2025年までに開始、「就労選択支援」とは一体何なのか

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Photo by Alexander Schimmeck on Unsplash

障害者就労の支援には、作業所に通う就労継続支援(A型・B型)、一般企業で働くスキルを身に付ける就労移行支援、就職後のケアをする就労定着支援などが存在します。その新たな仲間として「就労選択支援」が将来加わります。

制度としては2022年10月の法改正で誕生し、2025年までをめどに開始される予定となっています。その前段階として、就労選択支援が入るタイミングを色々と設定している訳ですね。あらゆる就労支援の前段階として位置付けられるため、就労までの道筋が大きく変わりそうです。

適切な支援へ繋げるのが仕事

就労選択支援は、平たく言えば利用者と各種就労支援の間に立ってアセスメント(調査・査定)する機関です。就労支援を希望する障害者にアセスメントを行い、やる気や能力に応じて就労支援を受けるか直接就職活動をするか、次の一手を判断します。

従来は、利用したい就労支援に直接コンタクトをとる形でした。計画相談支援の手助けはあるものの、最終的に施設を選び判断するのは利用する障害者自身です。多くの施設や事業所を見てきた支援員に比べると、判断における不利は否めません。そこで、就労選択支援が間に入って代わりに判断する訳です。

アセスメントの内容は、主に原則1か月間の事務や生産活動となります。その中で本人のスキルや適性、強みと弱点、必要な配慮などを把握し、次は何に繋げるかを関係機関も交えながら協議します。B型事業所から徐々に積み上げていくか、ハローワークと繋いで就職活動を始めるか、行先は様々ですが、一連の流れは利用する本人と共にやっていくので、置き去りで勝手に決まっていくようなことはないそうです。

このような仲介とアセスメントを立てるのは、障害者と支援機関・事業所のミスマッチを防ぐ意図があってのことと思われます。スピード感は損なわれますが、合わない事業所に入ったせいで少なくない年月を無駄に苦しく浪費するよりは良いのではないでしょうか。

働ける障害者を福祉に留めない

アセスメントで能力が認められ、本人の働く意欲も高ければ、事業所への通所を飛ばしていきなりハローワークへ繋がることもあり得ます。人によっては就労までのスピードが格段に上がるかもしれません。

こうした制度が作られる目的の一つに、一般就労する意欲や能力を持った障害者が福祉に留まったまま社会に出られない状況を打破する狙いがあります。確かに一般就労するに足る人材がB型事業所で単純作業をし続けているのは本人にとっても社会にとっても不幸でしかありません。

厚生労働省の考えでは、2025年10月からはB型事業所を利用する前に就労選択支援を挟むこととなっています。更に1年半後の27年4月からはA型事業所も同様の流れとなり、就労選択支援の存在感は増していくこととなります。ただ、それ以前から利用している場合に限っては、支給更新の際に就労選択支援を受けるかどうかが任意となっているようです。

就労選択支援の実施主体は新しく作られる訳ではなく、既存の就労移行支援や就労継続支援の事業所などが担うこととなっています。「過去3年間に3人以上を雇用に結びつけた実績」が条件となるようですが、地方はまだしも都会で年1人のペースは些か緩い気がしますし、“雇用”がA型事業所も含むかどうかでも実効性は変わるでしょう。なんにせよ、安穏と年月を浪費するようなB型事業所は今後弾かれていく筈です。

ただ忘れてはならないのは、一般企業側に障害者を雇う意思が無ければ如何なる支援も意味を成さないことです。未だに身体障害者しか欲しがらない企業、雇用率という数字目的で閑職に追いやり飼い殺しにする企業、本業と関わりのない貸農園に飛ばして済ます企業、いずれも障害者の社会参加を阻む存在です。これらの意識を基底から変えていかないことには、就労支援は完成しません。

あらゆる業界で人材不足が叫ばれる状況も、就労支援制度の改革を後押ししたのでしょう。ここに至ってなお“共生”を拒み逃避し続けるアナクロニスト(時代錯誤者)たちは、“矯正”していかなければなりません。いかに就労支援を整えようと、最終的に受け皿となるのは一般企業なのですから。

参考サイト

就労選択支援、A型利用者も原則利用 障害報酬改定で検討
https://news.yahoo.co.jp

【2024年新設】就労選択支援とは?実施主体やサービス内容を解説
https://job-medley.com

遥けき博愛の郷

遥けき博愛の郷

大学4年の時に就活うつとなり、紆余曲折を経て自閉症スペクトラムと診断される。書く話題のきっかけは大体Twitterというぐらいのツイ廃。最近の悩みはデレステのLv26譜面から詰まっていること。

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