自分らしく働くために~発達障害グレーゾーンの私の職歴 後編
仕事 発達障害出典:Photo by Aditya Saxena on Unsplash
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2回にわたりお送りしております、ASDとADHDの傾向がある「発達障害グレーゾーン」の私の、職歴と適した職種について。今回は診断後の体験を振り返ります。
派遣アルバイト
発達障害の診断を受け退職した私は、単発で働ける派遣会社へ登録しました。
自分の好きな日時と好きな現場を選んでエントリーするという働き方で、体調に合わせてシフトを入れていました。
ピッキングや流れ作業などの軽作業の現場が多く、黙々とやる作業が得意な私はさまざまな現場を経験したのです。
はじめに働いたのは、スーパーなどに並ぶ野菜を袋に詰める加工場でした。数をかぞえて袋に入れるだけの野菜はよかったのですが、難しかったのが白菜をフィルムで包む作業です。
ずり落ちないようにしっかりと包むのにはコツがいり、私を含めた経験の浅い派遣社員は、現場のパートさんから迷惑がられ「足手まといになるなら派遣の人なんか来なくてもいいのに」と聞こえるようにいわれてしまいました。
現場を変えて2つ目に働いたのは、百円均一商品のピッキングをする工場でした。注文書どおりの商品を倉庫から探して箱につめていく作業です。
商品のサイズが大小さまざまで、パズルのように綺麗に箱につめるのが、難しくもあり楽しくもありました。
診断を受けて仕事を再開したころの私は、ADHDの特性がより強く出ていて、動作の遅れが目立ちました。丁寧につめることばかりに気を取られ、周りの社員と同じ量の箱を完成させることができなかったのです。
初日の作業中に社員さんに呼び出され「あなただけ1時間に完成させた箱の数が極端に少ない」「今から1時間でみんなと同じ〇件完成させて」と怒られてしまいました。いわれないと自分が遅いということにも気づけなかったのです。
私はひどく落ち込みましたが、基準をもらえたことで時間を意識して作業することができ、慣れてくるとミスの少なさを評価してもらえるようにもなりました。
次に働いたのは、お菓子を箱につめる流れ作業の工場です。ここでも人より極端に動作が遅れ、自分の前を箱が流れている間に商品をつめきることができませんでした。
ここで初めて、主治医と相談してADHDの薬を飲むことになりました。薬を飲むとスイッチが入り頭が冴えて、周りの社員と同じように作業をこなせるようになったのです。
精神の調子によっても障害特性の強弱が変わる私は、安心して作業できるようになったことで気持ちも安定し、いつからか薬を飲まなくても問題なく働けるようになりました。
しかし作業に慣れ始めると、今度は業務上の些細なことが気になるようになってしまいます。検品作業中、商品のわずかな不良も見逃すことができないのです。
「このくらいなら問題ないよ」と社員さんにいわれても「この会社はこんなにひどい状態のものをお客様にお届けするのか」と不信感を募らせてしまいました。
こうした小さなモヤモヤが蓄積することで、だんだん現場に行くのが億劫になり、やがて精神の調子を崩し、登録していた派遣会社そのものを辞めてしまいました。
そのあともすこし、別の派遣会社に登録して働きましたが、同じように不満を抱えてしまうことが多く、どれも長続きしませんでした。
伝統工芸品の販売店
さまざまな職場を転々としたあと、とある観光地の伝統工芸品のお店で働くことになりました。
手作り体験教室の講師の仕事があったのですが、知識の浅い私は自分の説明に自信を持つことができず「不安がお客様に伝わっている」と叱られてしまいました。
また、商品を包装する作業もあり、こちらも経験のなかった私は練習の段階で怯えてしまい、結局一度も商品を包装することができませんでした。
さらに、商品を2つセットで販売するための検品作業では、手作り品特有のわずかな色や大きさの違いが気になって手が止まってしまいました。
このように苦手な業務が重なり、自分にはこの仕事は合っていないと感じたため、不安な気持ちを手紙に書いて上司に辞職の相談をしました。
しかし上司には「気にしすぎ」「そんなことを気にするには日が浅い」といわれ、私の弱さを理解してもらえませんでした。
気にしなくていいといわれても気にしてしまうのが私の特性のため、励ますつもりでいってくれた言葉なのかもしれませんが、責められたように感じてしまいました。
それからまもなく、やはり不安に耐えられずこの仕事も辞めてしまいました。これが私の職歴です。
まとめ
以上、2回にわたり私の職歴を振り返ってきました。ここからわかってくる困りごとは「速さを求められるのが苦手」「得意分野しか頑張れない」「人よりも細かいことが気になる」といったところでしょうか。
しかし、逆にいえば「丁寧に作業をこなす」「よく気が付く」という長所ともとらえることができるのではないでしょうか。"短所と長所は紙一重"といわれます。どんな特性も活かせる場所がきっとあります。
また"好きこそものの上手なれ"という言葉もあります。向上心やモチベーションを高く持てる職種を選ぶことが、長く続けることにもつながってくると思います。
とはいえ結局は"人"と"環境"が重要な場合も多いです。でも、合わないのなら無理して続けることはないと私は思います。
私は職を転々とし、つらい思いもたくさんしてきましたが、経験するということは「知らなかった世界を知ること」にもなり、どこかで経験や知識が活かせると「ここまでやってきてよかったな」と思えるので、おもしろさも感じています。
同じような生きづらさを抱え、このコラムを読んでくださったみなさんが、自分らしく羽ばたける環境に出会えることを願っています。
注意欠陥多動性障害(ADHD) 自閉症スペクトラム障害(ASD)