日本では約10人に1人が発達障害の可能性?~なぜ急増しているのか?
発達障害出典:Photo by Louie Martinez on Unsplash
日本では、発達障害の傾向がある人は約10人に1人といわれています。この数字は他国より圧倒的に多い結果です。なぜなのでしょうか?
発達障害の定義
発達障害は、2005年に施行された発達障害者支援法では「自閉症、アスペルガー症候群、学習障害、注意欠陥多動性障害、その他の広汎性発達障害、これに類する脳機能障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」と定義されています。
発達障害は神経発達のずれや脳の機能不全が原因であると考えられます。人間の発達は、一定の要件や基準によって同じように発達すると考えられていましたが、定型的な発達のルールや秩序から外れる神経発達症の方がいて、その層を総じて発達障害と呼んでいます。
言葉を変えますと、親の育て方、教育のしかた、友人関係などの後天的な環境が原因ではなく、先天的な要因による脳内の情報処理、制御能力が発達の偏りにより日常生活で困難を引き起こす障害のことです。この偏りは、幼少期の発達過程で明らかになってきます。
得意と不得意なことの偏りは誰にでもあるものですが、その差が非常に大きいために日常生活に支障をきたしている状態とも言うこともできます。
現在では、子どもが発達障害である疑いがあると、すすんで病院へ診断を受けに行く傾向があるようです。この傾向は、インターネットで簡単に事前情報を得られるようになったことで予備知識があることが影響していると考えられます。
しかし、大人になってからメンタルを崩して精神科へ通院したときに、そのメンタル不調がもともとあった発達障害の二次障害であると診断される場合もあります。
病気ではないため治療や根絶を目指すものではありませんが、人によっては支援が必要な特性をもっていることもあり、その場合支援は一生涯に渡り続きます。しかし、周囲の適切な理解、支援により社会生活上の困難は軽減することも可能です。
基本的に治療薬はありませんが、睡眠障害や多動性、衝動性や攻撃性、自傷行為などによって生活に支障を来している場合には、それらに対して薬物治療が検討されることがあります。
なぜ日本は発達障害と診断される人が多いのか?
日本は発達障害大国でもあります。本来なら人種で差が出るものではないですが、なぜか国ごとに統計を取ると常に上位という結果になっています。
現在、発達障害が増加していると言われる背景として、発達障害の診断基準が変わったこと、昔に比べて精神科に通院することに抵抗感がなくなりつつあることが、考えられます。
2013年までは、自閉症の定義は広汎性発達障害という大きい括りがあり、その下に自閉症、アスペルガー症候群、特定不能の発達障害というカテゴリーが存在していました。しかし、2014年にDSM−5(精神障害の診断、統計マニュアル第5版)が発行されてから、軽度から重度までの状態をスペクトラム(連続性)としてとらえるASD(自閉症スペクトラム)に統一されたため、それまでグレーゾーンと呼ばれた人も発達障害と診断されるようになったと考えられます。
しかし、ここ数年であらゆるメディアが「大人の発達障害」について情報発信をして、「発達障害」という言葉だけが一人歩きしていたように思えます。
発達障害と診断された人の中には、投薬治療で完治すると誤解している人も多いのではないでしょうか?また、現在では科学的に否定されている「親のしつけが原因」とする疑似科学がいまだにはびこっているのが現状です。
まとめ
発達障害と診断されても、ほかの国では許容されるようなことが、日本では問題視されてしまうことが多くあります
その原因は、日本は文化レベルで周囲の「空気を読む」ことを求める風潮があり、人々はたがいに「完璧を求めすぎている」ことにあるように思います。周囲と何か少し違うと思われると集団から弾きだされる傾向があるのです。
日本人は本来、曖昧さに対して寛容な文化を持っていたはずです。少しだけ時計の針を昔に戻して、互いに適度に未完成な曖昧さを共有する道はないものでしょうか……。
参考文献
【SankeiBiz なぜ日本は「発達障害大国」なのか 国別統計で常にトップレベルの理由】
https://www.sankeibiz.jp/
【一般社団法人コンフィデンス日本橋中央区日本橋の障害者就労移行・定着支援事業所 はたして発達障害は増えているのか?】
https://nihonbashi.confidence-s.com/
【ウィキペディア 精神障害の診断と統計マニュアル】
https://ja.wikipedia.org/wiki/
発達障害