障害者のコロナ禍、2年前と今に不便の変化はあるか
暮らし最初の緊急事態宣言で外出が極端に減っていた2年前、初期のコロナ禍における不便について株式会社ミライロによるアンケート調査が実施されていました。
そして現在、2年間の蓄積から障害による不便の具体例が続々と出ています。2年前の時点で予想がついていたのか、それとも「こうした不便があったのか」という新たな気づきをもたらしたのか、どちらにせよ不便を歓迎することはできません。
2年前のアンケート
2年前に株式会社ミライロが実施したWebアンケートでは、既に以下のような問題が挙げられていました。
車椅子の車輪を触るため衛生面で不利(肢体障害)
マスクで口の動きが読めない(聴覚障害)
手の衛生に敏感になって介助を受けにくい(視覚障害)
手が不自由なのでマスクが外れても付け直せない(肢体障害)
問い合わせ先が電話だけでは困る。メールやFAXでも受け付けてほしい(聴覚障害)
情報の正誤が掴めずパニックになる(発達障害)
ウイルスの概念を理解されず、マスクの着用を拒む(知的障害)
消毒液が車椅子ユーザーには届かない位置に置いてある(肢体障害)
一部は改善の余地があるにせよ、2年前の段階で既に多くの不便が噴出しています。在宅勤務は障害者と合いそうな形態に思えますが、ヘルパーの対象外であったりアクセシビリティを高めるソフトが使えなかったりと、決して平坦な勤務形態とも限りません。
マスクの付け外しで補聴器紛失
時間が経っていくと、前は見えなかった問題点が分かってくるようになります。今年3月、広島のとある補聴器販売店が「補聴器の落とし物を見つけたら、近くの補聴器販売店に届けましょう」とツイートし、それが4万リツイートと大きく広がりました。
実生活で道に落ちた補聴器を届けるシチュエーションにそうそう遭遇することはないでしょう。しかし、そのツイートは現実に大バズりを見せました。補聴器を落としやすくなったという聴覚障害者の共感を呼んだのでしょうか。補聴器そのものも非常に高額なので、話題としてもデリケートになりやすいです。
補聴器を落としやすい、または落としそうな不安が広まっている背景に、マスクの付け外しが関わっているのではないかという考察もありました。マスクの紐に引っかかった補聴器が耳からはがれ落ちてしまうのではないかという見解です。
補聴器を落とす原因がマスクの紐だけとは限りませんが、一因と数えられるならばそれもまた聴覚障害者を取り巻くコロナ禍の新たな形と言えそうです。
症状を伝えられない
このご時世、発熱などの症状がある場合は医師へつまびらかに報告し、コロナ感染かどうかの診断を受けねばなりません。正確な診断と治療を受けるには、自身の症状を上手にまとめて伝える必要があります。しかし、知的障害者など自身の症状を伝えられない人はどうなるのでしょうか。
静岡市内で、重度知的障害の男性が新型コロナ感染により亡くなり、遺族が静岡市立静岡病院に対し「十分な診察をされなかった」と糾弾する出来事がありました。男性は症状について伝えることが出来ず、一旦自宅療養で帰された後に容態が急変したそうです。
患者側に非はないとはいえ、自身の症状を説明できないことが大きなハンデであることは否めません。特にコロナの疑いであれば、病床数の都合もあって尚更自宅療養を勧められやすいでしょう。
まとめ
障害者のコロナ対策における不便は2年前から多種多様に挙がってきていました。月日が経過すると、当時は見えなかった不便や不利益が判明してきています。加えて、感染した際にも不利な点が露呈しました。
コロナがいつ牙を剥くか分からない中、出来ることは日々の感染対策を続けていくことくらいです。その対策自体が健常者に比べて不便であることが2年前の時点で分かっていたのですが。