バリバリの販売員だったわたしが精神病になった話「4話.死線」
統合失調症出典:Photo by Masaaki Komori on Unsplash
前回、オーバードーズ(以下、OD)にハマった先に待っていたものは
最大の失敗
精神的にODに慣れきったある日曜日、わたしはとんでもないことをします。それは、後にも先にも経験しない、色んな薬を合計180錠ほども飲むという行為です。
確かに「死にたい」という気持ちは常に心につきまとっていました。ですが、そのときにそれほど落ち込んでいたわけでもなく、人生に絶望していたわけでもありませんでした。
ODに恐怖心がなくなったゆえの、ただの興味本位だったかもしれません。
生死の境をさまよって
180錠の薬を飲んだわたしは、すぐに意識をなくしました。ですが、運よくすぐに母親に発見され、救急搬送されることとなります。そして病院のみな様の尽力により、命をつないでいただきました。
ODをしたのが日曜日の昼だったと思いますが、次に目を覚ましたのは金曜日の朝でした。起きた瞬間は事情が飲み込めなかったのですが、ほどなくして「自殺未遂をした」と理解しました。
お医者さまの話では、生きていたことが奇跡で、後遺症が残っても仕方ないとのことでしたが、幸いにもわたしの場合は薬物による後遺症は出ませんでした。
この入院で一番印象に残っているのが、意識を失っていた間ずっと装着されていた「尿道カテーテル」です。これを抜くときがとんでもなく痛くて、薬物によって生死の境をさまよったことより、二度とこの痛みを味わいたくないと反省しました。今となっては笑い話のようなものです。
生き返って思うこと
家族と話したり、家に帰って思ったことは「生きていてよかった」と。今まであんなに死にたいと思っていたことが不思議なくらい、安堵しました。
そして薬物の恐ろしさを、文字通り身に染みて理解しました。薬は簡単に人の命を奪います。そしてODにハマってしまった人は、危ない橋を簡単に渡ってしまいます。
わたしは、あのときに命を救ってくれた家族や病院の方にとても感謝しています。
自殺未遂から多くの時間を費やしましたが、アルバイトをしたり、趣味のゲームを通じて友人と出会ったり、いまこうしてコラムを書いたりできています。生きていたからできたことです。
さよならオーバードーズ
あれからODをしなくなった、といえば嘘になります。簡単には依存から抜け出せずに、何度か気の迷いで少量のODをしてしまったことがあります。そのたびに反省し、徐々にではありますがODから抜け出し、10年たった今ではODしなくなりました。
わたしの場合はODから完全に抜け出すのに10年かかったのです。個人差があることとは思いますが、薬物への依存は肉体的なものに限らず、精神的な依存も大きいと思います。
薬を飲めば楽になる、いやなことを考えなくて済む。そういったことから抜け出す必要があります。
ODに依存する方を見てもわたしは「絶対にやめた方がいいよ」とはなかなかいえないと思います。病気のつらさも、薬物に依存することで楽になるこころのことも理解できるつもりです。
わたしが統合失調症になったときに見た赤紫の空は、今では青く透き通っています。赤く染まっていた木は緑に輝いています。
この景色を、死ぬまで見たいと思います。
統合失調症