発達障害の偉人?それ、生存バイアスかもしれません!

発達障害
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久々に立石美津子さんのオフィシャルブログを覗いてみました。ASDのお子さん(現在は支援学校を卒業し、就労移行支援で訓練中)と長年共に歩んできただけあって、愛情も辛苦も全てがリアリティに溢れた文章として表現されています。

そんな立石さんが、過去に子育てサイトで執筆した「親にとっての困り行動が将来強みになるかも」という趣旨の記事を、よそ様でない自身のブログで書き直した上でアップしました。担任教師から「今日おたくの〇〇さんが~」という報告ばかりで自尊心が削れている親御さん向けの内容です。ゆえに、発達障害を扱う記事ではとてもマイルドであると思われましたが…。

単なる偉人紹介ではなかった

件(くだん)の記事では、発達障害の著名人としてスティーブン・スピルバーグ監督らを紹介しつつ、発達障害を持つ子どもは叱られ続けて二次障害に陥りやすいというリスクも示唆しています。ここまではよくある発達障害偉人伝に過ぎませんが、注目すべきは別の箇所です。

「昔からこういう子は居たから気にするな」という励ましの言葉に、立石さんは「では“こういう子”は今どんな大人になっているの?」と疑問を投げかけています。更に、「“こういう子”で記憶が止まっているのは、歳を重ねる途中で社会に出なくなったからでは?」と畳みかけました。要するに、学校を出てから社会に馴染めずドロップアウトした人の存在を問うたわけです。

何らかの発達障害を抱えている著名人が語り継がれていく一方、就職を拒否され続けて社会への適応どころか接点すら持てない人も対極には居ます。成功した人物の存在を慰めにするのは構いませんが、それが「生存バイアス」であることには留意すべきでしょう。

生存バイアスとは

生存バイアスとは、何らかで成功を収めた人に注目するあまり失敗した人や事例について考慮しないという認知の歪みです。類語は「死人に口なし」となるでしょう。成功者に倣えば誰でもいい思いが出来るほど甘い世の中ではないのです。

生存バイアスが知れ渡った逸話があります。第二次大戦の頃、戦闘機の補強する部位を決めかねていた連合軍は、戦地から帰還した機体の損傷部位を調査して決めることにしました。データを集めるとエンジンやコクピットが無傷と分かり、そこ以外の強化に踏み切ろうとします。ところが、ある数学者が待ったをかけました。

曰く、「調査した機体はどれも被弾しつつも帰還したものだが、逆に言えば被弾しても生還しうる部位だったと言えまいか。私は被弾データのないエンジンやコクピットを強化するべきだと思う。なぜならば、そこを撃たれた機体は即座に撃墜され、報告のしようが無いからだ」

エンジンやコクピットの被弾データが無いのは被弾した時点で墜落が決まっているからだとし、それら心臓部の装甲を強化すべしと進言したのです。この意見は受け入れられ、結果的に連合軍の生存率は上がりました。転じて、生存バイアスの考えが世の中に広まったのです。

発達障害で言えば、偉人や著名人を挙げて「今は学校の先生に迷惑がられていても、将来その個性がきっと花開くよ!」と慰める行動が当てはまります。ツカミはそれでいいかも知れませんが、生きる目的は何か偉業を成し遂げたり一流の業界人になったりするだけとは限りません。その人が充実して生きていくための現実に即した療育がなければ話にならないのです。

精神疾患の寛解にも生存バイアス

精神疾患から立ち直った記録や発達障害なりの社会人生活レポートを参考として見る機会があるかも知れません。本人なりにもがいてきた中で寛解などの答えにたどり着いた記録は元気づけられることでしょう。しかし、「あぁこれは単なる生存バイアスだな」と片付けられる粗末な記録もあります。あまり参考にならない記録の特徴を2つ挙げましょう。

そんな私にも「パートナー」が~系
全く参考にならないと評判なのが、「恋人が支えになってくれました!」と唐突にパートナーの存在を示唆するものです。ごく単純な話で、「恋人ありきかよ、読んで損した」と唾棄されます。生存要因のひとつとして恋人の有無を挙げるのもどこか「違う」気がしますね。

二言目には「努力」系
「努力で生きづらさを克服した!お前らも努力しろ!」と、やたら「努力」という単語に頼るのも質の低いレポートと言えるでしょう。ああいうタイプは必ず「生きづらいのはお前の努力が足りないからだ!自己責任だ!」もセットでついてきます。努力が必ず実るとは限りませんし、時運などの不確定要素が成否に大きく働いてきます。それを知ろうが知るまいが、ただ説教したいという欲望のために「努力」「自己責任」を持ち出すのは卑怯というほかありません。

参考サイト

エジソンかアインシュタインか!問題行動で開花するの?|立石美津子オフィシャルサイト
https://www.tateishi-mitsuko.com

起業家必見:生存バイアスについて知っておくべきこと
https://blog.hubspot.jp

遥けき博愛の郷

遥けき博愛の郷

大学4年の時に就活うつとなり、紆余曲折を経て自閉症スペクトラムと診断される。書く話題のきっかけは大体Twitterというぐらいのツイ廃。最近の悩みはデレステのLv26譜面から詰まっていること。

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