5月12日は民生委員の日〜民生委員の認知度・イメージについて調査が行われました
ニュース民生委員制度の源流になった岡山県済世顧問制度設置規程が5月12日に公布されたことから、毎年5月12日は「民生委員・児童委員の日」となっています。この日を定めた全国民生委員児童委員協議会(当時)は、この5月12日から18日までの1週間、「民生委員・児童委員の日 活動強化週間」として、民生委員・児童委員の活動を広く国民に理解を深めて、委員活動の充実を目指しています。
そこで、令和元年12月に全国一斉に行われる民生委員の改選(任期3年)を前に、全民児連(正式名称:全国民生委員児童委員連合会)は、民生委員に対する認知度やイメージについてのネット調査を行いました。
民生委員は100年以上の歴史を持つ岡山発祥の制度で、全民児連の前身となる「全国方面委員連盟」の初代会長は、次の一万円札となる渋沢栄一氏が務めました。なかなかの経歴ではあるのですが、それによる特権はないようで、現在は委員の高齢化や担い手不足といった「みんなが抱える」悩みに喘いでいます。
この調査は、まさに民生委員の明日を占う大事なデータとなるでしょう。
民生委員とは
民生委員とは、一人暮らしの高齢者や障害者・ひとり親世帯など、主に孤独死リスクの高い世帯へ訪問や電話を行い、時に生活相談も承るボランティアです。厚生労働省委嘱の非常勤公務員ではありますが、ボランティアです。交通費などの活動経費は支給されます。
加速する超高齢社会や懸念される大災害などによって、見回り活動を行う民生委員の重要性は増しています。しかし、それと裏腹に委員の高齢化や担い手不足、仕事の多岐化による負担増といった問題も持ち上がっており、民生委員そのものの存続に暗い影が落ちているのも事実です。
若者世代の関心は高い
さて、ネット調査では主に「民生委員になってみたいか」「民生委員について知っているか」「民生委員についてどのようなイメージを持っているか」について聞かれました。
「民生委員・児童委員」のイメージについては、「地域にとって必要」「ボランティア精神が高い」「社会福祉への理解と熱意がある」などが挙がる一方、「自分から遠い存在」と答えた方も多くなっています。地域にとって必要と考えながらも、サポートをする側、受ける側の双方において、まだまだ当事者意識をお持ちでない現状が浮き彫りになりました。
「民生委員になってみたい」という回答は、10〜20代が最も多く、20%以上もおりました。「民生委員の活動内容を知っている」と回答した層に限れば、「なってみたい」と答えた若者は40%弱も占めています。活動内容を知った上でこの結果ですので、若者世代からの関心は高いとみてよさそうです。
ただ、そもそもの「民生委員の活動内容を知っている」人は全世代で7.9%と低く、10〜20代に限ると約4.5%という結果でした。名前だけなら知っている層は7割もいるので、活動内容が周知されていないことになります。せっかく意欲のある若者が民生委員になったとしても、「こんな筈じゃなかった」と思われては担い手不足が更に加速するでしょう。
若者からの関心は貴重です。これを今後の改選でもキープできるかどうかが民生委員の未来を決める分水嶺となるでしょう。(ボランティア経験が就活で買われる事情もあるのでしょうが。)
軽い気持ちでは出来そうもない
民生委員へのニーズ面は決して低くなく、相談したい人や現在相談している人は合わせて5割近くにのぼりました。特に30代までの女性は子育て関連についての相談を求める声が多くなっています。
核家族化や近隣コミュニティーの希薄化によって、子育ての相談先が制限されている昨今、民生委員はますます重要になってくることでしょう。そうなると、民生委員に求められる水準も高くなってくるのではないかと思います。早晩、軽い気持ちで受けられる仕事ではなくなるでしょう。実際に1期(3年)限りで辞める人も多いです。
自分なら専門知識なしで相談を受けるのには戦々恐々としてしまいます。それをボランティアでやるのは少し気が重い感じがしますね。変死体の早期発見で、なるべく早く孤独死を弔うには重要な役割と分かってはいるのですが。
若い世代は見回りなどのアクティブな活動を中心にし、相談先には経験豊富なシニア世代が就くのが理想的な形となるでしょう。高齢化も委員のキャリア次第ではうまくやれるのではないでしょうか。
まとめ
民生委員は今後様々な活動を求められますが、それを知ったうえで意欲を示す若者も存在します。ただ、活動を知っている人数そのものが少なく、ミスマッチによるイメージ低下を招くと担い手不足の挽回はさらに難しくなるでしょう。
しかし、見回りだけでなく生活相談も多方面にわたり、決して軽い気持ちで出来ることではありません。ましてやボランティアなので、士気の源を探すのにも苦労します。
高まるニーズ、若者の関心、担い手不足、様々な課題や希望を前に、全民児連はどのような一歩を踏み出すのでしょうか。