保育から学ぶ大人の発達障害の対処法(前編)~5領域「健康」「人間関係」を参考に
暮らし 発達障害出典:Photo by Tanaphong Toochinda on Unsplash
私は大学を卒業後、ADHDと診断を受けました。職場にもADHDであることを開示し、配慮を受けながら3年間保育士として働きました。 本コラムでは、今までの大学や職場で学んだ5領域の観点から、ADHDの作者が生活で取り入れている日々の生活の対処法を紹介します。
5領域とは
まず「5領域」とはどういうものなのかを説明します。
厚生労働省が作成する保育所保育指針というものがあります。保育所では養護と教育という視点があり、5領域は教育の部分にあたります。子どもが乳幼児期のうちに育ってほしい基礎、いわゆる根っこの部分を「健康」「人間関係」「言葉」「環境」「表現」として5つに分けています。保育士は、日々上記の5つを意識した保育案を作成し、ねらい(願い)をもって毎日の活動をしています。
「健康」を維持する習慣化
1つ目は「健康」です。子どもは本当に元気いっぱい。食事、睡眠、排泄などの生活習慣の基礎をまずは心地よくできることが、1日を楽しく過ごすコツと考えます。この生活習慣が整っていないと子どもは泣いたり、機嫌が悪くなったりします。
健康でいるためには運動も必要です。スポーツ万能になろう!ということではなく、自分の体を動かすことが楽しいと感じる習慣作りです。
規則正しい生活と運動を習慣化するためには、どんな方法があるでしょうか。例えば「記録をすること」です。私は手帳が好きなのでよく手書きで記録を残します。ただ、どんなに好きなことでも、ADHDの特性上なかなか習慣化しにくい傾向があります。
そのため「今日食べたものを手帳に書く」「10時になったら散歩へいく」などどんな細かいことでも、忘れないように付箋やメモに書きます。そして書いたものを見えるところ、例えば電気のスイッチの近くに貼る方法をつかっています。
記録に便利なものといえば、スマートフォンの健康管理アプリです。睡眠ログ、歩数計は自動で記録してくれるので、食事、体重、運動の記録なども記入するようにします。アプリは記録すること自体をアラームで知らせてくれたり、今までの記録をグラフで表示したりするものもあるので、目で見て経過・結果が分かることで達成感をえられます。
「人間関係」は自分に優しくすること
2つ目は「人間関係」です。保育においては、まず保育者が子どもにとっての安全基地になり、信頼関係を深めることからはじまります。その子自身のすべてを受け止め、「この人は安全だな」と思ってもらえて初めて他の子に興味を持ち始めます。
人間関係ときくと、文字通り「人と関わること」と考えますが「自分自身を好きになって大切に思うこと」が最も重要です。私が保育のなかで、子どもたちにくり返し伝えていたことは「そのままのあなたのことが大好き!」でした。自分自身を大切にできることで、友達や家族も大切で尊重するべき存在と感じていけるようになります。
保育では堂々といっている私ではありますが、ときどき自分のことを否定してしまうことがあります。ADHDの不注意でミスが多く、職場ではよく指導を受けました。気持ちが沈んでくると、自分の気持ちに蓋をしていたものがときどきあふれ出て、突然ぽろぽろと泣き出してしまうこともあります。心に余裕がないことで、家族に八つ当たりするようになってしまうこともあります。そういうときは瞑想をして自分を受け入れるよう心掛けています。
例えば、落ち込んで「自分は必要とされていないんじゃないか?」と考えているとします。マイナス思考が広がる前に、目を閉じたり深呼吸をしたりして一度落ち着きます。そのまま「私は今、自分は必要とされていないと感じているな」と他人目線で受けとめます。受けとめきれたら子どもに対して伝えるように「頑張ってるね」「私は君が好きだよ」と頭の中で唱えるようにします。ポイントとしてはできるだけリラックスした状態ですることと、恥ずかしがらず小さな子どもに伝えるよう優しく伝えることです。
なんだかスピリチュアルな感じがしますね(笑)けれど意外とこれが心を落ち着けてくれます。私はこの方法を意識するようになったことで、辛かった気持ちを早めに切り替えられるようになりました。
自分を大切にできるようになると、心に余裕ができるようになります。まずは余裕がなくなっていることを自覚し、自分に優しく接してあげてください。余裕ができたら他の人にも優しさをわけてあげましょう。ただ、頑張る自分に優しくすることと、甘やかすことは違います。「できないことを放置し開きなおる」「他人まかせ」にしてはいけません。自分でできることはする。できないことも、できる部分がないか探して努力することは必要です。
まとめ
前編では5領域についての解説と「健康」「人間関係」からみる発達障害の対処法について考えてきました。後編では残りの3領域「言葉」「環境」「表現」の視点で紹介します。
あくまで作者が考える対処法の1つであって、この方法が全て正しいわけではありません。本コラムが日々の生活のなかでお役に立てれば幸いです。
▶次の記事:保育から考える大人の発達障害の対処法(後編)~5領域「環境」「言葉」「表現」を参考に
参考文献
【厚生労働省 保育所保育指針解説】
https://www.mhlw.go.jp/index.html
【保育士バンク! 保育の5領域を徹底解説!ねらいと内容、遊びの具体例】
https://https://www.hoikushibank.com
発達障害 注意欠陥多動性障害(ADHD)