発達障害の誤解やデマに釘を刺す記事相次ぐ

発達障害

Photo by Sangga Rima Roman Selia on Unsplash

発達障害の周知は進みましたが、名前が独り歩きしているのか未だに誤解やデマがまかり通っています。「幻冬舎GOLD ONLINE」と「AskDoctors」が相次いで、発達障害に対する誤解やデマに対し釘を刺すような記事を掲載しました。

「発達障害児が増えた裏には陰謀があるに違いない」「親の愛情が足りないから発達障害になる」といった誤解やデマを一刀両断していきましょう。

なんで増えたか分かる?

幻冬舎の記事では、発達障害の診断数増加について軽く触れられています。同記事は発達障害者支援法や通級指導教室がメインで、タイトルにある「10年で急増」については本当に軽く触れられている程度です。しかし、誤解を正す決定的な一文が短い段落の中に込められています。

小学校から高校までに通級指導教室を受けている生徒は2019年度で13万4185人おり、その半数以上にあたる7万人程度が発達障害に該当します。そして過去10年間での増加率は、ADHDが約6倍、LDが約5倍、ASDが約3倍となっています。(タイトルの「10年で急増」とは通級指導教室に限った話と思われます。ややこしいですね)

発達障害の診断が増えた背景は以下のように説明されています。「以前まで『落ち着きがない』などで済まされていた子どもに診断名がつくようになった。発達障害を持つ子どもは『数が増えた』のではなく、『認知が進んだ』と捉える方が適切だろう」

発達障害の診断数増加は、診断基準が洗練された結果に過ぎません。それを「子どもが軟弱になった」「親が馬鹿になった」と誤解したり「精神科医の財テク」「スマホ有害論」などの陰謀論に走ったりする御仁が後を絶たないので、こういった基礎的な話を何度もくり返さねばならないのです。

愛情不足説は50年以上前に敗れ去った

「AskDoctors」では小児科専門医の森戸やすみさんが、未だに発達障害児の母親を苦しめるデマの数々を一刀両断しています。我々からすれば常識ばかりなのですが、こうした周知活動が定期的に必要となっているあたり、知識量の乖離具合は意外と深刻なのかもしれません。

「母親の愛情が足りないから発達障害になった」と言い張る御仁が未だに存在するそうです。発達障害は脳内構造における先天的な問題で、後天的になるものではないことはわざわざ説明するまでもないでしょう。愛情不足に原因を求めるのも、既に半世紀以上遅れています。

自閉症と愛情について先鞭をつけたのはレオ・カナーで、これにブルーノ・ベッテルハイムが相乗りして「冷蔵庫マザー」の理論を確立させました。これは1940~50年代のことです。

1960年代から反発する研究が増え、バーナード・リムランドらが中心となり続々と反証が出始めました。ベッテルハイムは必死に抵抗しますが、提唱者であるカナーが1969年に敗北宣言し自説を撤回したことで「冷蔵庫マザー」理論は完膚なきまでに打ち砕かれたのです。

つまり「愛情不足説」は半世紀以上前に提唱者自身が間違いを認め撤回した、いってみれば「ジャンク」です。それを永劫不変の真理であるかのように崇め奉る旧人類のお小言など、気に留める必要すらありません。

ワクチン責任論は悪徳医師が広めたデマ

ワクチンに責任を求めるデマも根強く残っています。ワクチン責任論はイギリスの医師だったアンドリュー・ウェイクフィールドが自らの利権のために捏造論文を出したのが発端とされています。

結局ウェイクフィールドの悪行は明るみになり医師免許を剥脱されますが、デマを払拭するまでに10年以上の長い年月と膨大な研究が要され、その間にワクチンデマは全世界へ広がってしまいました。

なお、ワクチンの保存料である水銀化合物が悪者扱いされていたのですが、槍玉に挙げられていたMMRワクチンに水銀化合物は使われていなかったそうです。ウェイクフィールドの利権というのは、ワクチン有害論を掲げる弁護士との金銭授受だとか独自のワクチンを売り出すためのネガティブキャンペーンだとかいわれています。

顔で分かると思い込むのは恥ずかしい

僭越ながら自分も、あるデマに対して釘を刺しておこうと思います。それは「発達障害は顔を見れば分かる」というデマです。顔つきで発達障害が分かると思い込んでいる人は少なからずおり「支援者とハッタツが並んでて見分けられなかったことはない!」と豪語する匿名の士さえいました。

発達障害と顔つきについての学術的な根拠は皆無ですし、顔で分かるなら「見えない障害」などといわれないはずです。「俺は顔を見るだけで発達障害か分かるんだ」と豪語しようものなら、それは単なるインチキ鑑定士でしかありません。何のために診断基準が設けられ、精神科医などが判定しているのか理解しているのでしょうか。

顔以外でも、行動が多少ズレているだけで発達障害認定する素人があまりにも多すぎます。発達障害かどうかを判断するのは専門の資格を持った精神科医などの職人だけです。聞きかじりの「ハッタツ」「アスペ」を振り回してお医者さんごっこされてはたまりません。

参考サイト

「ADHD」は6倍「学習障害」は5倍…「発達障害の子」10年で急増のワケ(幻冬舎ゴールドオンライン)
https://news.yahoo.co.jp

しつけの問題?ワクチンが原因?発達障害にまつわる「デマ」が母親たちを苦しめている(AskDoctors)
https://news.yahoo.co.jp

遥けき博愛の郷

遥けき博愛の郷

大学4年の時に就活うつとなり、紆余曲折を経て自閉症スペクトラムと診断される。書く話題のきっかけは大体Twitterというぐらいのツイ廃。最近の悩みはデレステのLv26譜面から詰まっていること。

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