ビジネススキルの問題解決能力をメンタルヘルスに活かす
暮らし私は長年、情報システムの運用管理やそれに伴う品質管理、品質改善という業務に取り組んできました。システム運用の現場では、安定稼働を脅かす多くの問題(インシデント)が日々発生していました。しかしながら、それら全ての問題に対し1つ1つ真面目に取り組んでいては、寝る間を惜しんで働いても時間が足りません。問題を整理し、重要なものから対処して潰していく。そういったスキルが必要になります。それは一般的に問題解決能力と言われるものです。私自身、そのスキルをメンタル面の改善にも活かし、大きく体調を安定させることが出来ました。ここでは、私自身の行った対処法について、説明させて頂きます。一般的なビジネス手法とは異なる我流のものもございますので、その点はご了承頂ければと思います。
【目次】
・はじめに〜Excelでメンタル面の問題を管理してみよう
・問題を全てあげて整理し原因を掘り下げて考える
(1)まずは問題を全て列挙する
(2)問題を整理する
(3)原因を掘り下げて考える
(4)問題を再整理する
・課題を設定して対策を考える
(1)問題を課題に置き換える
(2)課題解決に向けた対策を考える
(3)課題に優先度をつける
・対策を実行する
(1)対策を実行し進捗管理する
(2)PDCAをまわす
・さいごに
はじめに〜Excelでメンタル面の問題を管理してみよう
はじめに、PCをお持ちであれば、メンタル面の問題を整理、管理するツールとして“Excel”を使うことをお勧めします。理由は以下の通りです。
【Excelを使うメリット】
・問題を表でわかりやすく管理することができる。
・問題を整理する際に簡単に行を移動できる。
・問題を統合する際にセルを結合できる。
・表で管理したい項目を簡単に増やしたり減らすことが出来る。
・強化したいところ、強調したい所を色付け(網掛け)等で見やすく出来る。など
私の様に就労移行支援事業所に通われている方は、症状一覧表の様なものを作られていると思いますが、それを利用されても良いと思います。
問題を全てあげて整理し原因を掘り下げて考える
(1)まずは問題を全て列挙する
まず、問題とは何なんでしょう?
ビジネス書などの教科書通りの説明ですと、あるべき姿と現状のギャップとして表面化しているものを問題と言います。この考え方で問題を洗い出す手法を、ビジネスの世界では、ロジカルシンキングやギャップ分析と言います。ここではメンタル面の問題を取り扱いますので、自分の健康な時と比較して、表面上に現れている身体の異常を問題と位置付ければよいと思います。私の場合ですと、以下の様なことが問題としてあげられました。
【メンタル面の問題例】
・電車に乗ると過呼吸になり鼓動が速くなる。
・大勢の人前で話すと声や手足が震え頭が真っ白になる。
・緊張するとお腹をこわしてしまう。
(2)問題を整理する
身体上や生活上の問題を全て列挙した後は、問題を整理します。具体的には、原因が同じになりそうなものをくっつけていき、グループ化するとよいでしょう。ビジネスの世界では、問題をグループ化し、論理的に整序し、問題解決の道筋を明らかにしていく手法を“KJ法”と言います。コンサルティングなどでも使われる基本手法ですので、興味を持たれた方は詳しく調べて頂ければと思います。また、以下の様なストレスの種類による観点でグループ化してみるのも一つの方法だと思います。
【ストレスの分類】
・物理的ストレス:暑さ、寒さ、騒音などによるストレス。
・化学的ストレス:薬物、化学物質、酵素などによるストレス。
・生物的ストレス:細菌やウイルスへの感染、炎症を起こすことなどによるストレス。
・社会的、心理的ストレス:社会生活や人間関係での怒り、悲しみ、緊張、不安などによるストレス。
(3)原因を掘り下げて考える
整理した問題について、原因を掘り下げて考えます。掘り下げる知識レベルが深い方が、より良い対策を打てると思います。私の場合は、脳科学や医学的な検知でまで原因を掘り下げました。その結果、電車での過呼吸と、大勢の人前での発表時の緊張も根本原因は、偏桃体の過剰反応(暴走)と同じものに結びつけることが出来ました。
(4)問題を再整理する
