「暗いところが見えにくい」は病気のサイン?網膜色素変性症とは
身体障害暗いところが見えにくいというのは普通のことかもしれません。ですが、私はこれがきっかけで網膜色素変性症だということがわかりました。この病気は自分でも気づかないうちに進行している場合もあります。網膜色素変性症がどのような症状があり、進行していったかを実体験をもとにお話しします。
網膜色素変性症の症状
網膜色素変性症は目で見た情報を電気信号に変換して脳に伝える網膜に障害をきたす遺伝性・進行性の病気です。現在明確な治療法はまだ確立されていません。主な症状は、暗いところが見えにくい、車のライトや照明・太陽光をまぶしく感じる、視野が狭くなる、色の差異がわかりにくくなる、視力が低下するなどがあります。これらの症状がどれくらいの時間をかけてどの程度悪化するのかは人によって大きく異なります。
病気に気づいたきっかけ
私が違和感に気づいたのは小学校三年生の頃でした。友人と自転車で出かけた帰り、薄暗い道をスイスイ進んでいく周囲についていけずに何度も「待って!」と声をかけました。友人が当たり前のようにできることが自分には難しいということに戸惑い、母親に「暗いところが見えにくい」と伝えましたが、「それはみんなそうだから」と言われただけでした。元々視力が低かったので、見えにくいのは近眼だからだと思ったようです。その後、薄暗い道で崖の方に向かって歩いていた私を見て、さすがにこれは何かおかしいと気づき、病院で診断を受けました。他の人の例ですが「車の運転をしていて対向車のライトをまぶしく感じるようになったので病院に行ったら網膜色素変性症だと診断されて身体障害2級の認定を受けた」という話を聞いたことがあります。症状が軽度だったり進行がゆっくりだったりすると、自分でも気づかない場合があるようです。
色覚異常の症状と進行
色覚異常を自覚し始めたのは中学生の頃でした。特に苦も無く遊んでいたはずのバスケットボールが、ボールの茶色と体育館の壁の色が混ざって見えなくなることが多くなりました。ノートの罫線が見えにくくなったのもこの頃です。高校生になると、紺色と黒のハイソックスを片足ずつ履いて行ったり、黒板に書かれたチョークの赤い文字が見えにくくなりました。就職してパソコン画面を見続ける時間が長くなると、白い画面をまぶしく感じるようになりました。パステルカラーなどの淡い色合いの違いや、Excelの網掛けした箇所を見分けることも難しくなってきました。徐々に本を読むのに時間がかかるようになり、明るい照明の下でも読むのを諦めて本を処分したのは25歳くらいだったと思います。
補助ツールやアプリを使って見る
今では、パソコン画面は黒地に白文字になるハイコントラストモードにしてまぶしさを感じないように使っています。さらに症状が進行した時のために、画面を全く見なくても内容を読み上げてくれるスクリーンリーダーと呼ばれるソフトの使い方を勉強し始めました。諦めてしまった本は、スマートフォンのアプリで画面の色を反転させてから読み上げ機能を使って「聞きながら読む」という感じで楽しんでいます。
子どもの頃は友人たちとできることの違いに戸惑い、手助けしてくれないことに理不尽に怒り、進行していくという症状を怖く思っていました。いまでもその怖さはなくなったわけではありませんが、見えにくいなりにできることを探したり、補助ツールを使って昔できていたことが戻ってくると、本当の視界が少し広くなったように感じます。当たり前の生活を送ることに時間がかかってしまうことやできないこともありますが、補助ツールや便利なアプリ、家族・友人・周囲の方たちからの手助けを受けて毎日のびのびと過ごしています。
参考文献
難病情報センター 網膜色素変性症(指定難病90)
http://www.nanbyou.or.jp
その他の障害・病気 身体障害