赤ちゃんに特有のモロー反射ってなに?〜モロー反射はいつまで続く?対処法は?発達障害との関係は?

発達障害

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モロー反射… 生まれてすぐのお子様をお持ちの親御さんなら聞いたことがあるかもしれません。大きな音を聞いたり、急に体を動かされると、赤ちゃんは驚いて両手を大きく広げる動作を見せます。簡単に言ってしまえばこれが所謂モロー反射というものですが、本章ではもう少し詳しく説明を加えてみたいと思います。

そもそも反射ってなんだ?

そもそも反射って何でしょう。アキレス腱反射なら誰しも一度はやってみたことがあると思います。膝を叩いて足がビクンと上がる際、皆さんは意図して足を上げていましたか?違いますね。反射とは一般的に、「ある特定の刺激に対し、意識せずに起こる体の反応」と定義されます。ですからモロー反射でも、赤ちゃんはわざと手を広げている訳ではありません。驚くと意識しないままに手が広がってしまう、ごくごく自然な反応なのです。モロー反射のように、生まれた時から既に存在する反射を原始反射と呼びます。それでは生まれたばかりの赤ちゃんが傍にいらっしゃる方は、実際にモロー反射を見てみましょう。大きな音で驚かす必要はありません。赤ちゃんを仰向けに寝かせ、頭を15センチ程起しつつ、力を緩めて後頭部をストンと落とすようにします。このように後ろ向きに落下する動きに対してモロー反射は出やすいとされます。

モロー反射はいつまで続く?

如何でしたでしょうか?「出た」「出ない」「よくわからない」色々だったかと思います。反射が出た、というお子様の様子はどうでしたでしょう?まず肘をピンと伸ばして大きく両手を広げます。これが反射第1相、つまり第一段階です。次にゆっくりと腕を折り曲げ縮こまるような動作を見せます。これが第2相(第二段階)です。

うちの子は出なかったという方、説明が前後しますが、何よりこのモロー反射、生後4か月前後で消失してしまいます。ですから生後8か月、9か月のお子さんには通常誘発されませんし、当然ながら大人には見られません。お父さんが寝ている時に勢いよく枕を引っこ抜いてもいきなり手を広げたりは…しませんね?しかも反射の消失時期は人によって1か月程度は前後することもあります、なのでモロー反射が確認できないからと言って即座に狼狽える必要はありません。平均的には4か月位とされている、あくまでも目安の時期と捉えておいて結構です。

病気との関係はあるの?〜左右で反射に差がある場合

繰り返しになりますが、モロー反射自体に病的意義はありません。むしろ「生後すぐに反射が出ていない方がおかしい」と言えます。例えば、もしモロー反射をやってみて片腕には反射が出たけれど、反対側の腕には出なかった…となったらどうでしょう?こんなときはちょっと身構えますね。反射に左右差が見られる場合、可能性としてあるのは腕神経叢麻痺[わんしんけいそうまひ]鎖骨骨折です。

まず腕神経叢麻痺ですが、これは分娩麻痺のひとつです。分娩時、児は狭い産道を通ってくるために身体の至る所を圧迫されます。この圧力により神経が損傷し、様々な体の動きに支障をきたすようになるのが分娩麻痺です。腕神経叢は首から肩にかけて体内に走る神経の集まりのこと。腕神経叢が損傷してしまうと、脊椎と腕の神経の連絡が絶たれて腕が動かせなくなります。主に児の肩が分娩時、母体の恥骨に引っかかる事で起こります。多くは軽症で、生後数週で自然治癒し動かせるようになりますが、神経が完全に断裂してしまうと再び腕をうごかすことは難しくなります。

次に鎖骨骨折ですが、これまた分娩時骨折といって分娩時に起こるトラブルです。同様に肩が産道に引っかかることで、鎖骨が真ん中で折れてしまいます。とはいえ完全に折れてしまう例は少なく(若木骨折)、大多数は整復により一ヶ月程度で治癒します。ただし、骨折の程度がはなはだしい場合は手術が必要となる場面もあります。これらの分娩時のトラブルは、母親が小柄で産道が人より狭い、もしくは胎児が4000gを超える巨大児である、といった例に起こりやすいので注意が必要です。

病気との関係はある?〜反射がみられない・続く場合

ではさらに、4か月に満たないのに反射が誘発されない時、もしくは反射がいつまで経っても消えない時はどんなことを考えれば良いのでしょうか?原始反射は主に脳幹がつかさどっています。脳幹は中枢神経の一部を構成し、大脳のほぼ真下にあって多くの神経が出入りしている植物の根元のような部位です。脳幹に何らかの異常をきたすと、反射の誘発異常が出現します。また、脳幹の下には脊椎が続いており、やはり運動神経や感覚神経といった神経の道筋となっています。つまり、反射の異常がみられる場合は何かしらの中枢神経系の機能異常が疑われる、ということになります。

機能異常の原因に何が最も考えられるでしょう。まず念頭に置くべきは脳性麻痺で、脳が発達段階で何かしら障害を受けてしまい、運動機能や姿勢保持に困難を生じる状態を指します。脳性麻痺は残念ながら永続的、すなわちずっと残り続ける類の麻痺で、症状に多少の変化はあれど「完治」とまでは行かない重篤なものです。

