統合失調症の主婦~女の幸せとは何か
統合失調症出典:Photo by Paige Cody on Unsplash
去年、結婚10年目をむかえた私に母がこういいました。「自分の娘が私と同じような女の幸せをつかんでくれていて、うれしい」統合失調症の私はなにかと苦労があるため、すぐにはその言葉をのみ込めませんでした。主治医の先生にも「あなたほど恵まれた環境にある人はなかなかいないんですよ」といわれたこともあります。そのときも私は心の中で少し首をかしげていました。
気付き
そんな私も、最近になってようやく私は「病気だけど幸せなんだな」と思えるようになってきました。ずっと「人と同じように生きれない」「普通の人が普通に手に入れている幸せを私は手に入れることができない」と嘆いていたのですが。
統合失調症で対人恐怖症、そのため社会不安障害もともなっています。結婚できたことは人生で最大の幸運でしたが、ずっと専業主婦で朝家族を見送ってから夕方、娘が帰ってくるまでは独りぼっちです。精力的にパートをしている世間のお母さんたちがうらやましくて仕方がありませんでした。
結婚すると主婦は家事に多くの時間を費やさなければならなくなり、平日は夫も疲れて帰ってくることも多いです。当然のことですが、私はなかなかそれを受け入れられず、マリッジブルーになりました。今でこそいろいろなことを人に相談できるようになりましたが、以前は「よくやっている」とみられなければいけないという思いがあり、マリッジブルーのことは誰にも相談できませんでした。
そんなとき、母が昔いっていた言葉を思い出しました。「専業主婦は何か趣味とかで外に出る機会を作らないとだめよ」と。確かに、母は専業主婦でしたが、常に習い事などで社会に出ていました。水泳や俳句、着付け教室など。そういった所に通っていた母はとても生き生きとしていました。その上で、オンとオフを使い分けていたのでしょう、3時ころにはきちんと帰って家事をし、美味しいごはんを作ってくれていました。
心の支え
私も何かやってみようと思ったのですが、社会不安障害が邪魔をして、なかなか踏み切ることができずにいました。しかし、どうにかして社会と触れ合いたいと思い、まず訪問看護師さんに来てもらうことにしました。すると、来てくださった看護師さんたちがみなさんいい人ばかりで話しやすく、悩みがある時は悩みを聞いてもらい、心が安定しているときは楽しく雑談することができたのです。
このことがとても私の心の支えになりました。そうやって人との接触をもてるようになると、淡々とおこなっていた家事も楽しくなり、家族を見送ったあと今日の晩ごはんは何にしようかと考え、スーパーにいって買い物をするのも掃除機をかけるのも意欲的におこなうことができるようになっていきました。
社会不安障害の克服3
そんなとき、看護師さんを紹介してくれたケースワーカーさんから、病気の体験談を書いてみませんかとお話をいただきました。以前、私が文章を書くのが好きだといっていたのを覚えていてくれたのです。
病気の発症から現在までのことを包み隠さず書きました。書いているときは無心になれるので、とても楽しく書けたのです。そして私はいろいろと自信がついてきたので「どこか、障害者であることを公表したうえで、通えるところはないでしょうか」とケースワーカーさんに相談してみました。そして、今この文章を書かせてくださっている事業所に紹介してもらえたのです。
久しぶりに出た社会は心地よく、人との触れ合いも怖くなくなりました。母のいっていた「女の幸せ」とは家族のために家を守りつつ、自身の楽しみも見つけられることだったのだと思いました。統合失調症や社会不安障害はなかなか手ごわいものですが、今回のように段階を踏んで、今どの程度ならどのような形で社会と触れ合えるのかをよく考えた上で行動すると、少しずつですが、解消していけるものだと思いました。これからもこの仕事を通じて社会と触れ合っていけたらと思っています。
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