アサーションとは~「中庸」というあり方
暮らし私は、過去に、家族との不和が続き、反抗的な態度をとり続けた結果、相手と理解し合えなかっただけでなく、自分が病気にまでなってしまいました。かと思えば、逆に職場では、波風を立てないことを意識し、人に自分の気持ちを伝えることができず、ヤキモキしていました。
皆さんも、自分の意思を正しく伝えることができない、そういったことはありますか?
世の中には様々な方がいらっしゃるもので、私の知り合いには、何の屈託もない様子で、相手に率直に意見を言うことができる方がいらっしゃいます。私は、その天真爛漫さから、その方を密かに尊敬して参りました。今回は、人を傷つけないのに、自分の意見を的確に伝えることができる…そんな「ちょうどいい」方法である「アサーション」について紹介します。
自己主張の3タイプ
そもそも自己主張の仕方には、3つあるのだそうです。
●攻撃的なタイプ:「私はOK、あなたはOKではない」
…相手の犠牲で成り立つ自己表現のこと。主導権を握り、攻撃的になったり、自分勝手になったりすることだけでなく、自分の要求を押しつけようとしたり、相手を操作しようとしたりすることも含まれます。相手の気持ちや意見を受け入れないので、不満や怒りの気持ちが相手の中に残ります。
●非主張的なタイプ:「私はOKではない、あなたはOK」
…無理な頼み事などをはっきりと断れないタイプ。また、他人に無視されやすい消極的な態度や、自分の意見を小さい声で言うことも含まれます。相手には「私の気持ちや考えは取るに足りないので、無視しても構いません」と伝わっている可能性があり、これでは自分に不正直で、相手にも率直ではありません。
●アサーティブなタイプ:「私もOK、あなたもOK」”自他尊重の自己表現”
…自分に正直・率直なタイプ。「人は誰でも、自分の意見や要求を表明する権利がある」との立場に基づく、適切な自己主張のことです。
具体例
例えば、上司が些細なミスで怒ってばかりいる、という場面があるとしますと、次のような3種類の反応の仕方が考えられます。
●攻撃的な反応…「あなたが怒ってばかりいるから、皆が間違えるんです!いい加減にして下さい!」
●非主張的な反応…「…。」(とにかく黙ってうつむく)
●アサーティブな反応…「確かに私が間違っていました。申し訳ございませんでした。今後、気をつけます。…ただ、もう少し、静かに話して頂けますと幸いです。」
自分の意見を一方的に押し付けるのではなく、極端に消極的になるでもなく、いわば「中庸」の状態で、相手の意見を受け入れるところは受け入れ、譲歩した上で、自分の意見も伝えるのが「アサーション」です。お互いの意見を率直に出し合うことで、双方にとって納得のいく結論を導き出すことが大切なのだそうです。
さいごに
一概に言うことはできませんが、アサーティブな話し方で、どちらかが我慢しなければならない不健康な状態を回避することができることがあるかもしれません。ただし、する、しないはご自身の責任です。実践するのには抵抗がある、という方は、周囲に相談して、アサーティブな伝え方を一緒に考えてもらう、という方法もあります。状況によってはあえて「アサーティブにならない」という選択肢も勿論あります。ここぞ、という時に、使ってみて下さい。
参考文献
『よくわかるアサーション 自分の気持ちの伝え方 ~自分も相手も大切にする、気持ちのよい自己表現』統合的心理療法研究所所長臨床心理士 家族心理士:平木典子