アントニオ猪木が闘っている「全身性アミロイドーシス」とは何なのか
その他の障害・病気新日本プロレスの立ち上げなどでプロレス界をリードし、政治の世界にも飛び込み挑戦し続けていた元プロレスラーのアントニオ猪木さん。彼がいま難病と闘っていることはご存知かと思います。
猪木さんが闘っている難病とは、「全身性トランスサイレチンアミロイドーシス」です。闘病の為にやせ細り、身長も10センチほど縮んだそうですが、具体的にはどのような病なのでしょうか。
全身性アミロイドーシスとは
その長い名を持つ難病は、「全身性アミロイドーシス」という括りに含まれています。全身性アミロイドーシスは「指定難病28」として認められている難病で、アミロイドと呼ばれる異常なたんぱく質が全身の様々な臓器に沈着して機能障害を引き起こします。
アミロイドーシスには単一臓器にのみ沈着する局所性も含めて現在まで31種類が報告されており、沈着部位によって症状も様々です。このうち「免疫グロブリン性アミロイドーシス」「家族性アミロイドーシス」「老人性トランスサイレチン型アミロイドーシス」が難病として指定されています。これらに限定すると、患者は100万人当たり6.1人といわれています。
猪木さんが罹っているのはトランスサイレチン型で、心臓から発覚したそうです。その為、最初の報道では「心アミロイドーシス」と呼ばれていました。
余談ですが、局所性アミロイドーシスには脳にアミロイド沈着を起こすアルツハイマー型認知症があり、認知症の原因では過半数を占めていると言われています。
沈着部位によって症状が変わるため診断の確定が難しく、難病の例に漏れず治療は症状の進行を遅らせるのが精一杯です。全身性アミロイドーシスの治療は、多種多様な症状に対応する対症療法が中心となります。
原因は不明、症状は様々
結論から言えば、全身性アミロイドーシスの原因は不明です。遺伝性と非遺伝性があるのですが、異常たんぱく質のアミロイドが生成されるメカニズムは解明されておらず、予防できるものではありません。遺伝性はともかく、非遺伝性は誰でも発症しうるものです。
症状は多種多様と何度も述べていますが、その理由はアミロイドの沈着した部位によって症状が変わるためです。心臓に沈着すれば心不全や不整脈、腎臓に沈着すれば腎不全、末梢神経なら手足のしびれ、舌なら巨舌症といった具合です。更に、沈着した部位と臓器機能障害の部位が一致するとは限らない医者泣かせの特徴も持っています。
診断自体は生体組織検査、略して生検という、胃や皮下脂肪などの一部を採取する検査で判別します。それ以外にも様々な検査をしないと病型が分からないため、診断の確定には数か月はかかるそうです。そして、病型ごとに治療法も変わってきます。
治療法
これまで対症療法で症状を和らげるのが中心でしたが、新たな治療法も開発されつつあります。ただ、臓器移植など規模の大きい治療もあって、簡単に手は出せなさそうです。
遺伝性であれば、アミロイドの沈着を抑える薬で進行を遅らせることもありますが、肝移植も選択肢として入ります。そのうえ肝移植をしてもなお完治するわけではありません。
形質細胞の異常に起因する型の場合は、抗がん剤による化学療法や自家造血幹細胞移植が挙げられます。こちらは進行が速いため、治療の実施は急がねばなりません。
これらはあくまで一例であり、病型や病状によって治療方法は変わってきます。同じ全身性アミロイドーシスの患者でも受けている治療には個人差があるわけですね。一概に語れないことが多すぎるのもこの病気の難しい所といえるでしょう。
まとめ
全身性アミロイドーシスとは、異常たんぱく質のアミロイドが沈着することによって起こる病気であり、沈着部位によって症状は様々です。そうなると治療方法も全く変わってきますし、病型によっては難病指定を受けているものもあります。
対症療法が中心でしたが、医療の進歩によって新しい治療法が導入されつつあります。難病とはいえ罹りっぱなしで下降線を辿っていくだけの病気ではありません。猪木さんも2022年4月に、リハビリが順調に進みサインペンで字が書けるまでに回復したと報告しています。
猪木さんの闘病生活は、難病だからと人生を諦めてはいけないという教訓を我々に示しているかのようです。自身の近況もYouTubeで配信しており、そのチャンネルは「最後の闘魂」と名付けられております。
参考サイト
全身性アミロイドーシス(指定難病28)
https://www.nanbyou.or.jp
アントニオ猪木氏リハビリ順調「字が書けるようになりました」引退試合から24年、元気な報告
https://www.nikkansports.com
アントニオ猪木さんが難病「心アミロイドーシス」を告白。症状は?どのような病気?
https://www.excite.co.jp