大人の発達障害の困り事分析
発達障害出典:Photo by Elizaveta Dushechkina on Unsplash
私はADHD(注意欠如多動症)とASD(自閉スペクトラム症)と診断されています。
診断を受けてから就労移行支援事業所に通い始め、現在は就職活動中です。
約6か月間の長い自己分析を経て過去の仕事を振り返ると、当時は分からなかった困りごとの要因が見えてきました。
わたしの経歴
私は今まで3つの職種、4つの職場を経験しました。
1 営業職(5年未満)
2 医療職(5年未満)
3 事務職(6か月未満)
しかし、どこにいっても困り事が多く、退職してしまったのです。
ADHDは営業職に向いている!?
ネットで「ADHD 向いている仕事」と検索すると、高確率で「営業」がヒットします。
理由を見てみると、このようなことが書かれています。
・フットワークが軽く行動力がある
・好奇心が強い
確かに私も「すごい行動力だね」といわれることがあります。
ですが私は営業職にしんどさを感じ、辞めてしまいました。
行動力や好奇心ではカバーできない困り事があったからです。
退職した理由
新卒でメーカーに入社し営業部に配属となりましたが、数年で退職してしまいます。
当時の退職理由はこんなかんじでした。
・営業成績(売上)に興味を持てなかった
・営業をおもしろいと思えなかった
・得意先とのやりとりがうまくいかず苦痛だった
今見返すと、とてもざっくりとした抽象的な理由だと感じます。
私はなんで困っていたのだろう?
では次に、具体的な困り事を振り返っていきたいと思います。
困り事はたくさんあり過ぎて、ここでは書ききれないほどです。
そこで、最も苦手だった「商談」をピックアップしてみます。
商談は、売上を獲得する大きなチャンスです。
相手のニーズを把握し、自社製品をいかに多く売り出してもらえるか交渉する、営業の醍醐味ともいえる仕事だそうです。
しかし私は商談が苦痛でたまりませんでした。
なぜ苦痛だったのでしょう?
それは、得意先に何を尋ねたらよいか、また自分が何を提案すればよいか分からなかったからです。
商談にいっても、挨拶をして、新商品の案内を渡して、あとはなんとなく相槌をうっているだけでした。
では、なぜそのような状態になったのでしょうか?
理由はたくさんありますが、そのひとつは「得意先の話を理解できていなかったから」と考えていました。
ところが最近、こんなことを思いました。
「もし得意先の話を理解できても、何を話せばいいか分からない状態は変わらないのではないか?」
聞いて理解すること以外にも要因がありそうです。
そして、あることに気づきます。
「いろいろな情報を思い出して、関連させながら考えることにとても時間がかかるから」ではないか?
商談の場で使う情報は、得意先がその場でしゃべった内容だけではありません。
過去に得意先が言っていたこと、他のメーカーから聞いた話、自社の方針、市場動向などなど……。
私にとっては膨大な量です。
相手の話を聴いて必要な情報を思い出すことは、普通の営業マンなら一瞬でできることかもしれません。
しかし私には難しいことだったのです。
さらに、これで説明できる困り事がいくつもあることに気づきました。
例えば、営業の次に転職した医療職での出来事です。
突然、誰かに患者さんの状態を尋ねられたとき、その場で上手く答えられず、困っていました。
まさに「患者さんのいろいろな情報を思い出して関連させながら話す」ことができていなかったのです。
営業にやりがいを感じられなくなるまで
再び営業の話題に戻ります。
こんな状態だったので、大事な商談には先輩や上司が同席してくれました。
そして商談に向かう車内で、先輩や上司とこんな話になります。
「うちの会社としてはAの方向にもっていきたいんだ。だからBという流れになったら、案(1)を提案しよう。Cの流れになったら案(2)で。あと、今期はライバルメーカーがDを提案してくると思うから、それを考えるとEのメリットを伝えてから案(1)にもっていこうか。あと……」
最初は理解できていた内容も、じわじわと前後関係が分からなくなっていきます。
ここで分かったのは、人の話が全て理解できないわけではなく、途中までは分かっている、つまり理解するスピードが遅いということです。
そして話の内容をあまり理解できていないまま商談を迎えることに。
不安でたまらず、平静な表情をつくるだけで精一杯……。
当然、こんな状態で上手く商談できるはずがありません。
営業担当であるはずの私はいつも同席しているだけ。先輩や上司に話を進めてもらうしかなかったのです。
そして何を話して、どういう結果になったのか、よく理解が追いつかないまま商談は終了。
そんなことが数年続き「売上っていっても、私じゃなくて先輩と上司が商談した結果だからなぁ」と自己効力感が下がってしまったのでしょう。
当時の退職理由と照らし合わせてみた
では、退職理由に戻ってみます。
・営業成績(売上)に興味をもてなかった
→手厚いサポートがゆえに、自分で作った売上だと思えなくなっていた
→そもそもサポートが必要だったのは、商談が苦手だったから
→商談が苦手だったのは得意先とのやりとりが苦手だったから
・営業をおもしろいと思えなかった
→自己効力感が低下していたから
・得意先とのやりとりがうまくいかず苦痛
→いろいろな情報を思い出して、関連させながら考えることにとても時間がかかるから
ここで分かったのは、営業成績に興味を持てなかったのも、営業をおもしろいと思えなかったのも「情報を思い出して関連させながら考えることに時間がかかる」という困り事に起因している、ということです。
私の苦手な場面は?
振り返った内容を整理すると、私の苦手な場面はこのように説明できそうです。
・一度に考慮しなければならない情報量が多い
・瞬発的に理解し、判断することを求められる
自己分析を始めた当初は「相手の話を理解することが苦手」としか伝えられなかった困り事を、2つ苦手な場面として説明できるようになりました。
まだまだ深掘りする余地がありそうですが、自分にとっては大きな進歩です。
今回は「商談」だけでしたが、それ以外の場面も詳しく見ていくと、また新しい発見がありそうです。
おわりに
情報整理が苦手な私は、自己分析にもとても時間がかかります。
しかし、ぼんやりとした自分の困り事が紐解かれていく感覚は、なんだかクセになります。
もしかすると、"ワーキングメモリ―"や"短期記憶"といった専門用語を使えば、すぐに説明できてしまう内容かもしれません。
しかし、詳しく分析することで、自分の困り事を人に伝えやすくなりますし、問題が起きそうなタイミングを予測しやすくなります。
そして「なぜだろう?」という言葉は、困り事が多い私に解決策を与えてくれる、頼りになる相棒だと信じています。
参考文献
【ADHDのある方に向いている仕事〜実践的な仕事の選び方〜|就労移行支援事業所ディーキャリア】
https://dd-career.com
【なぜなぜ分析とは?用語の意味からやり方、注意点まで徹底解説!|ITトレンド】
https://it-trend.jp
発達障害 自閉症スペクトラム障害(ASD) 注意欠陥多動性障害(ADHD)