発達障害の二次障害~不安と焦燥感

発達障害

出典:Photo by Ash from Modern Afflatus on Unsplash

私は発達障害のひとつである「自閉症スペクトラム障害」を持っています。さらに、二次障害が疑われる症状にも悩まされています。しかも、この二次障害は発達障害が原因だけとは思えないのです。

症状を簡単に説明すると「焦燥感を抱きやすく不安になりやすいことから、パニックを起こしやすい」といった感じです。その症状に名前をつけるとすれば「急かされアレルギー」でしょうか。このコラムでは私の持つ「急かされアレルギー」について自分自身の体験をもとに紹介していきたいと思います。

「急かされアレルギー」とは

一般的な食物アレルギーがどのような疾患であるかみなさんはご存知ですか?ざっくり説明すると、アレルギーは体の免疫異常のことです。本来"免疫"とは、体の中に侵入した細菌やウイルスなどを攻撃し、私たちの体を病気から守る仕組みです。しかし、免疫が過剰に働くことで本来なら害を与えることのない物質までも体が「異物」とみなし攻撃してしまうことにより、さまざまなアレルギー症状が引き起こされてしまいます。

対して、急かされアレルギーは心の免疫異常です。他者から急かされる、または自分が焦りを感じる不安感に過剰に反応してパニックを起こしてしまうのです。本当のアレルギーではないので、ある程度我慢ができます。しかし、胸が苦しくなり、長く続くと酷いパニックを引き起こしてしまいます。感情のコントロールができないというよりも、急かされることや、早くしなければならない状況で生理的にパニック反応が起こってしまう、そんな感じなものです。

不安は過度の緊張を招き、余計にパニックを引き起こしやすくなります。そして負のスパイラルに陥り、どんどん自信が奪われていきます。症状と上手くつき合えなければ、社会からは「自己コントロールができない未熟な人間」として疎まれ、自己肯定感も低下してしまう当事者にとっては恐ろしい症状です。

「急かされアレルギー」に気づいたきっかけ

私が「急かされアレルギー」に気がついたのはつい最近のことです。パニックを起こしやすいことで悩んでいます。発達障害を持つ人の多くは、急な予定変更などのイレギュラーなことが苦手とされています。私もイレギュラーなことがあると、鳥肌が立つように心と身体がざわざわしてしまいます。そのため、最初は自分がパニックを起こす原因は感覚過敏と予想外のことであると信じこんでいました。

けれど、気持ちが落ち着いてから自分のパニックになった状況を振り返ると、9割方は「イレギュラーに戸惑ったとしても、自分の対処能力と照らし合わせて考えると到底パニックになるほどでは無い」のです。

私にとってこの症状は、単に発達障害によるものとはいえない違和感があります。そして、そこには必ず相手と自分の中に「焦り」があることに気がつきました。これが「急かされアレルギー」の正体だったのです。

発症の原因として考えられるもの

私は知的障害をともなわないものの、社会性や生活面の発達の遅れはあります。そのため学校では何をしていいのか分からず、行動がもたつき、先生からは常に「やること成すこと全て遅い!早く早く!」と急かされていました。家庭内でも重い障害がある姉がいるため「お姉ちゃんのかわりに、しっかりしなさい。」と祖父母や両親からも人一倍頑張るようにいわれ続けていました。そのおかげで、私はある程度しっかりし、強い責任感を持つ大人になることができました。

しかし、振り返ってみると、そんな環境に置かれることで私は心が休まる場所が無く、常に疲れていました。「周囲から急かされるプレッシャー」が許容量を超えて浴びせられ続けてしまったことで、心が自分を守るために過剰に反応してしまうようになったのが「急かされアレルギー」発症の原因だと私は考えています。

「急かされアレルギー」の側面

急かされアレルギーは他者の期待に応えようと自分が酷く焦ってしまうことでパニックを起こしてしまうことがメインの症状です。しかし、自分自身が毒素を出してしまうことで不安を増強させてしまう一面もあります。具体的には子供の頃から過剰なストレスに耐えた代償として安全な場所でも、無意識にストレス刺激を探し、不安な状況を自らが見出してしまうことでパニックを引き起こしやすくしてしまうのです。

両者ともに酷い不安からパニックに発展することは一緒ですが、こちらは相手がいないので他者との感情の切り分けが上手く出来なくても解消しやすいです。そのため、私は自分の内面について客観的に理解することで自己毒によるパニックの誘発を呆気なく克服することが出来ました。

これからの私と「急かされアレルギー」

通常の食物アレルギー患者と同じように「急かされアレルギー」の私もアレルゲンに触れなければ(急かされなければ)症状はでず、元気に生活を送ることができます。けれども、日常生活で急かされてしまう場面は少なくありません。幸い、私は現在、就労移行支援事業所で訓練を受けているため、支援者さんと相談しながら一緒に解決していくことができます。

しかし、とてもデリケートな問題なので、支援者さんの介入には限界があります。けれど、食物アレルギーの曝露療法の一種と同じように、ゆっくり自分のペースで少しずつアレルゲン(焦る状況などの刺激)に触れることに挑戦しこうと思います。

第1段階としてまずは、アレルゲンになりそうな状況から素早く離れることでパニックを起こさない。

第2段階は、回避をしたとしても「パニックを起こさず対処をすることができた」と思える経験を積み重ねることで、自己肯定感や安心感を構築する。

第3段階では、アレルゲンから離れる距離を少しずつ縮め、刺激に慣れていく。

上記の3つのステップを踏むことで克服していきたいです。

「急かされアレルギー」について思うこと

実際に診断を受けているわけではありませんが「急かされアレルギー」はパニック障害や不安障害に近いものだと思います。特に刺激を避けることができない、逃げ場の無い状況で症状が出やすいところも似ているのではないでしょうか。

けれども、私の症状とパニック障害の定義には違っているところがあります。それは「パニックは突然起こるわけではなく自分にとっては必ず理由がある」という部分です。そのため、医学的な診断は今後もつかないだろうと私は思います。

「急かされアレルギー」は私にとって厄介なものでありつつも、正体を掴んだので、もう怖いものではありません。また、私のようにパニックにつながるような「急かされアレルギー」を発症しなくても、大半の人は「急かされると物事を上手くこなすことができない経験」が1度はあると思います。

まとめ

誰かが「つい焦って相手にイライラしてしまう」そんなとき、自分が同じような状況に置かれたときの気持ちを思い出して、相手に「ゆっくりでいいよ」と一声かけてあげてください。ほんの少しの優しさで、相手も自分もお互いちょっとだけ、心に余裕が生まれると思います。余裕の無い世の中ですが、思いやりの心をみんなが持つことで生きやすい社会が実現されることを私は願っています。

最後になりますが、この記事を読んでくださっているみなさんへ。「急がば回れと」いう言葉があるように、焦っても上手くいかず空回りしてしまうこともあります。もちろん、他人からの指摘を受け入れ、自分の欠点を改善していくことも大切です。しかし、ゆっくり着実にできることを増やしていくために、自己肯定感を育んでいくこともまた大切なことです。

気持ちが焦ってしまったときは、他者の評価だけではなく、以前と比べて自分が成長できている部分に目を向けてみてはいかがでしょうか。

「みかん。」と「もも。」

「みかん。」と「もも。」

自閉症スペクトラム障害を持つ24歳。大学卒業後、就労継続支援b型事業所にて実務訓練の後、現在は就労移行支援事業所に通っています。ちょっと前から黄色いセキセイインコを飼い始めました。

自閉症スペクトラム障害(ASD)

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