妄想の世界とは?統合失調症の被害妄想との付き合い方

統合失調症

画像:UnsplashRoad Trip with Raが撮影した写真

筆者は36年前、16歳のときに統合失調症を発症しました。長い闘病生活のなかでは、入院や引きこもりなども経験しましたが、現在は就労継続支援B型事業所を利用しながら、物書きの端くれとして活動しています。このコラムでは、統合失調症の9割が悩むといわれる「被害妄想」について語ります。被害妄想の正体や、妄想にとらわれなくなった気づきについて記していきます。

統合失調症の被害妄想とは

統合失調症の主な症状は、被害妄想だといわれています。被害妄想とは「人に悪口を言われている」「嫌われている」「嫌がらせやイジメを受けている」など、被害を受けていると信じ込んでいる状態。実際は何もされてないにもかかわらず、ネガティブなことを思い込む妄想のことです。統合失調症の方のほとんどが、被害妄想で悩んでいるといっても過言ではないと思います。

統合失調症の代表的症状である幻聴も、被害妄想によって起こります。たとえば「あの人、ちょっとおかしい」「どこか変だよ」「あいつむかつく!」などと聞こえてくることがあります。「ヤクザに命を狙われている」と信じ込んだり「国家レベルの陰謀で、自分は警察に見張られている」「自分は常に監視されている」と思い込んだりします。

また、笑っている人を見ると「あの人は自分のことを笑っている」と思い込む傾向があります。実際は、お笑い番組を見て笑っているだけだったり、誰かと談笑しているだけだったりしても、その笑い声は自分に対してだと思い込みます。筆者自身も、ずっと笑い声のすべては、自分のことを嘲笑っているのだと信じていました。

自分の思考が「妄想」だと認識するには

「あの人バカだよね」「あの人クサイ」「どこか変よね」被害妄想はどこでも起こり、幻聴となって聞こえてきます。しかし、駅や電車内、バスの中、知らない街に行ったときに聞こえてくる声は、妄想からくる幻聴だと認識できます。理屈としてあり得ない、おかしなことだからです。「そんな非現実的なことがあるわけない」と、冷静に考えるとわかります。

自分は、皆から注目されたり監視されたりするような人間だという思考は妄想です。ただ、自分は有名人だという妄想は、少し楽しくなります。「自分ってすごいのだ!」と捉えることもできるからです。知らない街へ行っても自分を監視している人がいるなんて、それってすごい世界です。スターになった気分になります。被害妄想では「知らない人たちに笑われている」と思い込みがちですが、捉え方を変えると「自分は注目されているので、笑われるどころか、実際に会えて感激する人たちもいるのでは?」とポジティブで夢のある妄想に変えることもできます。しかし、いくらポジティブでも、妄想は妄想です。自分は有名人であることも、注目されていることも事実ではないと区別して考えています。

被害妄想とうまく付き合うには

統合失調症の妄想とうまく付き合うには、心の安定している人を見習うことだと思っています。友人や家族に筆者が被害妄想について訴えると「それは考えすぎ」「誰もそんな風に考えていないよ」と言います。「ほとんどの人は自分のことしか考えてないものだよ。それに、そんなに暇な人っていないしね。他人が自分のことをどう思っているかなんて気にしていたら、生きていけないよ」と言われたこともありました。

最初はその意味がわかりませんでしたが、最近は理解できるようになってきました。ほとんどの人は、自分のことなどなんとも思っていないのだとわかったのです。このことに気づいたきっかけは、自分の思考を振り返ってみたことでした。「自分が他人のことをどう思っているか」に置き換えて考えてみると、周りの人たちのことをそこまであれこれ考えていないのに気づいたのです。

「無視された」と気になるのは、たまたまその人が考えごとをしていたから。挨拶に気づかなかったとか、何かに熱中していたなど、さまざまな理由や事情によって返事ができなかっただけのことだったりします。被害妄想は結局「考えすぎ」なのだと思います。最近の筆者は、人と会っても以前よりあれこれ気にしなくなりました。被害妄想が起きたときは、楽しくなることポジティブなことを考えるように、意識的に頭の切り替えをしてきました。「早く家に帰って音楽が聴きたいな」なんて考えたりします。考えを切り替える努力の成果はあったと思います。

まとめ

被害妄想は取り越し苦労が多いため、気にしないほうがよい。それを頭ではわかっていても、気になるのですよね。筆者の場合は、まず他人は自分のことをそこまで気にしていないし見ていない、考えていないと気づいた経験が重要でした。それからは、被害妄想や幻聴などが起きても、ポジティブに変換したり、別のことを考えて頭を切り替えます。「人は人のことを、そこまで考えてなどいない」これが、被害妄想を軽減させるのに役立つ考え方と気づきでした。


モンゴロイドさんの電子書籍


オンラインサロン「障害者ドットコム コミュニティ」に参加しませんか?
月々990円(障害のある方は550円)の支援で、障害者ドットコムをサポートしませんか。
詳細はこちら
https://community.camp-fire.jp/projects/view/544022

モンゴロイド

モンゴロイド

1971年生まれの52歳。北関東在住。高校を2校中退し、30年前に閉鎖病棟へ2ヶ月間入院。現在は病気の症状も落ち着き、物書きの端くれとして電子書籍の執筆を6年間継続中。

統合失調症

関連記事

人気記事

施設検索履歴を開く

最近見た施設

閲覧履歴がありません。

TOP

しばらくお待ちください