境界知能とは、IQ分布に開けられたクレバスである
知的障害Photo by Tommy Lisbin on Unsplash
知的障害の有無や程度を判断する大きな基準は「IQ」です。一般的な知能検査であるウェクスラー式(WAIS、WISCなど)は100を中心とする正規分布となっており、高低問わず100から離れるほど該当する人間は少なくなります。高IQは勿論、低IQも割合としては極端に少ない訳ですね。
標準偏差などの統計学用語を調べ直すのは面倒なのであまり深くは突っ込みませんが、とにかくIQ100±15すなわち85~115の間が一般的な知能として定義されており、その割合は人類の68.2%だそうです。知的障害の基準はIQ70未満とされ、その割合は2.3%、50人に1人はいる計算となります。IQ70未満の知的障害でも更に程度が分かれていますが、そこは本題でないため割愛します。
本題である「境界知能」は一般と知的障害の中間であるIQ70以上85未満を指し、全人口の13.6%が該当します。概算すると50人中6人程度でしょうか。境界知能は普段こそ健常者と遜色なく暮らせているように見えますが、実際は健常者よりも圧倒的に多くの生きづらさを体験しています。その上、障害とは認められず公的支援を受けることも出来ません。もっと言えば、正式な診断名ですらありません。
この「福祉の狭間」は、半ば人為的に作られました。元々はIQ85未満を知的障害と定義づけていたのですが、分布にして15.9%の人がこれに当てはまるとなると、国として支援のリソースが足りなくなると分かったのでしょう。1970年代に基準が見直され、かつて知的障害とされていた13.6%の人々が“表向きは”健常者となりました。
基準を変えて「健常者」にしたところで、境界知能者がぶつかる困難に変わりがなければ一緒です。寧ろ、支援の基準から外れた分だけ悪化したとすら言えるでしょう。IQ分布という氷山に開いたクレバスの底で、何の行政支援も受けられない境界知能者たちが喘いでいます。
参考サイト
知能指数(IQ)の分布~そのIQは全体の何割か?~
https://sengakuhisai.com
知的障害