生物学の素人に今も蔓延するラマルキズム
暮らしPhoto by MARIOLA GROBELSKA on Unsplash
ダーウィンは生前、進化論の礎を築いた男としてラマルクの名を挙げ称えました。19世紀前後に活躍したラマルクは、権力者に睨まれながらも進化論を提唱し続けた強い男でした。しかし、ラマルクの築いた進化論は、他ならぬダーウィンの洗練によってその面影を失い、過去の遺物となっています。
ラマルク時代の進化論はラマルキズムといい、「進化には目的があり、その目的に近付いたかどうかが生物としての優劣だ」という主旨があります。一方、ダーウィンの進化論であるダーウィニズムは「進化に目的や優劣など無く、偶然の産物でしかない」という立場で、今日の生物学は当然こちらを主流としています。
しかし、生物学の外では旧世代の遺物であるはずのラマルキズムが現役であるばかりか、逆にダーウィニズムへ寄生し、ダーウィンのネームバリューを都合よく利用しています。「ダーウィン賞」には「愚かな行為で愚かな遺伝子を自ら断絶した」という意味合いがあるのですが、まさにダーウィンの名を借りたラマルキズムの典型例です。
最たる例が、進化論を人間社会へと持ち込んだ魔物「社会ダーウィニズム」です。こちらもダーウィンの名を冠してはおりますが、思想としてはラマルキズムに則しており、「社会にとって望ましくない人間は迫害してもいい。自然淘汰だから」という思想にまで飛躍しています。社会ダーウィニズムをダーウィン自身がどう解釈するかというと、奴隷制に反対していたなどの思想背景から、これにも反対するのではないかと言われています。
現在の進化論の主流はダーウィンですが、ダーウィンの意味で進化論を持ち出すのは生物学の専門家だけで、多くの素人はラマルキズムを持ち出しています。そしてダーウィンに寄生するあまり、ラマルク自体は知らないままです。
矮小な個人的感情をさも科学的根拠があるかのように装うため、今この時もラマルクはダーウィンの皮を着せられた上で利用され続けています。尊敬し称えたラマルクだけではなく、優生学を生み出した従兄弟ゴルトンや社会ダーウィニズムの祖であるスペンサーなど、ダーウィンの周辺には結構ろくでなしが多いですね。後世で都合よく利用されたせいで本人の評価も落ちたのが正確な所ですが。