10月6日「世界脳性まひの日」、街とSNSをグリーンに染めることで、脳性まひについて知ることから始めよう
身体障害脳性まひって聞いたことはあるけど、よく知らない、そんな方が多いのではないでしょうか。世界各国の脳性まひ支援コミュニティでは、10年前の2012年から10月6日を「世界脳性まひの日」とし、発信しています。「まぜこぜの社会」の実現を目指し、数々の啓発イベントを開催してきた一般社団法人Get in touchは、4月2日の世界自閉症啓発デーに合わせて世界をブルーに染め上げた「Warm Blue Day」に続き、10月6日に「世界脳性まひの日」のシンボルカラーであるグリーンに街とSNSを染めようと「Warm Green Day(WGD)」を始めます。
2022年はWGD元年となり、これを1回限りにせず毎年運営していくためのクラウドファンディングも実施されています。本格的な啓発活動を始めるにあたって、Get in touchの東ちづる代表からお話を伺いました。
脳性まひのこと、「知らない」から「知る」へ
──Warm Green Day(WGD)を始めるにあたってどのような社会課題を感じられましたか
「これまで脳性まひについて、私自身も含めGet in touchのメンバーたちもよく知っておらず、勘違いさえしていました。改めて知ることの重要性を痛感しました」
「脳性まひの主な原因は産まれる瞬間のトラブルで、へその緒で首が締まる、逆子(さかご)、チアノーゼといった事故の後遺症であるケースが多いです。まさに交通事故のように誰にも起こり得るものです。ある当事者は『自分は自然分娩で産まれたが、出産時のトラブルで脳性まひになった。弟は帝王切開で健常者として産まれた』と語りました。この一点だけでも、知ることで気づきが生まれ、知れば知るほど様々な症状の人がいると分かってきます」
「脳性まひは自閉症と違って、全国各地に協会や当事者・保護者会が作られている訳ではありません。なぜなら、脳性まひは四肢障害ひとつとっても膝から下、肘から先、全身などと程度が様々で、まさに十人十色の障害だからです。また言語障害が多いというイメージがありますが、実際は、医療の進歩で、軽度の脳性まひの方が増えているという現状があります。まだまだ脳性まひについての活動や理解が広がっていない難しさに直面して一度は諦めかけましたが、『誰も排除しないまぜこぜの社会』という初心に帰り、難しいで終わらせず、『分かりたい』気持ちを重んじることにしました」
東京都庁舎がグリーンに〜小池都知事が定例会見で表明
──行政や協力依頼先からどのような反応がありましたか?
「小池百合子都知事が9月30日の定例記者会見で、「世界脳性まひの日」に触れ、「東京としても脳性まひのある方も安心して暮らせる共生社会を実現を目指したい。10月6日の夜はシンボルカラーのグリーンに都庁舎をライトアップして、取り組みを応援していきたい」と語ってくれました。小池都知事から応援していただけて、とても心強いです」
「東京都庁のほかにも、神奈川県庁・世田谷区庁舎・フジテレビ・セルリアンタワー東急ホテルなどがグリーンに染まることが決まりました。活動も長いので、色々な自治体や企業に話を通すスピードが格段に速まっており、やりがいを実感しています」
「生きづらさだヨ!全員集合 〜脳性まひ編〜」を開催
──10月6日に開催される「生きづらさだヨ!全員集合」はどんなイベントですか
「私が司会を務めるのですが、登壇者がそれぞれ「生きづらさ」を笑いを交えながら語り、オーディエンスとともに考える参加型イベントにしたいと考えています。コメンテーターとして玉木幸則さん、ゲストに、元NHKリポーターの千葉絵里菜さん、ユーチューバーの寺田ユースケさん、NEWSつくばライターの川端舞さん、タレントの醍醐(だいご)さんを迎えます。ゲストとコメンテーターは全員脳性まひがあり、リアルな声を聴きたいと考えています」
「生きづらさだヨ!全員集合 〜脳性まひ編〜」概要
