障害者ドットコム代表川田が担当する大阪医専の授業で書道家・武田双雲さんが特別ゲストとして登壇
発達障害 暮らし障害者ドットコム代表川田が担当している大阪医専の精神保健福祉学科での授業「地域福祉の理論と方法」で書道家・武田双雲さんによる「毎日を楽に楽しく過ごす方法」をテーマに特別講義をオンラインにて開催しました。
現代の社会では、物質的に豊かな時代になったにもかかわらず、お金持ち、フォロワー数、地位を求めた結果、うつになってしまう人が多くいます。そんな中でも、武田双雲さんは、朝から晩まで周りの人たちと笑って楽しい時間を過ごされていて、その秘訣をお話ししてくださいました。
双雲さんは、「顔を洗う」「着替える」「洗濯する」など、毎日やらなきゃいけないことを書き出して、「楽しい」の反対の「なきゃ」を1つ1つ減らしてきたそうです。毎日やることをやらなきゃと思うか、1つ1つ楽しんでやるかでえらい人生が変わってきます。双雲さんは、ドライヤーをする時に「聖なる風よ、出でよ!」と言うなど毎日を楽しんでいるそうです。
後半のパートでは、学生からの質問に対して答える対話形式で進められました。
──私は嫉妬感や自信のなさを気にしないために、自分を他人よりも下と思いながら過ごしています。こんな自分を変えて、明るい気持ちで過ごすには?
人と比べるから劣等感が生まれます。劣等感がある時は、物差しが1つだと思っている時で、上と下があるように感じています。比べるのは人間だけ、宇宙から見ればどれもただの原子の塊にしか過ぎない。だから、比較をしないか、物差しを10個ぐらい作れば、劣等感が気にならなくなると思います。
──双雲さんがお子さんに対して一番大事にしていることは?
両親が自分を育ててくれたように接してくれているのですが、ひたすら味わうこと。長めにうっとりと見る、ニヤニヤしながら声を聞く、恋人とのデートのようにイチャイチャするなど。どれだけこの時間が幸せかを噛みしめています。「リアクション子育て」で究極に楽しむことを常にやっています。能力などジャッジしないことが大事だと思います。
──以前働いていた障害者施設の利用者の方々の字がとても特徴的でした。書かれた字を見てその人の特性や性格が見抜けることはありますか?
筆跡鑑定ができて、よく当たると言われていて、僕から言えば、字に性格が全部出ています。「田」の字でも、一画目から全員違う。ふわっと丸く書く人もいれば、反って書く人や太く真っ直ぐ書く人もいる。正解の人間がいないように、正解の字はない。お手本のように上手く書きたい気持ちはわかるが、まずは自分がアウトプットして書いた字がどうであれ、まずはイチャイチャ、ラブラブしてくださいと生徒さんに言っています。人が70兆個の細胞がコラボして字を書くこと自体がとんでもなく凄いこと。多様性を楽しみながら、書かれた字のここが好きとか面白いとか、字の特徴を褒めると自己肯定感が伸びると思います。
──書道家として挫折をお感じになることはおありだったのか、あるとすればそれはどのような時でどのように克服されたのでしょうか?
多動のADHDで暴れん坊の両親だったが、両親からは怒られたことがなく、大絶賛されながら育てられました。就職活動をせず、推薦でNTTに就職して、将来のことを考えずに働いていました。25歳の時、書道とインターネットを掛け合わせたら面白いと思い、NTTを辞めて、書道家になりました。海に行って書道をしたりなど爆笑書道家として、テレビや本などメディアで取り上げられるようになりました。活躍するようになると、今度は批判されるようになり、葛藤が生まれて落ち込んだ時期がありました。悪いことしたと思い、活動を辞めたいと生徒たちに伝えると、何で辞めるのと逆に爆笑されたんです。そして、批判と同時に「僕の本を読んで自殺を止めました」などの手紙が来て、喜んでくれた人の感動の声を聞くことで葛藤を乗り越えられました。
──ポジティブに考えるコツや、ネガティブに否定的に考えないためにされていることは?
ネガティブに陥る人の特徴は、ネガティブをネガティブに捉える「ネガネガ」になっています。「怒るよね〜」「不安だよ〜」「ムカつくよね〜」と出てきた本能的なものを「そらそうだよ〜」と許す「ネガラブ」がおすすめです。遺伝子の仕業だから、ネガティブになるのは当然。今日も順調にネガティブですぐらいの方が丁度いい。ネガティブを否定するポジティブやポジティブを押し付ける「ポジハラ」は間違ったポジティブです。共感力の高い親友を自分の中に置くと自然にポジティブになりますよ。
──緊張感のある中で、自分の力を発揮するには?
緊張は悪いことじゃない。緊張感がないと面白くないし、プレシャーになるときついので、ちょうどいい緊張感を味わうのがいい。悟空になって、「オラ、ワクワクすっぞ!」と言えばいいんじゃないですか。緊張状態でも何かいけそうじゃないですか。顔もワクワク顔で。それか、アラレちゃんになって、「うんちゃ!」って言うのもいいと思います。
──私はHSP(Highly Sensitive Person)で、人の感情に敏感です。自己と他者を切り離す方法や秘訣、自分の軸を保つには?
アーティストは感性が豊かでなければならなくて、作品のエネルギーは敏感なんです。体はセンサーだらけで、温度、音、色、表情などを感じ取っています。HSPはあくまで相対的なもので、生きている時点で全員超敏感なんです。経営者は数字に敏感だし、警察は犯人に敏感。僕は人の不安、匂いや音に敏感であるが、アーティストなので、プラスに働いている。受け取ることと解釈することは別で、雨や台風をネガティブに感じる人もいれば、僕のようにワクワクする人もいるので、解釈は変えられます。また、児童虐待など嫌なニュースなどの情報からは離れたらいいです。「敏感は宝物、繊細は才能」、ぜひ伸ばしていってください。
武田双雲さんはADHDを公表していますが、ADHDを障害ではなく才能として捉えています。自身のエピソードを交えたユーモア溢れるお話で、終始笑顔が絶えない楽しい授業になりました。武田双雲さん、ありがとうございました。
注意欠陥多動性障害(ADHD)