バリバリの販売員だったわたしが精神病になった話「2話:浸食」
統合失調症出典:Photo by Rosie Sun on Unsplash
前回はわたしが病気と「出会った」ときのことを紹介しました。今回はその後、どのように病気が悪化し、また精神的に追い詰められていったかを書いていきます。
自分には縁がない病気だと思っていた
「パニック障害」「統合失調症」なんとなくですが、耳にしたことはありました。有名な芸能人やスポーツ選手でもパニック障害で苦しんだという話を聞いたことはあります。しかし、まさか自分がそういった病名を告げられるとは思いもよりませんでした。
とはいうものの、病名を知ったからといって、すぐに何かが変わるわけではありませんでした。ただ、体調は明らかに悪化していき、電車に乗ればほぼ間違いなく過呼吸になっていました。幻覚のようなものも頻繁に起こり、外に出れば晴れている空は紫に、木が赤く見えたりしました。あるときでは車道を走る車がスローモーションに見えたこともあったのです。
わたしは医学の専門的な知識があるわけではないので、そのときの率直な印象ですが「自分は脳のどこかの病気なんだろうな」と考えました。精神病というのは心の病気であると同時に脳の病気なんだなと感じました。
通院生活のはじまり
それからはひたすら通院をかさね、療養する日々になりました。当時の主治医は少し独特な先生で、わたしがインターネットで調べた薬や、先生が試したい薬を何でもどんどん試してくれる方でした。少しリスクの高い、処方に気をつけなければいけない薬も経験しました。
体調は悪く、仕事にはいけませんでした。まともに食事をすることができず、晩ごはんをお菓子のチョコクッキーのようなもので済ますことも。不眠症でも悩み、毎日睡眠薬を飲む生活でした。ひたすらベッドで色んなことを想像したり、布団にくるまってふさぎ込んだり、壁の模様を数えたりしていました。
そんな日々が続いた中で、心には少し変化が訪れます。
消えたいという気持ち
生活のリズムのせいか、病気のせいか、頭の中では「消えてしまいたい」「死にたい」という言葉がずっとぐるぐると回転していました。誰にも会いたくなくて、インターネットの掲示板にのめり込みました。そこで、自分と同じような精神病の方が集まるコミュニティを閲覧すると、どうやらそこの「仲間たち」が日常的にOD(オーバードーズ)をしていることを知りました。オーバードーズとは薬物過剰摂取のことであり、死と隣り合わせの危険な行為です。絶対にしてはいけないことだと、生きている今だからこそ言えます。
そんなODの世界に、わたしは足を踏み入れてしまいました。これがわたしの、その後の地獄の始まりでした。
依存するのは簡単
最初は少しだけ、処方されていた薬を用量を守らずに多めに飲みました。ふわっと身体が軽くなるような気がして、頭はぼんやりしていました。なんとなく苦しい気持ちがやわらいだ気がしていました。しかし、それは苦しみを一時的になくしているだけでした。優しい顔をした悪魔が近づいてきていることに、わたしは気づいていなかったのです。
薬が効いたまま眠りにつき、起きるととんでもなく身体が重くて、吐き気もしました。
ああ、これが薬物過剰摂取の反動なんだ、もうこんなにつらいのは嫌だな。これっきりにしよう。
そのときはそう思いました。
そう思っていたのはそのときだけだと気づいたのは、しばらく経ってからのことでした。
パニック障害・不安障害 統合失調症