな混乱を招くかもしれません。反対意見をいただくのも覚悟の上です。しかし、誰かがこの扉を開かない限り次には進めないエリアが存在するのではないでしょうか?
同時者である私だから勇気をもってしたためてみました。
発達障害