「壁」生きる!生きる!心の叫び vol.4
『生きる!生きる!心の叫び 』vol.4 <毎月30日連載>
私は病気だ。
頭は働くけど身体がいうことをきかなくなる進行性の病気。
もどかしさ、悔しさ、悲しさが日々の生活で付きまとう。
病気だから仕方ない、身体障害者手帳1級だしな。
そう言い聞かせていた。
私の障害は一過性の物でも無いし、その症状に慣れることも無い。
断崖絶壁、海のもと。潮の荒れる波打ち際にロープで縛り付けられて放置されている、そんな状況だ。
もがいても、もがいても、そのロープは解けない。
暗くてどす黒い恐怖の波が繰り返し繰り返し休むことなく打ち付けてくる。
もう息が出来なくて苦しい。
闇色の海が満ちてきて、その波は高さを増してきた。
限界だ。そう感じてしまう。
最近は情緒が不安定にもなる。
自分のことを、自分の気持ちを、コントロールしてきたつもりだった。
常に笑顔でいることを心がけ言い聞かせてきた。
でも、もう無理だ。
いや、とっくに限界は超えていたのかもしれない。
誰か助けてくれ。誰か気が付いてくれ。
先日、悪友と喧嘩をした。
メッセンジャーを使ったテキストでの喧嘩だ。
高校時代から付き合いのある後輩で、短いメッセージでも、感情がこもった口調や表情が良くわかる。
ある事で、奴から「ショボいな」と言われた。
その瞬間に、貴様に何が分かるんだッと、はらわたが煮えくり返ってきて、売り言葉に買い言葉の喧嘩が始まった。
奴も容赦がない。
冷徹に論理で被せてくる彼の言葉に怒りが収まらない。
怒りで身体が震え、あいつを殴り、力で思い知らせてやりたい。とさえ思った。
身体が思うように動かず、物に当たることも出来ない。
だから、必死でテキストを送った。
オッサンなのに、それはまるで子どもの喧嘩のようで、
だけど、だからこそか自分も相手も心の底からの本心がこもっていた。
しばらくして頭が冷えてくると、これは久々な感情だなと気が付いた。
最近は苦しみと笑顔だけがいったりきたりしていたから新鮮だったのかも知れない。
後輩との喧嘩は怒りという感情に包まれてはいたけれど、憎しみがあったわけではない。
分からずやのお互いを、お互いが分からせ合おうとしてぶつかった、心の声だったと思う。
心を許し合っていないと出来ないことなのかもしれない。
それは素晴らしい事なのではないか、そう感じた瞬間に憤慨は情熱のようなものに転移していった。
少なくとも悪友は、私が限界を迎えつつあることに気が付いてくれていた。
友人や周りも気が付いてくれているのかも知れない。
でも、助けてもらうことは出来ない。
何かを求めているんじゃない。同情でもない。
そうだ、きっとわかりあう事への共有心が欲しいのかも・・・・
彼らは遥か絶壁の上に居る。
思えば彼らも絶壁をよじ登っているはずだ。
必死なんだろう。
ならば、そっから見ていろよ。俺もここから見届けてやる。
それにしても、俺に「ショボい」と言った悪友よ。
お前だって、まだまだショボくねーか?
そんなところで休んでいる場合じゃないぜ笑笑
今月も泳いだ。
水泳が好きだ。
思いはそれだけ。
好きだけれど、もう苦行みたいなもので、水を飲んで飲んで本当に溺れそうになる。
泳ぎながら、母の命日を思い出した。
あの涙の止まらなかった時から、今月で14年。
自分がこんな風になっているなんて想像も出来なかった。
母と私は同じ病気だった。
笑顔の多かった母は自ら命を絶ってしまった。
俺はこのまま限界でおぼれてしまうのか。
そう思うと、母が手を振っている姿が頭をよぎった気がした。
優しかった笑顔。母はまだ応援してくれている。
そうだよな。どうせ後戻りも出来ないし。
カッコ悪くても、タイムが悪くても、どうでもいい。
もがいてもがいて少しでも前に進んでやろうと思う。