第1回「VISI-ONEアクセラレータープログラム」デモデイ 受賞企業が決定
その他の障害・病気視覚障害者の「壁」を溶かす新たなアイデアへの支援を目的とした「VISI-ONE(ビジワン)アクセラレータープログラム」という企画があり、これに採択された企業6社によるプレゼンとその審査が行われるデモデイが去る10月14日に実施されました。
VISI-ONEプロジェクトについて
「VISI-ONEプロジェクト」は2020年に締結されたパートナーシップ及びその活動のことで、視覚障害の有無にかかわらず誰もが当たり前に混ざり合う共生社会の実現を目指し、「“見える”と“見えない”の壁を溶かし、社会を誰もが活躍できる舞台にする」というビジョンを掲げています。
パートナーシップを結んでいるのは以下の3団体です。
参天製薬株式会社
特定非営利活動法人日本ブラインドサッカー協会
一般財団法人インターナショナル・ブラインドフットボール・ファウンデーション
活動は2021年4月から始めており、プロジェクトでは「共体験でそれぞれの個性や強みを理解する」「“見える”に関するイノベーションを創出する」「視覚障害者のQOL(Quality of Life)を向上する」という3つのゴールを設定しています。
「VISI-ONEアクセラレータープログラム」もその一環で、視覚障害に関わる「壁」を溶かす新規事業への支援を目的に企画されました。先日のデモデイでは、採択された企業6社によるプレゼンと審査が行われ、オンラインやオフライン合わせて163名が参加しています。
審査には2つの賞が設けられています。アイデアの真新しさ、短期間での成長性、社会実装への実現性を問う「Business Innovation Award(ビジネス部門)」。視覚障害に関する課題への理解度、共生社会への中長期的な実現性を問う「Social Innovation Award(ソーシャル部門)」。これらの賞にそれぞれ300万円の賞金が設けられました。
靴に歩行ナビゲーションさせるデバイス
独自性や成熟力を問うビジネス部門で選ばれたのは、株式会社Ashiraseによる歩行ナビゲーションシステムです。視覚障害者向けの歩行ナビとして、「靴」と「振動」に着目した非常に個性的なアイデアが光りました。
このシステムは靴に挿入するデバイスとなっており、振動によって歩行者をナビゲートします。ナビに振動を選んだのは、残存視力や聴力を阻害しないことと、視覚障害者の歩行能力を活かすためです。
「今回の受賞は『社会実装』の可能性を高く評価していただいた結果と捉えています。社会福祉をテーマとした事業は、事業化が困難というイメージがありますが、その認識を打破するきっかけとなれば嬉しいです」
MR技術の活用
課題理解度や中長期的な視点を問うソーシャル部門で選ばれたのは、株式会社GATARIによるMixed Reality(MR:複合現実)の活用です。
MRをどう活用したのかというと、位置情報を自動で取得して音声を流し、現在場所に応じた音声ナビなど音声と現実が融合したようなシステムなのだそうです。バリアフリー用の公的デバイスは場所も費用もかかりますが、この方法なら実際にスピーカーなどを設置するわけではないので、実際の場所を取らず各個人に合ったナビゲートが出来ると期待されます。
「このプログラムを通じて視覚障害者の方々と接し、社会課題解決に向けて新たな取り組みに挑むことが出来ました。今回の挑戦がより社会をインクルーシブな形に進歩させることに繋がればと思います」
その他プレゼン企業
クラスリー株式会社
まるで人が自然に話しているような高品質の合成音声を作成するAI「Alterly(オルタリー)」を発表しました。実際の声優の声をもとにAIでナレーションなどを作れるそうです。ナレーションやナビゲートを収録する手間や費用を省く狙いがあります。
株式会社コンピュータサイエンス研究所
iPhone用のアプリ「EyeNavi(アイナビ)」を活用したAIによる歩行支援です。カメラが右左折の場所や障害物を認識し、音声で案内します。「初めて通る道も一人で安心して歩ける」をコンセプトとしています。
MAMORIO株式会社
BluetoothやGPS機能にある「忘れ物防止タグ」を活かし、自動販売機の場所を探知し購入までナビゲートする機能を発表しました。現在、その機能を盛り込んだアプリを開発中とのことです。
リンクス株式会社
点字ブロックにQRコードを設置し、目的地まで誘導する音声アプリです。首都圏の基幹駅という乗り換えの多い場所をスムーズに行き来できるのがウリです。