ピアサポーターが欲しい~お互いに支え合う仲間を求めて

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出典:https://beta.freelyphotos.com

「人は哺乳類だから」いきなりの言葉に驚いた。「同じような感覚を持った話相手が欲しくてしょうがない」、そう言ってばかりの自分は、まるで無い物ねだりをする子供のように思えて、そんな自分が嫌いだと嘆いていたときに、かけられた言葉だ。「人は哺乳類だから、人のぬくもりを必要とする。だから、誰かを求めるのは当然のことなんだ」と。

ピアってなんだろう?

「ピア(peer)」とは、元々は、ボートに並んで座り、オールで一緒に進む人を指す言葉で、「仲間」と訳されることが多い。「ピアサポート」は、同じ症状や悩み課題をもつ人々が、自分の体験を語り合いながら、回復を目指す取り組みのこと。有名なものとしては、アルコール依存や薬物依存、同じ病気を持つ患者やその家族の集まりなどがある。その取り組みに参加している人達のことを「ピアサポーター」と呼ぶ。

私は、発病することで、今までの自分の人生からドロップアウトした。ひきこもり後から、精神科に付随したデイケアへと通い始めたが、そこには、私と同じく社会人経験のある人も、似たような環境で育った人も、ほぼいない。経験値の浅い、まだ純粋で汚れなき気持ちで生きている人は、妖精のようだと思った。妖精が集まるデイケアは、まるで妖精の国だと思った。

今までいた人間界、新たに通うことになった妖精の国。私はそのどちらも、自分の居場所ではないと感じてしまった。精神疾患を持ち、私と同じように孤独感を抱える人はいないのだろうか。こういう話に共感してくれる人はどこかにいないだろうか。誰かと分かりあいたい、支え合いたい、それがピアサポーターを欲しくなったきっかけだ。

ピアサポートのメリット

同じような経験をしているからこそ、共感が得られやすく、本音で話すことが出来る。今、抱えている悩みを共有し、寄り添い支え合いながら、問題解決までの道のりを考えることが出来る。生きづらさに苦しんでいるのは、自分だけじゃないと感じることが出来る。一番のメリットは、精神面を支えてもらうことが出来ることだ。また、今までにそれぞれが手に入れられた知識や経験、考え方を共有し、情報交換も出来る。

ピアサポーターになるための条件

では、どうすれば、ピアサポーターになることが出来るのか。厚生労働省から提言されているの条件が8つある。
1.最低6カ月間精神的・感情的に安定していること。
2.危機状況にある人をケアすることを理解し支援する役割を遂行する能力。
3.専門職などにいつ相談すべきかについて判断するに必要な洞察力と判断力。
4.支援相手に職場以外の自分の電話番号などを教えない。
5.チームリーダーとの約束以外の行動は決して行わない。
6.支援相手と秘密の約束をしない。
7.支援相手を決して自宅に招かない。
8.支援相手と個人的関係は持たない。

この中で、私にとって難しいと思う課題は、4~8の問題だ。相手の距離感、境界線を見極めることは、とても難しい。私は、発病までは、人に干渉しないタイプの人間だったのだが、デイケアに通うようになってから、変わった。周りの人たちの経験値は私よりは低く、同じように精神障害を抱え困っている仲間をなんとかして助けてあげないとと過保護な母親のような気分になってしまった。相手の気持ちに寄り添おうとするうちに、その気持ちに入り込み過ぎて、本人以上に私がその課題に取り組もうとしてしまうのだ。

深夜のLINEに自分の睡眠時間を削って付き合ったり、自分の用事よりも、相手が相談に乗って欲しいという希望を優先してしまう。頼られる喜び、相手が変わろうとしてることに力を貸してる自分に酔うこともあった。だが、これがさらに突き進み、相手が私との相談の上に決めたことを実行出来なかったり、何度も同じ問題を相談されたりすると、自分がかけた時間も労力も無駄になってしまったように感じ、むなしさや無力感に襲われたり、自分の体に症状として出てしまうこともあった。

1番の問題点は、私が自分の課題から逃げてしまうところだ。自分の課題を保留にし、人の課題に取り組もうとすることは、一見、優しく世話好きな様子をみせてはいるが、実は自分の課題から逃げているのだ。自分の問題に取り組むよりも簡単だと思える人の課題に取り組むことで、自身の課題から逃げるてしまうのだ。

自分と相手の間には、境界線があることを意識すること。「これは私の問題ではない。相手の問題だ」

と捉え、自分のことも大切にする。伝えるときの方法として、アサーティブな言い方を出来るようにしておく。それが出来れば、相手も自分も大切に出来るだろうと思う。そういうことがしっかりと出来るようになりたい。

ピアサポーターを求めて

病気になったことで、出来なくなったことは増えた。元の自分に戻りたいとあがいたり、嘆いたりもしたけど、今は、開き直って、新しい自分を受け止めることが少しずつ出来るようになってきている。私は、病気になったことで新しい自分が生まれた気がする。また違う私が、もう一度、人生をやり直してる、いやもうひとつの人生を手にしたのだと思う。

昔からの親友に、デイケアでの友人作りについて相談していると、「学生時代にするような友人作りをしてる感じだね」と言われたのだが、その通りだと思う。デイケアにいる友人は、まだ色々なことを経験していない人が多い。色々と語り合えるような友人作りも、彼らにとっては初めてのことだ。私は、そこで彼らとともに、もう一度、思春期をやり直してるのだと思う。

もうひとつ、友人から言われたことがある。「居場所がない」と嘆いていた私に「どっちもなんじゃない?」と。「人間界も妖精の国も、どっちにも行けるようになったんじゃない?」そうなのかもしれない。人間界で仲良くなれた親友とは、もう人生の半分以上を共に生きている。そして妖精の国の住人ともこれからも月日を重ねていけるんだろう。本当は、人間界、妖精の国なんていうボーダーラインは無いのだろうが、どちらの世界を生きるとしても、私は、誰かと寄り添いながら、ボートを漕ぎたい。誰かと共に生きるそんな人生を送りたい。私は、本当に欲張りなのだと思う。

だけど、人は哺乳類だから、寄り添ってぬくもりを求めていいらしいですよ。

参考文献

「ピアサポートの理念」
http://www.peer-s.jp/index.html

「障害者保健福祉推進事業(障害者自立支援調査研究プロジェクト)」より、
ピアサポーター養成研修を実施して-今後にいかすために-pdf資料
https://www.mhlw.go.jp

「バウンダリー(心の境界線)を引けるようになる7つの方法」
https://selfcompass.jp

toiro

toiro

双極性障害。RADWIMPSと米津玄師をこよなく愛す。趣味は、料理とカメラ、読書。好きな言葉は「例え明日世界が滅ぶとしても、今日私は林檎の木を植える」「私、何様」「卵を割らなければオムレツは出来ない」

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