障害を持つ子の親が「わが子が健常児になる夢」はどのように生まれるのか

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Photo by Somnox Sleep on Unsplash

障害を持つ子の親は、長い療育の中で一度は「わが子が健常児になった夢」を見るそうです。現実では会話も歩行もままならないわが子が、夢の中では普通に話して歩いて笑っているというのです。これを聞くと、「それみたことか、本心では健常児を欲しているじゃないか!やはり障害者は産まれること自体が間違いであり罪だ!」といきり立つ御仁が出現しそうですが、とりあえずそういう夢を一度は見たという親御さんは多いみたいです。

何故その夢を見るのかという単純な構造面の話を今回はしたいと思います。正式な夢分析を受けたいのであれば専門の機関なり病院なりに問い合わせた方が堅実でしょうが、遊び半分で受けられるような代物ではないというのが個人的な見解です。(雑誌の夢占いは論外です。あてにしてはいけません)

夢とは何か

夢の話をする前に、意識領域の構造についてお話します。意識領域には「意識」「前意識」「無意識」の3領域があり、自分の思考が及ぶ意識と及ばない無意識を前意識が橋渡ししている構造になっています。なお、無意識の領域は膨大で、意識の領域はさながら氷山の一角に過ぎないとされています。

さて、夢の素となるものは無意識の領域から上がってくるのですが、実際に見る夢「顕在夢」としてそのまま出る訳ではありません。無意識領域から上がってくる願望や感情などはしばしば強烈で、顕在夢として出すと精神的な健康を損なってしまいます。そこで、前意識の領域で内容に検閲を加え、マイルドな表現にして顕在夢として意識領域へ送る訳です。

夢は色々混ざる

実際に見る「顕在夢」と、その編集前である「潜在夢」。両者の間には前意識の領域で行われる検閲のプロセスがあります。具体的にどのような検閲をしているのかというと、違うものにする「置き換え」、複数の事柄を一体化する「圧縮」、願望を様々なシンボルとして出す「象徴化」などです。夢分析においては象徴化が最重要とされていますが、本稿で重視するのは「圧縮」です。

前意識の検閲における「圧縮」とは、複数の事柄をひとまとめにしてしまうことです。言い換えると、記憶の中にある様々な人や物が、時系列を無視して合体してしまう訳です。その為、本来あり得ない時代にあり得ない人が現れます。

例えば、小学校を出てから一度も会っていないクラスメイトが高校の校舎に出てくる夢だとか、幼少期を過ごした家の中で子や孫と過ごしている夢といった具合です。

混ざり方も様々で、別々の人間が一人の中に凝縮している(顔は父親だが服は兄、等々)ことも珍しくありません。顕在夢がしばしば、情報量が多く意味不明なものになりやすいのは、記憶の中にある膨大な情報をかき集めて凝縮しているからでもあるのです。

ここまできて仮説

さて、ここまで言っても仮説程度までにしかならないのですが、なぜ障害を持つ子の親は「わが子が健常児になる夢」を見るのかを考えてみましょう。とはいえ、既に回答の方向性は定まっています。顕在夢の中で健常児として出てきたのは、他の人の特徴も入っているからそうなっているのです。

見た目こそ実子になっていますが、別の人の特徴も所々入っているため、夢の中では健常者のように喋ったり歩いたりできるのです。声や言葉遣いは、親や配偶者や友人のものかもしれません。それが何であれ、顕在夢を作る過程での圧縮作業が生み出したお子さんが登場している訳です。

ただ、その顕在夢をもとに潜在夢、ひいては無意識領域にまで迫っていく「夢分析」は割と厳しい道のりで、軽い気持ちで出来るものではありません。無意識への深入りに時間と金銭を費やすくらいなら、今ある療育の時を懸命にやっていくのがお子さんの為だと思います。

参考サイト

精神分析における夢の仕事(顕在夢から潜在夢へ)
https://esdiscovery.jp

遥けき博愛の郷

遥けき博愛の郷

大学4年の時に就活うつとなり、紆余曲折を経て自閉症スペクトラムと診断される。書く話題のきっかけは大体Twitterというぐらいのツイ廃。最近の悩みはデレステのLv26譜面から詰まっていること。

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