なぜ就労継続支援A型には面接が必要なのか

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就労継続支援A型の事業所に通って支援を受けるには、どうしても避けては通れない関門があります。「面接」です。B型や移行では入る前に面接で適性を審査されるようなことはほとんどなく、A型だけに存在する手続きとなります。

面接があるということは、事業所と合わなければ「お祈り」されるという意味でもあります。私のような「お祈り」そのものにトラウマ意識を抱える就活うつ経験者にとって、配慮も何もあったものではないシステムです。どうせ面接して落とすならアルバイトと大差ないのではないか、人によっては受けられない福祉サービスに存在意義があるのか、疑問は絶えませんがA型事業所としても面接で選考する行為の正当性は存在します。

それでも面接をする理由

就活うつ経験者のトラウマを掘り起こし、履歴書とスーツを用意させてまで面接にこだわる理由は何でしょうか。A型事業所の側にも、面接をしなければならない言い分が幾らか存在します。

雇用契約を結ぶから
知っての通り、A型事業所には雇用契約を結ぶという特徴があり、ここが最大の理由と思われます。ただ雇用契約を結ぶだけなら雇用契約書を交わせばいいだけで、履歴書と面接の法的な必要性は不明です。しかし、履歴書を書いて面接を受けるやり取りはほぼ例外なく存在します。いわゆるヘッドハンティングのような人材引き抜きであろうと、系列内での異動や左遷であろうと、儀礼的な就活しぐさからは逃れられません。ましてや非正規雇用が面接を免れる理由にはならないでしょう。

営利企業でもあるから
A型事業所は福祉施設であると同時に、利益を出さないと存続を許されない営利企業でもあります。その上、利用者への賃金は事業で出した利益からでしか払うことは出来ません。週最低20時間なので大体1人あたり月8万程度となるでしょうが、そこらのB型と変わらない作業内容では到底達成できない数字です。
そのため、志願者を誰でも受け入れるという訳にはいきません。少なくとも週5日ちゃんと通所できる人でなければ、もう少しB型で通所を安定させてから来てほしいのが本音でしょう。一般(の非正規雇用)とB型の中間という位置づけなのであまり贅沢は言えないと思いますけれども。

想定する障害種があるから
B型や移行にも言えることなのですが、就労支援の事業所には対象とする障害種別を設定している場合がほとんどです。例えば、作業内容が複雑なので知的障害者には厳しいとか、バリアフリーが不十分で身体障害の内容によっては通えないとか、特に理由もなく精神障害者に限定しているとか、そういう具合です。この辺りは事業所それぞれのスタンスによるので一概には言えませんが、対象として想定していない障害種の人を遠ざける「愛の鞭」も面接の持つ役割ではないでしょうか。

なぜ落とされるのか

面接による選考の例に漏れず、落とされても理由を説明されることはありません。寧ろB型の方が「うちは段差が多いので車椅子の方には厳しいですよ」「手先を使う作業が多いので、手指の障害には配慮出来ませんよ」とハッキリ説明できる事業所が多いです。変な所まで実際の就活を真似しなくていいと思うのですが、大抵は以下の理由で落とされるそうです。

対象の障害種でない
先ほどの話と被りますが、障害の種類が事業所のスタンスと合わなければ落ちます。無理な通所で心身の安全が損なわれるくらいなら、面接の段階で最初から弾いてしまおうという、一種の「愛の鞭」です。そこまで考えておらず単に「その障害種は雇っていない」というだけかも知れませんが。

求人の取り下げが遅れていた
A型事業所はハローワークにも求人を出しており、それを頼って応募する人が多いです。しかし、定員が埋まるなどの理由で求人を取り下げねばならないこともあります。どうやら求人の取り下げを申請してから反映されるまでタイムラグがあるらしく、その間に応募が来る場合があるようですね。さすがにそうなっては落とすほかないのですが、そういう「説明すれば分かってもらえること」すら黙っているのは社会人としてどうなのでしょうか。就活のシステムは社会人のマナーより重く貴いというのでしょうか。

一般論として面接で落とされる
他に考えられる理由としては、一般論として面接で落とされるような行為や言動全般です。私が実際にやってしまったのですが、「B型からA型にステップアップしたい!」と志望動機で語ってしまったことが一例としてあります。通っている(通っていた)事業所への悪口にも解釈されるので、良い印象は持たれない訳ですね。B型の通所が安定したからA型へ行くぞという時、焦って言いがちなので気をつけましょう。

「バイトでよくね?」に言い返せるか

A型事業所には、面接をするだけの言い分があります。しかし、こう言われると耳が痛くなりませんか?「それって、アルバイトで良くないですか?」「自分だったらA型事業所じゃなくてバイトを探します」

A型事業所にとってライバルとなるのは、B型でも移行でもなく、パートやアルバイトです。「それってバイトでよくね?」という疑問は常について回る事でしょう。だからこそ、これに毅然と言い返せるかどうかに事業所としての存在意義がかかっているのだと思います。

「うちは気分の浮き沈みが激しい人でも働けるよう、柔軟にシフトが組めます!」「うちは1日5時間ですが、週4日でも働けます!」「我々は飽くまで一般就労への過程です。御社の戦力になる人材が我々から輩出されるかもしれません!」思いつく回答はこのくらいでしょうか。

或いは、卑怯ながら相手がどうなのか責めてみるのもどうでしょう。「御社のパート求人を拝見しましたが、1日7時間半だそうですね。弊社は1日4時間、無理なく働けますよ!」「うちの利用者から正社員に採用された人がいます。御社は障害者の正社員が何人いらっしゃいますか?」「弊社は気分が悪くなったら横になって休めるスペースも用意していますが、御社にはそういったものはございますでしょうか?」

障害者雇用の成績の悪さを指摘し合うのは不毛ですが、A型事業所と一般的なアルバイトの違いはハッキリさせた方がいいと思います。A型事業所の経営者1人が、特例子会社の経営者や支援学校の校長などを相手に、アルバイトとの違いを熱弁する「マネーの虎」的な企画があれば是非見てみたいです。「バリバラ」などでやって貰えませんかね。


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遥けき博愛の郷

遥けき博愛の郷

大学4年の時に就活うつとなり、紆余曲折を経て自閉症スペクトラムと診断される。書く話題のきっかけは大体Twitterというぐらいのツイ廃。最近の悩みはデレステのLv26譜面から詰まっていること。

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