自分がHSPだとわかって~敏感さとの付き合い方
出典:Photo by Benyamin Bohlouli on Unsplash
最近「HSP」という特性について、目にしたり耳にしたりすることが多くありませんか?有名人やニュースなどで取り上げられたり「繊細さん」というキーワードの書籍が発売されたりしています。今回は当事者として経験を振り返りながら、HSPとの付き合い方についても紹介させていただきます。
HSPって?
HSPというのはアメリカの心理学者エレイン・アーロン博士が提唱した概念で「感受性が非常に強く、敏感な気質の人」という意味があります。視覚や聴覚、嗅覚などが敏感で、刺激を強く受けやすいという特性を指します。
アーロン博士は「DOES(ダズ)」という指標でHSPの特徴を示しています。
D:Depth of Processing/深く処理をする
簡単に結論の出るような物事であっても、深くさまざまな思考をめぐらせる
O:Overstimulation/過剰に刺激を受けやすい
刺激に対する反応が強く表れやすく、疲れやすい
E:Emotional response and empathy/全体的に感情の反応が強く、共感力が強い
他人との心の境界線が薄く、相手の感情の影響を受けやすい
S:Sensitivity to Subtleties/些細な刺激を察知する
他の人が気づかないような音や光、匂いなど、些細な刺激にすぐ気づく
このような特徴が当てはまる人がHSPということになりますが、全人口の20%がHSPであるという研究があるようです。
HSPはあくまでもその人の特性、気質であり、病気というわけではありません。ただそんな中で日常の刺激に動揺したり困ったりした時には、相応の対処が必要になってきます。
私の性格って「これ」だ!
私は小さなころから、音や刺激に人一倍敏感なところがありました。小学校のころ、地元の夏祭りでの音楽やお囃子の音に怖くなったばかりか、帰ってからもその音が耳にこびりついて離れず、なかなか寝つけないことがありました。また、人の機嫌の変化にも敏感で、小学校で誰かが先生に怒られている時は先生の怒りを感じて怖く感じたり、怒られてしょんぼりしているクラスの子を見たら自分もつらく感じていました。
その特性はずっと続き、大人になった今でも同じように敏感で刺激を受けやすいところがあります。小さいころ「相手の気持ちを考えられるのはよいことだ」と教えられましたし、動揺してしんどい部分はあるけれども、みんなそんなものだろうと長い間考えていました。
しかし、10年近く前から大学で様々な人と出会ったり、就職して社会の一員として生活するようになる中で、自分のその敏感さがだんだんと負担に感じるようになってきました。「みんなそんなものだろうと思っていたことが、どうやらみんなそうではないらしい」と。ならば「なぜ自分だけこんなにいろいろな刺激に簡単に左右されたり動揺してしまうのだろう?」と思うと、敏感な上に敏感であることそのものもつらく感じ出したのです。
そう感じていたら、去年友達のSNSへの投稿が目に入りました。「HSP診断してみたら結構当てはまった。敏感であることの生きづらさがちょっと分かった気がした」と。その友達は自分の周りでは数少ない、自分と同じような気質の傾向にある人です。気になった私はすぐに「HSP診断」と検索してみました。いくつかのサイトを開き、チェックリストでチェックしていくと……
挙げられている項目が当てはまる当てはまる。「大きな音や明るい光が不快に思うときがある」「人の感情に左右されやすい」「痛みを感じやすい」「環境の変化にすぐ気づく、混乱する」などなど……思い当たる節ばかりでした。それが「HSP」という特性であるということを初めて知りました。と同時に、いろいろな刺激に簡単に左右されたり動揺してしまうのは「自分だけ」ではないことに安心感を覚えたのです。
自分なりの対処法
さて、HSPであることがわかって安心感はえられたものの、自分の特性が何か変わるわけではありません。生活していく中で、音や刺激に敏感であったり人の機嫌に影響されたりすることに対処していく必要があります。
まず、私が考えた対処法は「1人の時間を大切にする」ということでした。人と常に関わっている状態では、相手の感情や周辺からの情報を気にしすぎてしまって、気疲れしてしまいます。1人の時間を意図的に作ることで、自分の考えや想像を及ばせる範囲を自分に限定し、負担を減らそうという方法です。
確かに殻に閉じこもってしまって、孤立してしまう危険性も考えられるのですが、全く心を閉ざすのとは違います。人と関わっている自分/1人の自分、の「ON/OFF」のメリハリを付けることをより意識するようになりました。
また、ON/OFFのメリハリを付けるためには、相手に自分の特性や状況を理解してもらう必要があります。そこで私は最近、自分のことについてなるべく詳しく相手に積極的に話すことも心がけるようにしています。
実を言うと少し前まで、弱みをさらけ出したくないという見栄のような感覚があり、自分の特性を伝えることには抵抗がありました。しかし、刺激や相手の感情に影響を受けやすいことは事実ですから、見栄を張って何事もないように振る舞うのは余計にしんどい、と今になって思います。あらかじめ相手に伝えておくことで、少し自分の気持ちの面でも楽になるように感じます。
まとめ~これから先も
残念ながら、これらの対処法は万能とは言えません。そう意識して行動していても、どうしても過敏に反応してしまったり疲れてしまうことは多々あります。
そもそも、つらい思いはありましたが、過敏である自分の特性自体は嫌いになったことはありません。敏感である、というのは相手へ想像力を働かせるという意味では大きな強みにもなると思いますので、付き合い方、対処の仕方次第で意味合いが変わってくる特性だと考えています。
初めに書いたようにHSPは病気ではなく「特性」です。したがって明確な治療法が存在するわけではありません。どこまで自分のことを理解しながら、どこまで相手に伝わるのか考えて伝えながら付き合っていくしかありません。これから先も、自分の特性として受け入れながら、なるべく負担になり過ぎないようなさまざまな対処法を試していきたいと思っています。
参考文献
【あなたのかかりつけ健康サイト サワイ健康推進課】
https://kenko.sawai.co.jp
【HSP診断テスト】
https://hsptest.jp