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LD(学習障害)とは?まだあまり知られていない発達障害です
発達障害出典:http://www.photo-ac.com
LD(学習障害)は、全体的な知的発達に遅れはないが、話す、聞く、書く、読む、推論するまたは計算するといった能力のうち、特定の能力を習得するのが著しく困難であるという障害です。
LDの原因は、脳機能の障害とされていますが、まだはっきりとしたことはわかっていません。
LDの特徴
トータルの能力はほぼ問題ないにも関わらず、ある1つの能力だけが極端に劣るといったアンバランスな能力を示すことが、学習障害の特徴です。
知的な発達に遅れはなく、読む・書くなどの1つまたは複数の分野の理解、能力取得に困難が生じます。
特定の能力にのみ障害があり、他の能力は正常です。障害のある特定の能力以外は高い知能を持っている場合もあります。
算数の問題は理解でき計算も他の人より速くできるのに、文章をスムーズに読めなかったり、字を書くことが困難だったりします。
頭の回転は速く、会話も流ちょうであるのに、読み・書きだけに困難を示すのです。
学習障害の症状はさまざまです。主に下記のような症状があります。
ディスレクシア(読字障害)
文字を読む能力に障害があります。
よく似た文字が理解できなかったり、文章を読んでいるとどこを読んでいるのかわからなくなってしまったり、字を読むと頭痛がしてくる、逆さに読んでしまう、読んでも内容が理解できないなどの症状があります。
ディスグラフィア(書字障害)
文字を書くことに困難を示す症状です。
黒板の文字を書き写すのが難しかったり、鏡字を書いてしまったり、作文が書けない、読点が理解できないなどの症状があります。
ディスカリキュア(算数障害)
数字や記号を理解・認識できない、簡単な計算が出来ない(指を使わなければできない)、繰り上がりや繰り下がりが理解できない、数の大小の理解が困難などの症状があります。
上記以外にも、言語能力の困難、推論の困難、社会性の困難、運動の困難、注意集中・多動による困難などの症状があります。
学習障害のチェック方法
LDには「長時間落ち着いて座っていられない」「鏡映文字を書く」「情緒が不安定で行動が衝動的」といった傾向がありますが、個人差があります。
またこういった傾向は乳幼児期の子どもには普遍的にみられるため、実際に発見されるのは学業教育が開始されテストなどによる評価がはじまる小学校低学年である場合が多いようです。
教科や分野によって得意・不得意に大きな偏りがみられることからLDが疑われることも少なくありません。
学習障害の専門的な診断を受ける必要があるかどうかチェックしてみましょう。
話す領域の能力
1.抑揚、声のトーンが不自然である
2.単語を羅列した表現を多用する
3.発音が不正確である
4.早口、たどたどしいなど速度に問題がある
5.言葉に詰まることが多い
読む領域の能力
1.読書のスピードが明らかに遅い
2.同じ行を繰り返して読むことが多い
3.行、単語を飛ばして読むことが多い
4.文章の内容を誤って理解していることが多い
5.語尾や表現を変えるなどおかしな読み方をする
書く領域の能力
1.読みづらい文字を書く
2.句読点の打ち方が明らかに不自然
3.長い文章を書くのが苦手
4.誤字脱字が明らかに多い
5.漢字を正確に書くことができない
計算領域の能力
1.分数、小数の大小を理解するのが困難
2.筆算をしても繰り上がり、繰り下がりを正しく扱えない
3.簡単な計算を暗算することが出来ない
4.複雑な計算式を理解できない
5.計算問題を解くのに異常に時間がかかる
推論領域の能力
1.図形を書くことが困難である
2.分量の比較が出来ない
3.長さ、重さなどの単位を上手く扱えない
4.臨機応変に計画を変更する能力がない
5.因果関係を理解できず、飛躍した考え方をする
以上の項目についてチェックした際、特定の能力だけ当てはまる項目が多い場合、学習障害が疑われます。
LDの治療法・支援
LDの診断の流れは次のとおりです。
まず、精神科医や小児神経専門医、臨床心理士などの専門家の指示のもと、頭部のCTやMRIなどによる脳の器質的な病気の有無をチェックします。
次に知能テストや心理学的テスト、表現力や行動力のテスト(PRS検査など)を行い、総合的な評価を行います。
またこうした過程でADHDや高機能広汎性発達障害の疑いはないかを確認します。
これらの検査で問題がなければ、標準化された計算や読字・書字の検査を行い、LDかどうかの診断がされます。
学習障害というのは、実はまだ医学的に解明されていないので、医学的治療法は今のところ、確立されていないのが現状です。
ですが、周囲の人たちが学習障害に対して理解を深めるようにして、導いていくことで改善される場合があります。
それぞれ個人の障害に合わせた環境を作るようにして、支援していくことが大切です。
話すことが困難な場合は、否定するようなことはしないで言葉をつけたしてあげるようにしましょう。
聞くことが苦手な場合は、近くで話してあげたり、絵や写真を使って話してあげるなどして、ストレスを感じさせないようにしましょう。
学習障害のある人は、それぞれ個人のペースで勉強させてあげること、必要な環境を作ってあげることが大切です。
他にも、注意力や集中力を高めることができる薬物療法などもあります。
また、間違った対応方法や知らない対応方法を普段生活している中で少しずつ改善して行く行動療法やカウンセラー、医師、または、家族や友人との会話の中から問題点を見つけていく心理療法などもあります。
日本では、まだ学習障害の認知度が高いとは言えず、どうしても周囲の対応は遅れているのが現状です。
一方で、LDを抱えているといわれるスティーブン・スピルバーグやトム・クルーズのように、障害を克服して能力を開花させている人も多くいます。
周囲は愛情をもって接し、本人は障害と向き合い、家族と一緒に考えながら長所を伸ばしていくようにしましょう。
学習障害(LD)