株式会社TENGAによる障害者支援「able! project」が4月下旬より始動
暮らし株式会社 TENGA(東京都港区/代表取締役社長 松本光一)は去る3月16日に、障害者支援プロジェクトである「able!project」の本格始動について記者会見を行いました。4月下旬にオープンが予定されているB型事業所の説明会も兼ねています。
拠点となるB型事業所「able! FACTORY(埼玉県川越市)」では、衣類の印刷・パソコンリペア・カフェの接客といった作業が入っており、地域に開かれた施設を目指しています。また、株式会社TENGAが思う障害者支援の在り方についても熱く語られました。
松本代表取締役社長あいさつ
──なぜ株式会社TENGAが障害者支援を始めるのか
「TENGAには創業から17年間大切にしているビジョンがあります。『性を表通りに、誰もが楽しめるものに変えていく』人の根源的欲求である性を誰もが楽しめて、一人ひとりが自分らしくイキイキと生きられ、互いに多様性を認め合える愛と自由あふれた世界を目指して様々な取り組みをしてきました。TENGAの補助具も活動の一環で、それを通じて障害者支援の事業所や団体などと活動をし、障害者の就労環境についても分かりました」
「障害者は働く喜びと満足な収入を得ることが難しく、それを変えようと奮闘する事業者や就労支援の取り組みが全国に増えてきています。我々にももっと出来ることがあるのではないか、誰もが働く喜びを感じられる世の中にしていきたい、自分たちなりのやり方でより良い変化をもたらしたいと考えるようになりました。そういった思いから生まれた新しい取り組みが『able! project』です」
「障害を意味するdisableから否定のdisをなくし、出来ないことではなく出来ることに目を向け、一人ひとりの出来るを繋げて不可能を可能に変えていくプロジェクトです。そのベースとなるのが、ここ『able! FACTORY』です」
「『able!FACTORY』は障害者がものづくりの技術を学びながら働いて収入を得る就労支援施設です。ここではまず、技術を習得するところから始まり、自分の覚えた技術を発揮してものを作っていきます。技術を習得し、想いを込めたものづくりをして、収入を得ることで出来る喜びを感じて欲しいです」
「最も伝えたい大切なことがあります。自分が必要とされている・喜ばれている・役に立っている、そう実感しながら働く喜びです」
──able factoryの作業
「一つ目は衣料品の印刷です。シルクスクリーン印刷を中心に、Tシャツなどの様々な衣類に印刷をしていきます。お客様から頂いたデータを版にして印刷し、製品化するまでをこのファクトリーで行います」
「二つ目はパソコンのリペアです。使われなくなったパソコンを回収して再生し、上質なリペアパソコンとして低価格で提供していきます」
「通販サイト『able! STORE』も運営しており、作った衣類や再生したパソコンなどをネット販売します。TENGA・IROHA用の補助具やジョイスティック型・視線入力式マウスも工夫して低価格で提供できます」
「もう一つ大切な作業として、『able! TENGA』の外装フィルムをつける工程があります。パッケージのアートには障害者アーティストである山野将志さんの作品『ベールの朝』を採用しています。ableTENGAは売り上げの一部が全国の障害者へ寄付されるようにもなっています」
「寄付先には東京都立花畑学園・元明館・日本盲導犬協会がございます。出来るだけ困っている人へ直接サポートしていく努力をしていきます。自分たちが働いたことによる売り上げで、他の障害者もサポートしていき、社会の役に立つ実感を得ることが働く喜びに繋がります。これが『able! project』が目指す障害者の自立支援の形です」
「オープンでフレンドリー、誰もが笑顔でいられる場所がテーマのドッグパークやカフェも運営します。障害者がスタッフとして働き、近所の方たちと楽しくコミュニケーションできることを目指しています。定期的にワークショップも開催しており、一緒にケーキ作りや衣類の印刷を行うことで、触れ合っていくなかっで障害者も健常者も違いがないんだなと感じてもらいたいです」
──パートナー募集中
「『able! project』では参加してくださるパートナーを募集しています。衣類へプリントするご依頼、使えなくなったパソコンの回収、ファクトリーやカフェで一緒に働く仲間がいらっしゃいましたら是非お声掛けください」
施設長あいさつ
──木村施設長の自己紹介
「私は今まで20年近く障害福祉分野で就労支援事業を主に取り組んできました。福祉に携わった当初は親御さんらが作った共同作業所があり、そこで障害者の就労支援が行われていました。時代は移り変わり、社会福祉法人やNPO法人などが就労支援を担い、今では多くの株式会社が就労支援事業に参加しています。特にこの10年で就労継続支援A型・B型事業所など多くの施設が出来、それぞれが素晴らしい事業を展開しています」
──B型事業所について
「一般的なB型事業所は1施設につき1つの作業、主に内職の軽作業が多く全国の平均工賃は月に約16,000円ほどとなっています。我々は複数の作業から選べる仕組みをとることで、平均より高い月50,000円の基本工賃を実現しています」 「カフェでの接客や調理補助を通してコミュニケーション能力を高めたり、衣類印刷でアパレルの技術や知識を得られたり、パソコンリペアやサイト運営を通してITスキル全般を学んだり、シュリンク作業で品質管理や在庫管理について学んだりできます」
