いいストレスもある~悪いストレスだけじゃない
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私たちは、人間関係などがなかなか上手くいかなくて、気分が落ち込んだり悩んだりする「悪いストレス」を完全に排除して、気軽に「ストレスフリー」を望んでしまうところがあります。
ただ、その「ストレスフリー」だけがいいのでしょうか。心や身体にとってプラスになる「いいストレス」もあるのではないでしょうか。そもそも「ストレスフリー」って何でしょうか?
「ストレス」は悪いものだけではないことを考察してみることにしました。
ストレスって?
私たちが普段パッと頭に思い浮かべるストレスとは、どんなものでしょうか。
人間関係や家庭環境などが上手くいかず、気分が落ち込んだり、イライラしたり、不安感が増したりする心理的ストレスや、頭痛、めまい、不眠、動悸など引き起こす身体的ストレス、ミスしたり、食事量や飲酒量が増えてしまうなどの行動的ストレスという、生活するにあたって好ましくない、悪いイメージだと思います。
しかし、ストレスは悪いものばかりなのでしょうか。また、ストレスは全く無いのがいいのでしょうか。
この世界には、良いものもあれば、悪いものも存在します。ストレスにも当てはまると思いますので、そこを探ってみます。
ストレスフリーは本当にいい?
先ほど述べた、普段感じるストレスは、本当に嫌なものです。「全くストレスを感じない生活がしたい!」と思ってしまいます。
しかしながら、ストレスが全く無い「ストレスフリー」の生活が本当に心や身体にとって良いものなのでしょうか。
アメリカで、興味深い実験があります。
被験者に、ある一定の温度が保たれた、音も匂いも全くしない薄暗い部屋に一定時間過ごしてもらいます。刺激などが全く無い「ストレスフリー」の環境です。
全くストレスを感じなくなった被験者が部屋から出ると、暑くても汗が出ないという、体の調整機能が麻痺してしまいました。通常の反応ができなくなったのです。
さらに、暗示にもかかりやすくなったとのことです。
被験者が部屋から出てきた際に「あなたは転ぶ!」と叫ぶと、本当に転んでしまったそうです。
このように、刺激が全く無い、ストレスを感じることのない状況に置かれた場合、自らを防御する機能が失われ、生きていくうえで危険から身を守ることが難しくなってしまうという実験結果となりました。
単純に「ストレスフリー」は、心や身体に良いものをもたらすだけではないようです。ストレスというものは、必ずしも排除しないといけないものだけではなく、人間にとって多少なくてはならないものなのです。
私が思うに、世間一般に言う「ストレスフリー」という言葉を、正しく理解できていなかったのではないかと感じます。ストレスの原因となるものが全くない状態の中で生活するのではなく、そのストレスを「負のストレス」と感じなくなる、プラスに変える「ストレスマネジメント」が上手くいった結果のことを指すのだと思います。
良いストレスはある~悪いストレスだけじゃない
では、良いストレスにはどのようなものがあるのでしょうか。
ハムスターの実験で、面白いものがあります。
かごの中で飼われたハムスターが、クルクルと回転する輪の中に入って走っている姿を見たことがあると思います。そのハムスターは、1日に8km以上走っても疲れることはなく、身体にも異状は見られないとのことです。
ただ、それは自分のペースで走っているときのことです。
では、こちらが勝手に輪を回転させて、その中で無理やり走らせると、どうなるのでしょうか。ハムスターは、たった2kmでダウンしてしまうそうです。
この実験で「いいストレス」というのは、自発的に走った場合です。8kmも走るのですから、ストレスは当然溜まっているはずですが、身体には異常は全く見られません。
一方で「悪いストレス」というのは、無理やり走らされた場合です。「走らなくてはいけない!」と頑張ったけれども、2kmでダウンです。
「いいストレス」を感じながら走ると、4倍も力が出るのです。
これを人間に置き換えると、マラソン選手がそうだと思います。42.195km走らされているのではなく、自らの意思で走っているから完走できるのです。マラソン選手は「いいストレス」を感じながら走っているはずです。
このように、自らを高めていく過程において、いい刺激となっていくことが「いいストレス」だと考えられます。
それでは、私たちの生活に例えてみます。
仕事上において、自分で目標に向かって進んでいる際に、思い通りにいかなくなったとしても「どうやったら上手くいくだろうか」「こうしてみよう」などと、自分を伸ばすための励みとして受け止めれば「いいストレス」となります。
反対に、仕事上の目標を「やらなければならない仕方のないノルマ」と捉えてしまったら、それは「悪いストレス」で、自身にとって重荷となってしまいます。
「ストレス」は良い方にも悪い方にも転びます。要は気持ちの持ちようなのです。「ストレスマネジメント」を上手に実践するということです。
気持ちをプラスに働かせる「いいストレス」を感じながら、どんどん前向きになって頑張れる自分を想像してみるのはいかがでしょうか。
参考文献
【チェンジ!あなたの生活習慣|日本航空健康保険組合】
https://jalkenpo.jp
【ストレスフリーな生活とは?臨床心理士が指南するストレスマネジメント法|Women’s Hearth】
https://www.womenshealthmag.com/jp
【良いストレスと悪いストレス|日経ビジネス】
https://business.nikkei.com