定年過ぎて判明?シニアの発達障害
発達障害発達障害の診断は子どもにだけ出るものではなく、いわゆる「大人の発達障害」として社会人になってから判明することもあります。そう、発達障害は一生モノなのです。ゆえに定年でリタイアした後になって初めて診断されるというケースも十分あり得ます。
発達障害は一生モノですが、その言葉すらなかった時代には「変わった健常者」で済まされていました。そうした世代が定年退職してから、シニアになって初めて発達障害の診断を受けることがあるというのです。学校どころか社会人を終えてから判明する「シニアの発達障害」は、シニアならではの特異点もあります。
認知症と思ったら
ある70過ぎの男性は、昔から頑固親父のようなものと家族に思われていました。仕事から帰るといつも自室にこもり、決まった時間に決まった行動をとれないと露骨にイライラしだす、少し場をピリピリさせてくる父親像でした。空気の読めないところもあり、娘の結婚式ですら自分の好きな小説の話ばかりして親戚や婿家族を困らせたほどです。
男性の妻は面倒見がよくタフで、子どもが独立してからもオシドリ夫婦として暮らし続けていました。しかし、男性が定年退職すると妻も段々と弱りはじめ、男性にも怒りっぽさや忘れっぽさが増します。
「認知症が始まったかもしれない。早めに対策を打とう」と、男性は妻と子に付き添われ医師の診察を受けることとなりました。ところが、医師は認知症の診断で使う記憶テストだけでなく、過去の人となりなども聞いてきたのです。
一通り男性の過去を聞いた医師は「認知症というよりも、自閉スペクトラムの傾向が強い」と診断しました。過去の発育を聞いてきたのは、発達障害を疑ったためだったのです。発達障害は一生モノなので、高齢者相手でも過去の発育歴を問うのは診断において有効でした。
興味や関心が限定的で、こだわりが強くコミュニケーションに難がある反面、嘘をつかずルールを重んじ記憶力もいいと説明されました。自閉スペクトラムと分かって、家族の見方も余裕あるものに変わったそうです。
シニアの診断は難しい
高齢者の発達障害を診断するのはかなり難しいそうです。まず年齢的に認知症の方が疑われやすいですし、初期の認知症と似通った特徴もあって記憶テストだけでは判別がつきません。発達障害の概念すらなかった時代を生きてきたため、発達障害を疑う発想すら持ちづらいでしょう。
診断基準として有効とされているのが、小さいころからの発育歴です。発達障害は先天的なものであるため、幼少期から特徴が出続けています。しかし、発達障害と認知症はそれぞれ、小児神経科と老年精神科という別々の所が詳しいため、両方の知識を併せ持つ医師が少なく診断は難しいままです。
それでもシニアの発達障害が囁かれだしたのは、定年退職などの環境変化によって疑わしくなったという「大人の発達障害」と似た経緯があります。ただ社会から離れて隠居している分、本人だけでは気づきづらく家族や周囲が困って診断に来るケースの方が多いそうです。
認知症ケアは発達障害の高齢者に合わない
シニアの発達障害を診る医師は、「無理に受診させるのは良くないが、診断がつくことのメリットも大きい」といいます。生きづらさの原因も分かるし、今後の接し方のヒントにもなるし、確かにメリットも沢山あるでしょう。その意味では、発達障害の診断を受けるにあたって遅すぎることはありません。
もし認知症と誤診されたまま話を進めると、本人にとっての負担は非常に大きくなります。認知症ケアの中には童話や絵本を用いたものがありますが、発達障害を持つ人には苦い幼少時代を持つ人も少なくないため、悪感情を掘り起こしやすくなるのです。発達障害へ気づかず高齢者施設へ入れてしまった日には、様々なトラブルも懸念されます。
診断の無理強いは良くないですが、診断あってこそ「自分の取説」ができてくるものなので、受けられるなら受けた方がいいでしょう。診断を受けずに「健常者」として残りの人生を生き続けるのもひとつの選択肢ではありますが。
参考サイト
シニアの発達障害 会社をやめ、状態が不安定になるケースも
https://news.yahoo.co.jp
発達障害