原因を追求する中で、この問題とこの問題は原因が一緒なんだなと判明する場合もあると思います。そういったものは再整理して、くっつけてしまいましょう。なぜくっつけるかというと、結局同じ対策を打つことになるからです。
課題を設定して対策を考える
(1)問題を課題に置き換える
問題を課題に置き換えます。すり替えると表現しても良いかもしれません。なぜこの作業が必要かというと、課題にする方が前向きに次の対策に進めるからです。問題に対する対策となると、自分は問題のあるダメな人間だということが前提で、対策に乗り出してしまうことになります。課題に置き換えると、私はこれを乗り越えると明るい未来が待っていると考えやすくなります。問題に対して1つ1つ対策を考えている方もいらっしゃいますが、問題を整理し課題にしてから対策を考えた方が、効率的で効果的ではないかと考えます。
【問題を課題に置き換えた例】
問題:大勢の人前で発表する時に声や手足が震える。
課題:大勢の人前でのプレッシャーの解消、平常心の確保 ←問題を課題に置き換えることが大事
(2)課題解決に向けた対策を考える
課題解決に向けた対策を原因などから自分なりに考えてみましょう。対策の数は多い方がいいでしょう。また、課題の解決基準を決めおくと、対策の効果がわかりやすいでしょう。
【対策の例】
課題:大勢の人前でのプレッシャーの解消、平常心の確保。
対策:大勢の人前で発表する時は、事前に伝えたいことを少なく絞る。発表時は呼吸に意識を向け、準備したことを伝えることに意識を集中する。
解決基準:大勢の人前で5回連続、平常心で発表が行える。
(3)課題に優先度をつける
課題に優先度をつけます。例えば、以下の様な3つの基準で重みづけをするといいでしょう。
【優先順位付けの基準例】
・重症度:その問題が生活にどの程度の支障を来しているかを3段階や5段階で評価してみる。
・頻度:どの程度の頻度で問題が発生しているのかを3段階や5段階で評価してみる。
・難易度:課題解決に対する難易度、容易度を3段階や5段階で評価してみる。
基準を設けて評価した後は、課題を総合評価します。そして、評価の高い物から優先度を上げて取り組むとよいでしょう。優先度の低いものは、生活上支障が少ないものですので、後回しでも良いでしょう。
対策を実行する
(1)対策を実行し進捗管理する
自分で考えた対策を実際に実行し、その効果や進捗状況を記録しておきましょう。課題の解決基準を決めてますので、効果がない場合は、再び原因の掘り下げからやり直してみるとよいと思います。ステータスや進捗度を%で記録しておいても良いでしょう。
【ステータスの例】
・対応前:対策をまだ実行出来ておらず、未着手の状態。
・対応中:現在対策を実行中の状態。
・対応済:対策が効果を発揮し解決がはかられた状態。設定した解決基準を満たした状態。
(2)PDCAをまわす
PDCAとは、Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)の略語になり、それらを繰り返し行うことをPDCAサイクルと言います。自分で考えた対策が全て有効とは限らないと思います。そういった場合は原因の掘り下げからやり直し再び新しい対策を打てばよいでしょう。ビジネスの世界では課題に対する解決期限を区切られたりもしますが、個人的な課題ですのでそこまで厳しくする必要はないと思います。自分の課題解決に向けて日々改善が進んでいることが見える化が出来ていれば、自身の心の安定にもつながることでしょう。
さいごに
体質上、克服が完全に無理なものまで問題や課題にすることはもちろん無いと思います。ただ原因を追究して対策を打てば改善が見込めるものについては、上記のような手法で、一覧表を使い、問題管理、課題管理を始めてみてはいかがでしょうか?私と全く同じ手法で取り組む必要はないと思いますが、うつ症状などに苦しまれている方々に本情報が少しでもお役立ちすることを願い、本コラムを締めさせて頂きます。
参考文献
立命館大学 ホームページ 〜 ブレーンストーミングとKJ法
http://www.ritsumei.ac.jp/
リクルートマネジメントソリューションズ ホームページ 〜 課題解決に向けて何をすべきなのか
https://www.recruit-ms.co.jp/