バリバリの販売員だったわたしが精神病になった話「1話:出会い」
暮らし 仕事出典:Photo taken by Marek Piwnicki on Unsplash
それまで大きな病気にかかることがなく健康だったわたしが、ある日突然、精神の病気になった経緯。病気と寄りそって生きていく中でつらかったこと、楽しかったこと、学んだことを実体験をもとに紹介します。
精神障害は突然やってくる
精神障害は音もなく擦り寄ってきます。自分がその存在に気付いた時にはそれに飲み込まれています。いつでも、誰であっても、きっかけさえあれば精神障害になるということをわたしは身をもって感じました。
わたしは今から10年以上前の19~20歳の1年間、とある企業で働いていました。接客・販売の店舗スタッフとして前線で働きました。当時は若くて体力もあり、たくさん働けることが嬉しくて、がむしゃらに働いたのです。その後に起こる最悪なことを想像することもできないほどがむしゃらに。
昼も夜もなく、ひたすらに働きました。当時の最低賃金だった、時給840円で月420時間。午前10時から働いて、長い時は翌朝の6時まで働きました。残業手当も深夜手当もない。休みは月に2日あればいい方でした。
時給840円とはいえ、同世代よりも多く働き、お金を手にしました。何よりも実績を評価されて、上司に認められることが嬉しかったです。はたから見れば最悪の環境だったかもしれませんが、今でも「当時は楽しく無我夢中だった」と思うことができます。
心があふれ出すということ
そんな慌ただしい毎日を送っていたあるとき、出勤するためにいつも通りに起床しました。でもからだが動きません。風邪や筋肉痛のつらさ、それらとは違うとすぐにわかりました。
早く出勤しないといけない。そう考えると頭の中がグラグラっと揺れるような感じがしました。体調不良で休ませてもらおうと、断りの電話を入れることを考えました。
そう考えても「わたしが休めば他のスタッフが困る」「お客様が待ってくれているかも」などのことが脳裏によぎり、ますます頭が重くなりました。段々と仕事そのものが怖く感じてきたのです。そうこうしている間に出勤時間になりましたが、結局電話はできませんでした。
初めての無断欠勤でした。職場からは何度も電話がかかってきていました。わたしはそれを無視して、しまいには着信拒否しました。
これがわたしの器が「あふれた」瞬間だったんだと思います。
悲しい事が起きたとき、怒りに震えたとき、喜びが頂点に達したとき。人間は自分の器を上回るものが内からあふれ出したときに、涙したり叫んだり、走り出したりするでしょう。そのあふれ出したものが、わたしの場合は「ストレス」のようなものだったんだと思います。
これがあふれたことによって、わたしは身動きが取れなくなってしまいました。家族や恋人に会うこともつらくなりました。
実際にからだに起こった変化
そんな不安定な状態でも、空腹や喉の渇きは起こりました。詳しくは覚えていませんが、コンビニかスーパーに買い物にいこうとしました。わたしはそこで見たこともない風景を目にしたのです。
外は昼間だというのに空は紫で、いつもは緑だった木は赤。
ほどなくして過呼吸を起こし、また自分の部屋に戻ってとじこもりました。
呼吸も落ち着いたころ、わたしは自分のからだに起こった変化をなんとなく理解しました。ただその瞬間にはまだ病院にもいっていないし、そういった知識もないので感覚だけでしたが「これは心か脳がおかしくなったんだ」と感じました。
その日のうちだったか、数日たってからかは覚えていませんが、母の勧めもあって精神科を受診することになりました。そこで告げられた病名は「パニック障害」「統合失調症」といったものでした。
病気と出会った瞬間です。
次回「2話.浸食」
統合失調症