【日時】10月6日(木)14時〜16時終了予定(開場 13時半)
【場所】東京都港区西麻布3-5-5 dōTERRA Japanビル B1ホール
*手話通訳付き(手話通訳士=森本行雄、樋口まゆみ)
*館内バリアフリー、障がい者トイレ、未就学児キッズスペースあり
司会:東ちづる
コメンテーター:玉木幸則(福祉番組ご意見番、社会福祉士)
登壇者:川端舞(NEWSつくばライター)・醍醐(ダイゴ)・千葉絵里菜(NHK元リポーター)・寺田ユースケ(YouTuber、元車イス芸人・車イスホスト)
【料金】大人1,000円(税込) 大学・大学院生、障害者は半額。高校生以下は無料
【詳細・お申込み】https://forms.gle/3127HzWbXiyJh6vx5
WGDを広めるために
──エンタメと繋げて活動していく狙いなどを改めてお聞かせください
「脳性まひに限らず障害者は憐憫の対象になりがちなので、立ち上げ当初から『多様性はスタイリッシュ・カッコいい・ユニーク』にしていこうとしています。今回、多彩な脳性まひの人々を紹介する「GET THE GLORY!~Warm Green Day~」というプロモーション動画を制作しました。奥野敦士さんや齊藤雄基さんをはじめ沢山の方々にご参画いただき、スポーツ・アート・エンタメと様々な人が出る作品に仕上げています」
プロモーション動画「GET THE GLORY!~Warm Green Day~」
──WGDを広めていくための構想は何かありますか
「今回は、SNSに加えて、結婚式場などイベントで人気の「フォトシュシュ」の使った特設サイトを設けて写真の投稿を呼びかけます。たくさんの人たちがフォトシュシュやSNSに投稿して、盛り上げていけたら嬉しいです。来年は行政や政治家などに働きかけていければいいなと考えております。慌てず諦めず腐らずをモットーに、過去から培ったコンテンツを活用していくつもりです」
「思い切って記者発表をして、『脳性まひ』というワードで記者がどう反応するか不安でしたが、皆良い反応を示してくださいました。10年前は『自閉症』という3文字だけで記事が書けないと言われたものです。それに比べると、本当に社会は進みました。多様性なくして発展はないと考える方が増えているのでしょう」
「世界脳性まひの日〜Warm Green Day〜」特設ページ
https://www.getintouch.or.jp/wgd
ハッシュタグを付けたSNSでの投稿を呼びかけています
#WGD106 #脳性まひ #世界脳性まひの日 #まぜこぜ #getintouch #worldcpday
クラウドファンディングページ
https://readyfor.jp/projects/2022WGD/
リターンにBEAMSのWarm Green Day 限定のオリジナルTシャツなどがあります
編集後記〜脳性まひがある人と関わって
私が脳性まひがある人と初めて関わったのは、学生だった約30年前。「大阪青い芝の会」という障害者運動団体でボランティアをしたことがきっかけでした。私は、24時間介護を必要とする男性の介護に毎週入っていました。ある日、服の着替えを手伝った際、長袖の先をひじの近くで引っかかったままにしていました。その時、男性が「私は道具じゃない」と私に告げました。私は、どきっとして黙り込んでしまいました。「あなたの自己満足の道具じゃない」と言われた気がしました。対等に向き合っていなかったのではないか、今もこの自問が脳裏に浮かびます。
このような体験を重ねていく中で、脳性まひを深く理解するには、脳性まひがある人に実際に会って関わっていくことしかないと身をもって感じています。関わる人を増やしていくためにも、まず多くの人に脳性まひがある人のことを知ってもらいたい。この10月6日の「世界脳性まひの日〜Warm Green Day〜」の取り組みがそのきっかけになることを切に願っています。
障害者ドットコム編集部 川田祐一
身体障害