私は今年大学を卒業し、病院の受付として就職しましたが、複数の事を覚えられずに頭が真っ白になるなどの症状が表れ、職場に馴染めず退職しました。そして、発達障害を疑い、心理検査を受け、見事にアスペルガー症候群＊の診断がおりました。今まで発達障害とは無縁と思いながら生きてきた私がなぜ？と思っていましたが、どうやら女性の発達障害は男性の発達障害とはすこし症状の表れ方が違うようです。その違いを紹介していきたいと思います。 ＊現在、診断基準の改訂により、アスペルガー症候群という障害名は無くなり、自閉症スペクトラム障害（ASD）と呼ばれています。

就活が上手くいかない！就職しても上手くいかない！

私は大学で臨床心理学を学び、将来は臨床心理士になりたいと思い、大学院への進学を希望していました。しかし、大学3年生の冬に家庭の金銭状況を考え、就職を考え始め、大学4年生の春から就職活動を始めました。そして、最初の壁にぶつかる事になります。書類選考は受かるのに、一次面接で必ず落とされてしまうのです。私も、大学の進路課の職員の方も「印象は悪くないし、面接練習でも問題はないのに………」と頭を抱えました。そのような苦労の末、とある病院の受付で採用が決まりました。私は「やっと就活から解放される！」という喜びからその病院に入職する事に決めます。　

そして、大学を卒業した今年の春にその病院で働くと様々な問題が発生する事になります。大変忙しい病院で、基本的に1回教えられたことは2度と教えてもらえません。しかし、私は自分で実際にその業務をやってみないと理解できない事が多くありました。また、カルテの回し方なども複雑で、その上支払業務も行わなければいけません。そのような多忙の業務で頭が真っ白になり固まって動けず、怒られる、そして怒られた事による恐怖心でさらに動けなくなるという悪循環に陥り、体調を崩し、たったの2週間で退職することになりました。

女性の発達障害は見落とされやすい………

退職後、私は、強迫性障害で受診している精神科の先生に発達検査を依頼しました。そしてアスペルガー症候群の診断を受けました。ほっと安心したのと同時に疑問が湧き上がりました。「なぜ、今まで気づかなかったのだろう。」と。一般的にアスペルガー症候群の症状として、「コミュニケーションの障害」「対人関係の問題」「限定された物事への興味・関心」の3つが挙げられます。具体例としては、曖昧なコミュニケーションが苦手で、言葉通りに受け取ってしまう、相手の気持ちを察することが苦手である等です。

しかしながら、アスペルガー症候群の女性はコミュニケーション能力や言語能力が高いことが多く、見過ごされることが多い様です。その一方で、体調面では、思春期以降に体調不良を訴えるアスペルガー症候群の女性は多く、「心身症」と誤診されたり、摂食障害やパーソナリティ障害などの二次障害を併発することが多い様です。また、現在のアスペルガー症候群の診断基準は問題が表面化しやすい男性向けに作成されている為、誤診を招くこともあります。

自分で環境を選んで適応していた？

女性のアスペルガー症候群は気づかれにくいということが、就職後のつまづきという形で私には表れたようです。しかし、私は疲れやすく、体力がない事も今まで悩んできましたが、おそらくこの症状も私の障がい特性によるものでしょう。また、自分自身で無意識ながら自分が過ごしやすい環境を選んで来たのではないかと思います。大学では自分の興味のある学科で学び、さらに、心理学を研究するサークルに入り、心理学を学ぶことが評価される環境にいました。また友人関係においても、自分と価値観が似ている友人の存在や、人間関係がしんどく感じる時期には自分から友人グループから距離を置くことがありました。そして、その行為を許容してくれる友人たちに支えられてきたのだと思います。自分で自分に合った環境を選んできた事で、私は自信を無くすなどの経験が少なかったのだと思います。友人達には感謝です。

私は、今、アスペルガー症候群と診断され、安心した半面、不安を感じています。就職するために就労移行支援事業所に通っていますが、就職するためには自分自身の障がい特性を理解しなければなりません。今まで環境を選んで適応してきた私は困り感をそこまで感じず生きてきました。だからこそ、社会人として働くときに何に困るのかがよくわかりません。今の私には良い意味で色々な失敗をしてみると言う経験が必要なのだと思います。失敗するの怖いな、でも失敗しなきゃ自分の事ってわからないよなと悶々とする就労移行支援ライフを送っています。

参考文献

「大人の発達障害」女性が見過ごされてしまう3つの理由　片付けられない、女子トークがツライ。そんなあなたは要注意　文春オンライン
https://bunshun.jp