さらに脳性麻痺の原因を挙げておきましょう。多くを占めるのは低出生体重児、新生児仮死に起こる新生児低酸素性虚血性脳症です。自発呼吸が弱く酸素を脳にまで上手く取り込めないと、脳が酸欠になって多くの疾患を惹起します。脳室上衣下出血、脳室周囲白質軟化症、皮質下白質軟化症、皮質層状壊死、基底核壊死、側脳室前角近傍嚢胞…低酸素性虚血性脳症はこれら重篤な病態を引き起こし、結果脳性麻痺となってしまいます。

また核黄疸も大きな原因となります。何らかの原因で血中ビリルビン濃度が生理的黄疸を超える異常高値となると、中枢神経にダメージを与えます。他にも脳血管障害、奇形、神経感染症…と様々な要因があります。そして皆さまのご承知の通り、神経発達障害(ここでは狭義に捉えて頂いて結構です)も中枢神経機能異常の原因として考えられるものの一つです。たとえ運動や姿勢に問題が出なかったとしても、後々認知・コミュニケーションの障害として症状に現れる可能性は否定できません。

異常かな?と思ったら

何よりも定期的な乳児検診を受けるのが重要です。検診では運動機能や精神発達の度合いを必ずチェックするからです。それでももし、検診では指摘されなかった反射の異常を感じたらどうするべきでしょうか?前述のような事態を念頭に置きつつも、やはり先ずはかかりつけの小児科(産婦人科や新生児科のことも)に相談しましょう。子どもの普段の様子は親御さんが一番知っており、親の発見する子どもの異常は、臨床現場でも疾患の早期発見に重要な手掛かりの一つとなります。

では、モロー反射を見定めるためにはどのような点に注目しておけばよいのでしょうか?

重要なのはWest症候群との鑑別です。West症候群に見られる点頭てんかんは、モロー反射と混同されがちで、見逃すと重篤な状態に陥りかねません。点頭てんかんはスパスムと呼ばれるてんかん発作の一形態で、急に手足および頭に力が入り、両腕を開く様にビクリと動かす挙動が起こります。発作は数秒間で、確かに反射と似ています。収まると何事も無かったようにケロッとしているため一見問題は少ないように思えます。

しかしWest症候群は外見に比して極めて予後不良な疾患です。そのまま放置すると数週以内に表情の変化が消え、姿勢保持が出来なくなり、座っているのもままならなくなります。てんかん性脳症が進行し、精神発達・運動発達に遅れが出始めます。早期発見・早期治療である程度進行を遅らせることは可能ですが、残念ながら発達遅滞はほぼ必発であり、たとえ治療を受けたとしても、半数近くが更に重篤なLennox-Gastaut(レノックスガストー)症候群へと移行します。結果、知的障害、重症自閉症といった疾病名が付くことになります。

さて、ならばてんかんと反射、一体どこで見極めをつけたらよいのでしょうか?もちろん、最終的な診断は病院での診断に拠るしかありませんが、観察上見分けられそうなポイントを幾つか挙げてみましょう。

・点頭てんかん発作の見られる時期
発作が見られる時期はおおむね3か月から1歳に集中しており、発症するとモロー反射の消失と入れ替わるように出現します。ですから前述の通り、「モロー反射がいつまでも残っているように見える」のであればWestの可能性を考えておくべきでしょう。

・点頭てんかん発作の出現するきっかけ
モロー反射は大きな音や身体の大きな動きといった、何かしら子どもが驚かされるような誘因がありましたね。一方発作は特にきっかけ無くいきなり起こります。比較的睡眠時に多く見られることが知られています。

・点頭てんかん発作の外見的特徴
「点頭」とはそもそも大きくうなずく動作のことを言います。大きく手を伸ばしつつ、俯くような動きが出るのは反射との相違点です。また、発作は数秒から数十秒に一回ずつ反復して何度も起こる場合が多いです。

もしも「これはひょっとして、てんかん発作じゃないか?」と思ったら、その様子を携帯電話・スマートフォンのカメラで動画撮影しておきます。主治医に映像として提示することは、果たしてこれが病的なのかどうか判断するのに大きな助けとなります。もし病的であると疑われたら、実際に脳波を検査することになります。脳波検査は若干時間の掛かる検査ですが、子どもの頭に電極を張り付けて暫く寝かせるだけでできる、侵襲性の低い検査です。ここで初めて、てんかん発作かどうかの具体的判断材料が揃います。

やや長くなってしまいました。このように、反射ひとつをとっても様々な事柄が分かります。脅しとも取れる疾患の説明はもとより、その他多くの疾病が出てきたため若干混乱されたかも知れません。ですので、先ずは乳児健診をしっかり受けるだけで異常の多くは把握できる、という点を最後に強調しておきたいと思います。その上で見逃しやすい症状に関して頭の片隅にでも置いて頂ければ十分であって、必要以上に身構えなくても大丈夫です。そして繰り返しにはなりますが、普段の赤ちゃんの様子を誰より最もよく知るのは親御さんなのですから、愛情もってじっくりとお子様と向き合うのが一番の診察法になると思っています。

参考文献・参考資料

低酸素性虚血性脳障害—病変形成過程 の早期診断—
https://www.jstage.jst.go.jp

今日の臨床サポート エルゼビア

難病情報センター
http://www.nanbyou.or.jp

小児慢性特定疾患情報センター
https://www.shouman.jp

m3.comニュース
https://www.m3.com

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Risso

Risso

元画家志望の30歳、未だ立たず。大学在学中に鬱病の診断を受け、休学・復学を繰り返しながらも昨年卒業した。発達障害疑い有。現在は資格試験の勉強をしながら求職中の身。趣味はインテリア全般。

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