質疑応答
──(事業所を置く)川越市の皆さんへのメッセージをお願いします
「このたび川越の地で就労支援施設を始めさせていただきました。何をしているかよく知らない施設ではなく、地域の皆さんとオープンにコミュニケーションできる場所にしたいと考えています。それは働く皆にもプラスになっていくと思います。オープンでフレンドリーな場所として、カフェやドッグパークに寄ってもらいたいです。新参者として勉強すべきことは多いですが、川越の皆さんと仲良くしていけたら幸いです」
──Tシャツや衣類のプリントはどこで注文できますか
「Tシャツのロットについては特に設けておらず、1枚だけの注文でも承ります。効率よりも一人ひとりの作りたいとか参加したいといった思いを大事にしたいので、希望に応えて良いものを作りたいです」
──障害者スタッフの支援体制について教えてください
「支援体制については、障害種別による制限はないので、一人ひとりに合ったことを職員が工夫していく必要があると思います。技術を覚えてものを作る過程の中で、何かトラブルや辛いことがあればその都度対応していくことになるでしょう。保険や休憩室など必要なもの以外では、支援体制という決まった形のものは無いですね」
──プロジェクトを始めるにあたって課題はありましたか
「障害者だから働く喜びを持てないのではなく、障害に関係なく働く喜びや役に立つ実感を得るものを作ろうとしたときに、具体的に何をすればいいのかから始めました。まず場所と仕事を考え、カフェをやる事に決めました。何のためのカフェかというと、施設で何か作ってるな~ではなく周りの人と交流があって、明るく開けた場所を作っていくためです。このように、考えてアイデアを出しながら新しい形の就労支援を作ろうと思いました」
「働く職員もゼロから訓練を受けねばなりません。これまでのやり方や常識といったものがないので、自分たちが目指す新たな形の一つ一つに生み出す苦労がありました」
──支援する団体を選んだ基準について教えてください
「4月後半のオープンまでにリストを作って本格的に議論して決めていきます。例えばパソコンがないとか車椅子がないとか急ぎの問題を抱えている所を優先するつもりです。情報を集めて社内で議論して決めていくことになると思います」
──障害を持つ視聴者へ伝えたいことがあれば
「これまで何人かとお話していく中で、自分が知らない苦労を沢山されてきたと教えられました。性の悩みや仕事の話など様々な会話をしていくたびに、知らなかったことを教えてもらいました。今も皆さんのことでまだ分かっていないことがあり、やりながら教えてもらうことになるでしょう。それに出来るだけ応えていく努力を継続していきます。そしてお互いに助け合える世の中を実現していきたいです」
「相互扶助とは、お互いが少しずつ相手を気遣うだとか受け入れることから始まると思います。互いに歩み寄って互いに受け入れることが始まりだと思います。それも含めて知らないことが未だ多くありますので、これからも色々と教えてください。そして、覚えたことはしっかりとクリアしていくように努力します。こういう仕組みは皆で作るものだから、お互いに協力していきたいと思っています。一緒に皆が住みやすい世界を作っていきましょう」
──今後取り組みたいことについてお聞かせください
「性の悩みを抱えた障害者は全国に沢山いますが、相談する場所はほとんどありません。そこで『able!FACTORY』ではオンライン相談室を始めるつもりです。性の悩みについてどんどん相談してください。我々は長年TENGAを作ってきたことから知識はあるつもりですが、障害者にとって正しいアドバイスができるかどうかは手探りの部分があります。それでも、始めなければいけません。我々も毎日勉強することになると思いますが、皆さんの悩みをどうかお聞かせください」
──障害福祉を始める意義についてどのようにお考えでしょうか
「働いて感謝され収入を得る喜びを広めたいと思ったのが始まりなので、TENGAだから特別な意義があるという風には考えておりません。ただ自分たちに出来る方法で皆に提案したい、皆が住みやすい世界にしたいと思いました」
「障害者の性の問題は蓋をされているようでまともに触れられていません。食事や睡眠に並ぶ根源的な欲求でありながら、性だけが塞がれがちです。特に障害者にとって性の不自由は仕方がないとされている部分を目にしてきました。性的欲求を自分の意思で満たせない状態とは、長い飢餓や徹夜に等しく、障害のあるなしを問いません。障害者だから性はない・必要ないという区切りは間違っています。TENGAがこの支援を始めることにより、障害者の性に関する活動も進めてまいります」
「上京したばかりの頃、ある障害者と話をしていて『セックス出来たら死んでもいい。そのぐらいの夢だ。しかし一生出来ないだろう』と言われたことがあります。食事や睡眠に等しいものが“しなくていい”の括りになって、一生出来ない・出来たら死んでもいいなんておかしいと思いませんか。性も尊厳であって守らねばなりません。障害者の性について、皆さんの意識が変わるように努力していく意義はあると思います」