触れて感じるアート体験:東京都美術館で「だれもが文化でつながるサマーセッション2023」が開催!

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7月29日から8月6日の間、東京都美術館で「誰もが文化でつながるサマーセッション2023」が開催されています。東京都歴史文化財団アーツカウンシル東京は、東京パラリンピック2020のレガシーとして本イベントを主催しています。

今回、主催するアーツカウンシル東京の森司(もり つかさ)さんと、展示しているアーティストのひとりである檜皮一彦(ひわ かずひこ)さんにインタビューを行いました。森さんには企画を立ち上げたきっかけや思いを、檜皮さんには車椅子ワークショップに望むことなどを伺いました。


アーツカウンシル東京 事業調整課長の森司さん

パラリンピックの永続するレガシー(遺産)

──この企画を始めたきっかけは何ですか
「パラリンピックのレガシー事業がきっかけですね。誰もが文化で繋がることをテーマにしており、去年は国際会議を、今年は国内ネットワークを目的としています。テーマである『アクセシビリティと共創』は、2025年に開催される東京デフリンピックから影響を受けているほか、2030年までに共創社会の実現を目指す東京都の政策もベースとなっています」
「デフリンピックはオリンピックやパラリンピックと同様に4年に1度開催され、世界から3000人もの選手が訪れます。聴覚障害者はパラリンピックの対象に参加しておらず、デフリンピックは開催運営まで聴覚障害者によって行われています。聴覚障害者コミュニティにとって最大級のイベント。開催に向けて文化施設のアクセシビリティを向上していくことが求められています」

──「アクセシビリティと共創」にはどのような意味を込めましたか
「『共に創る』とあるように、インクルーシブに事を進めていく。互いに出会って互いの良さを知っていく交流をベースにしています。言葉で言うほど簡単ではありませんが、文化から始めていこうというコンセプトです」

西成のおばちゃん×美術家、名画の2.5次元化など異才による芸術の創造

──ユニークな取り組みが多いですが、どこからアイデアを出していますか
「『平均年齢82歳のおばちゃんたち×美術家』は、服をテーマに活動するアーティスト西尾美也が、西成区のご婦人らと取り組むプロジェクトで、今は『人生最後の3着』をテーマに取り組んでいます。アーティストのしたいこととごおばちゃんたちのしたいことが近づいたり離れたりして、共に刺激を受けて学び合う関係性が形成されています。その意味でユニークな取り組みとなっているだけでなく、NISHINARI YOSHIOというブランドとしても売り出しています。」
「『手でみるアート体験』は文字通り手で触るアート鑑賞で、今回はミロのヴィーナスや最後の晩餐といった名画を2.5次元の立体で再現しており、触覚で絵の概念を理解できるようになっています。平面の絵画も2.5次元化すれば触覚で分かるようになるという展示です。視力を失った時期によっても感じ方は変わってきますね」

──参加者にどのような体験や理解をしてもらいたいですか
「レクチャーを聞いたり、実際に作業を体験することで、視覚障害者の方々が感じること、思うことを体感することができる。共感や共生などのコンセプトを体感してもらいたいですね」

このイベントは、文化がすべての人々をつなぐ力を持っているという考えに基づいており、障害の有無に関わらず、多岐にわたる交流を促進する取り組みが展開されています。参加者たちは、アートを通じて互いに理解し、共感を深める貴重な経験をすることができるのではないでしょうか。

車椅子自体を作品に昇華

──車椅子を芸術作品へと昇華させるというアイデアはどのように生まれましたか
「アイデンティティ(良し悪しは置いておき自分自身では分かち難いものにこそ、それが発生すると考えている)の一部となっている車いすを用いることは、作家として最初の一歩を踏み出すうえで必要な事でした。」

──車椅子ユーザーとして、普段どのような疑問や課題を感じていますか
「最近の考え方として障害の社会モデルと医療モデルがありますが、片方だけを優先するものではないと感じています。社会が変わっていくことも勿論必要な事であるとは認識しつつ、自分が変化することで適応できるならばそうして、上手く両立していくのが私の基本的なスタイルです。社会モデルだけに依拠せず、昨日の自分を更新し続けようと意識はしています。他者や社会が変化するのは時間がかかるものであり、限りのある命をどう生きるのかと考えたとき、その両立こそが”ウェルビーイング”に繋がるのではないでしょうか」

可視化への挑戦

──「車椅子というメディウム」のコンセプト、具体的な内容についてお聞かせください
「車椅子を素材として作品展開したりワークショップやプロジェクトのコアコンセプトとして用いたりしています。」

──ダミー人形と車椅子のプロジェクト(walkingpractice)を通じて、参加者にどのようなことを提供したいと思っていますか
「車いすにお乗り頂いている方を仲間内では”彼”とよんでいるのですが、”彼”をある地点からある地点まで運ぶ共に移動するという単純な枠組みのもとで様々に展開をさせています。例えば高層ビルで行うときは”避難訓練”という設定であったり、観光地などに赴くときは”同じ景色を見よう”などです。」

──作品やワークショップを通して、社会全体へどのようなメッセージを発信したいですか
「何かを可視化させてみようという意図はあります。移動手段という目的性を”転倒”させた車いすたちを様々な場面や場所に出現させることで立ち現れる風景や在り様、またはその変化を私自身楽しみにしつつ活動を続けています。」


アーティストの檜皮一彦さん(左)と森司さん(右)

障害者ドットコムニュース編集部

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