発達障害ADHDのある子どもと漢方薬〜不眠、夜泣き、過活動に効く漢方は?
発達障害 睡眠障害近年、精神科領域でも一般的に用いられるようになった漢方製剤。中でも興奮症状を伴うADHDに対しては大きな治療効果が認められています。本記事では著名な処方薬とその適応をピックアップ、ADHDに限らず様々な状況に使える漢方薬の一端をご紹介します。
抑肝散[よくかんさん]の鎮静作用
多動性・衝動性優位型のADHDと診断された方のご家族は、日中の落ち着かなさはもちろんのこと夜間の不眠、夜泣き、あるいは睡眠時驚愕症に悩まされる例が多く見受けられます。このような興奮状態が続いて生活リズムに支障をきたしている場合、抑肝散[よくかんさん](抑肝散加陳皮半夏[よくかんさんちんぴはんげ]のことも)が処方されることが多くなってきました。感情の高ぶりによるイライラや怒りっぽさを抑え、夜は安らかな気分で眠りにつけるようにするのがこの薬剤の主作用です。既に精神科から処方されている方もたくさんいらっしゃることと思います。元が子どもの癇癪に用いた薬なので、乳幼児にも処方が可能です。ひとたび効果があると驚くほど諸症状が落ち着くため、本人・ご家族のお喜びの声をよく耳にします。
精神不安に桂枝加竜骨牡蛎蕩[けいしかりゅうこつぼれいとう]
不安症、不安障害がみられる症例では、桂枝加竜骨牡蛎蕩[けいしかりゅうこつぼれいとう]が用いられます。夢が多く睡眠が浅い、もしくは睡眠時驚愕症(夜驚症)の訴えがある場合は特に有効とされ、ことADHDでは前述の抑肝散と併用するのも効果的です。他にも小児の夜尿症、つまり小学校に入っても続くおねしょがあるならば、抗利尿ホルモン製剤や抗コリン薬といった一般的処方に加えてこれを追加するのが良いと言われています。多動性に対する薬効は抑肝散に譲ることが多いですが、勿論単剤でも症状改善が期待できるため、抑肝散が効き過ぎてしまった時にはこちらに切り替えてみるのも一考です。
それでも多動が治まらない、そんな時は
以上の単剤、二剤でもなかなか落ち着きが見られない…そういった訴えをたまに耳にします。そんな時は、更に黄連解毒湯[おうれんげどくとう]を追加し三剤併用とします。内容は激昂を鎮めるものとなっていますが、ADHDに併発しやすい皮膚症状、皮膚掻痒感にもある程度の改善効果を示します。また、学童期〜成人のADHDには黄連解毒湯の代わりに大柴胡湯[だいさいことう]を追加するのも一つの手です。これは高血圧や肝機能障害に有効な薬剤とされますが、実臨床では抗うつ作用を期待して出される場合もよく見受けられます。
副作用が出たら
薬には副作用が付き物であり、漢方も例外ではありません。有名な副作用として甘草[かんぞう]による偽性アルドステロン症が挙げられます。抑肝散、抑肝散加陳皮半夏、桂枝加竜骨牡蛎蕩には甘草が含まれており、効き過ぎると高血圧による頭痛、低カリウム血症による脱力や周期性四肢麻痺といった症状が見られることがあります。具体的な症状として、胸がドキドキする・頭が痛い・尿量が減った・手足に力が入りにくい・手足がむくんできた・手足にこわばりが見られる・瞼が重い…このような所見が見られたら服薬を一旦中止し、医師と相談の上で改めて服薬内容・容量を調整するのが望ましいでしょう。
よく用いられる漢方を簡単にご紹介いたしました。なかなか合う薬が無くお困りの方は、まず精神科主治医に相談し検討してみてはどうでしょうか。漢方製剤は保険適応で薬価も安く、経済的に負担になりにくいのもポイント。生薬含有量は低めで薬効は処方薬程ではありませんが、抑肝散加陳皮半夏・桂枝加竜骨牡蛎蕩は一般市販薬としても店頭に並んでいるので、試しに自分で服用してみるのも良いでしょう。
注意欠陥多動性障害(ADHD) 睡眠障害