健康に気を遣えば遣うほど身体は弱くなる
暮らし「健康にはとても気を遣っています」いいことですよね。でも、健康に気を遣えば遣うほど身体が弱くなるということを、わたしは身をもって経験しました。何事もやりすぎは禁物です。今回はわたしがそう感じた訳をお話しします。
声を出す仕事
わたしは以前、接客業をしていました。観光施設での業務だったため、人がたくさん集まり、埃っぽい環境の中で、一日中大きな声を張るというような特殊な仕事をしていました。ですが、扁桃腺肥大のわたしにとって、それは大きな壁であり、喉を壊さないよう健康には人一倍気を遣っていました。なぜなら、声が出ないと全く仕事にならないからです。
初めての挫折
働き始めて1年。仕事にも慣れてきたころ、わたしは風邪を引いてしまいました。いつも喉からくる風邪は仕事にも大きく影響し、わたしは出ない声を無理やり出し続けました。しかし、いつも一週間ほどで治る風邪は一向によくならず、熱は引いたものの、喉の枯れと咳だけがいつまでも残りました。その状態が1ヶ月半ほど続き、さすがにおかしいと思ったので、耳鼻咽喉科を受診し、喉の状態を検査していただきました。すると、声帯結節という聞いたことのない病名を告げられたのです。声帯結節とは、声帯の部分にタコのような結節というものができ、声が枯れてしまうなどの症状のことです。診断を聞いた時、わたしは治療をすれば1週間で治るものだと思い込んでいました。ですが、医師から「1ヶ月はかかります。その間、声は極力出さないでください」と言われ、愕然としました。つまり、仕事ができないということです。わたしは現実を受け入れられず、泣きながら上司に電話をしました。「仕方がない」と言って休みの許可は出たものの、わたしは悔しくて悔しくてたまりませんでした。今振り返ればたかだか1ヶ月ではないかと思いますが、その時のわたしにとっては大きな挫折のように感じました。
喉への恐怖心
それから、1ヶ月間仕事を休みました。わたしにとって、地獄の始まりです。1ヶ月間声を出さない、家族以外とは喋らないということはかなりの苦痛でした。もう二度とこんなことは繰り返さない、そう心に決め、そこから仕事復帰後、体調には人一倍気を遣うようになりました。具体的に挙げると、常にマスクをする、毎日はちみつを食べる、龍角散ののど飴を舐める、カラオケには行かない、休日は家で過ごす、などです。わたしは声帯結節になって仕事を1ヶ月休むということを経験してから、完全に喉の異変というものに恐怖心を抱いてしまいました。しかし、それが逆に身体を弱めてしまったのです。毎朝、起きるたびに「喉の調子は大丈夫か」とびくびく怯えるようになり、休日にも体調を崩すのが怖い、ということから外出を避けるようになりました。しかし、知らず知らずのうちにストレスが溜まっていたのです。当然、ストレスが溜まると免疫力も下がり、案の定、わたしは体調を崩しやすくなってしまいました。こんなに気をつけているのになぜ?そう思ったわたしはさらに身体に気を遣うようになり、そしてまた体調を崩しやすくなる…今思うとまさに負の連鎖ですね。
脆くなる身体
そうして、わたしの身体は日に日に弱くなっていきました。風邪は引きやすくなり、徐々に喉の不調だけでは済まなくなりました。気管支喘息、微熱、倦怠感、全身におよぶ湿疹、集中力の低下、ミスの増加、いらいら、食欲不振、意欲喪失など、次第にうつ症状へと変わっていったのです。そしてある日糸が切れたように身体が動かなくなり、体力に限界を感じたわたしは、最終的に退職という道を選ばざるを得ませんでした。自分の身体を自ら痛めつけすぎたのだと深く反省しています。もちろん、やめていなければ命が危なかったと思うので、退職したことは今でも後悔していません。ですが、ここまで体調を崩す前に自分自身で止められることもあっただろうと思いました。もし、あの頃のわたしに言ってあげられることがあるとすれば、「そこまでして自分を追い詰めなくていいよ」という一言に尽きます。
体調を崩してしまう前に
自分の身体なのに、コントロールが効かなくなることはとても苦しくて悲しいことです。わたしは自分の大切な人たちが、自分と同じような辛い思いをする姿は見たくありません。環境も大きく影響するかとは思いますが、みなさんも、身体への気の遣い過ぎには気をつけてください。